こういう時代に生きてるバンドなんだってことが伝われば
──あと良かったのが、「いいえ、その逆です。」と「パズル」をバックに各地のライブの映像が映し出されて。曲をバックに各地のライブを繋げていって、あとライブだけじゃなく街の景色も出てきますよね。渋谷の街や国会前の政権に対する抗議デモとか。映像と曲がリンクして、今の時代のバンドっていうことが凄く伝わりました。
川口:さりげなく使えればいいなって。意味はもちろんあるし適当に入れたわけではないんですけど。言っていただいたとおり、こういう時代に生きてるバンドなんだってことが伝わればまずはいいかなって。
──オールディックの歌は具体的に時代性や政治性のあることを唄ってるわけじゃないけど、でも今の時代の歌であることは感じるし。
川口:そうなんですよね。実際、生活の中での歌っていう感じが伊藤君のリリックにはあるなって思ったし。特にあの場面は、僕がそういう曲を選んだっていうのもあるんですけど。
──生活感のある歌じゃないのに、「生活の中での歌」ってことが感じられる、不思議ですよね。
川口:それは才能だと思うんですよね。
──あと最初のほうと最後のほうで、ツアーの中の、8月6日の広島での風景が出てきます。
川口:僕の勝手な思いですね。あの日に広島でライブをやってるってことは、僕にとってはけっこうデカかった。長い時間かけて車で「広島の友だちの企画のライブに出るため」ってね。追悼とも言ってないし声高に反戦を訴えてるわけでもない。でも、自分の日常としての自然体で行動しているっていうか。伊藤君の歌詞ってポリティカルではないけど、そういうことを汲み取ってる歌詞だと思うし。オールディックの生活の景色の一つとして、広島の景色も入れたんです。
──実際、広島で同じ日にパチンコ屋に行くとこも出てくる(笑)。
川口:車で長い時間かけて広島着いたらいきなりパチンコ屋だもん、衝撃でしたよ(笑)。どっちも日常なんですよね。8月6日に広島でライブをすることもパチンコすることも。
──ライブとレコーディング風景を軸にしながら、人間としてのドラマも見えてきて。そしてホントにドラマみたいに演技してる場面もあって。それらが絡まって、まさにタイトル通り「まどわされて」いくんだけど、軸もしっかりあって。面白いです。
川口:実際、ホントにまどわされていく感じだったしね。最後まで観てほしいですね。
──ですね。キッチリ最後まで。ホント、新しい音楽ドキュメンタリー映画の誕生だと思います。
川口:伊藤君が「“意欲的な作品”って言われるものはたいていダメなんだよ」って言ってたな。「意欲的な作品ではあるが、」ってその後にたいてい否定的なニュアンスがついてくるって(笑)。
──アハハ、確かに。今、意欲的な作品って言おうと思ったのに(笑)。
川口:意欲作ではあると思いますけどね(笑)。伊藤君も音楽映画史に残る名作って言ってくれたんだけど、一つだけ不満があるって言ってて…、
──なんですか?
川口:最後に「To be continued」ってついてないとこって(笑)。