オールディックフォギーのドキュメンタリー映画『オールディックフォギー / 歯車にまどわされて』が完成した。監督は、『77BOADRUM』(2008年)、『kocorono』(2011年)、『山口冨士夫 / 皆殺しのバラード』(2014年)などの川口潤。ロック・ファンなら実に興味深い絶妙のタッグではないか!
オールディックが放つどこか得体の知れない匂いと、それを嗅ぎ取り更に匂いを強烈にしていく川口監督。だがしかし、解散とか復活とかトピカルな出来事が何一つない(笑)オールディックから何をどう映していくのか。それは日常であり、そこから逸脱した非日常であり、つまりオールディックの音楽そのものでもあり、素顔でもある。バンドのリアルを見せながら何層にも重なっていく仕掛けに、まさに「まどわされて」いく新しい音楽ドキュメンタリー映画だ。川口潤監督に訊く。(interview:遠藤妙子)
予測不可能だったからこそいろんな挑戦ができた
──まず最初に、どんなふうに映画の話が始まったんですか?
川口:去年の4月に、映画『kocorono』の近藤プロデューサーから「オールディックフォギーってバンド知ってる?」って聞かれて。面識はなかったんだけど、橋の下世界音楽祭と下北沢ユニオンのインストアライブで見かけたことあって。「(DIWPHALANXの)広中さんと企んでることがあるんだよね」って言われて。それでその後、ボーカルの伊藤君とドラムの順堂君に会って。ちゃんと話したのはそれが最初。
──最初の印象はどうでしたか?
川口:良かったですよ、ていうか酔っ払ってた(笑)。伊藤君に「どういうのやりたい?」って聞いたら「カンフー映画」って(笑)。もともとカンフーが好きなんだろうけど、ちょうどアルバム『グッド・バイ』のレコーディングで「マネー」を録ってた頃なんじゃないかな。
──あぁ、カンフーっぽい曲だし(笑)。
川口:とにかくふざけた連中、面白い奴らだなって。
──川口さんは、すぐに「やろう!」って決意したんですか?
川口:「やろう!」っていうか「やるんだな」って感じ(笑)。初めて会った日の週末には沼津のライブに行ってた。ツアーにはかなり一緒に行ったんだけど、別に密着しましょうって話もしてないし、密着してるつもりも全然ないんだけど。僕は彼らと知り合いでもなんでもなかったから、彼らのことを知るには現場に行ってみようってシンプルなとこですよね。「どんなレコーディングしてるんだろう?」「どんなライブしてるんだろう?」、それが映画に映ってる。
──うん。川口さんのオールディックに対する好奇心が感じられます。知り合いじゃないってことも大きいんでしょうね。例えばブッチャーズとは違うわけで。
川口:全然違いますよね。ブッチャーズはずっと撮ってて知り合いという思いもあった。オールディックは初対面で、それも僕にとっては挑戦でもあるし。
──知り合いじゃないからこそいろいろ挑戦ができたんだろうし。
川口:そうですね。予測不可能だからこそ挑戦できたのかも。音楽ドキュメンタリーが増えた中で、奇をてらうのも嫌なんですけど、滲み出てくるもので面白い個性溢れる作品を作りたいっていうことをずっと考えていて。そういう中で今回の映画の話が来た。そしたらちょうどいい役者も揃っていた(笑)。
──ホント、素晴らしい役者で(笑)。川口さんの中で、新しい音楽ドキュメンタリー映画への挑戦と、オールディックという素材が、ビタッと繋がった。
川口:そうですね。
──じゃ、映画の中でドラマ仕立てで演技する場面もありますが、それは映画のために考えてたもの?
川口:「シラフのうちに」のMVにも使ってますが、個人的には映画で使うつもりで挑んでました。
──ゲストもみんなノリノリで。仲野茂さんのエロっぷりは…、凄いですよね(笑)。
川口:伊藤君もどこ見ていいか分からなくなって目が泳いでました(笑)。ホントに皆さん真剣にやっていただいて。
──錚々たるメンバーのバンド仲間が集まって、各々タクシーの客に扮して。
川口:愛があるんですよね。あと最後に出てくる俳優の渋川清彦さん。彼もバンドやっててオールディックと繋がりはあるんです。
──ホントにプロのいい演技していて。伊藤さんも渡り合っていて。
川口:いいですよね。ありがたいです。