ハードな現場の裏側で
内藤:面白かったのが、撮影助手のアリュウくんがすごく遅刻が多くて。合宿してるんですけど、寝坊するんですよ。撮影5日経った時点で4回寝坊(笑)。「逆になんで1日だけ寝坊しなかったんだ?」って聞いたら、iPhoneの目覚ましをセットして、ヘッドフォンをつないで、外さないようにヘッドフォンを頭にガムテープで巻きつけて寝て、そしたら起きれたと。6日目にまた寝坊したんですよ。「どうしたの?」って聞いたら、疲れすぎてガムテープ巻く余裕がなかった(笑)。
──撮影はやはりそんなにハードな感じでしたか。
小関:女子のほうが大変だったね。もちろん内藤さんはずっと撮影されていましたけど。
森川:撮りきれなくて再集合がありました。
内藤:ラストシーンを晴天で撮りたかったんだけど、雨が続いちゃって。撮影場所を室内に変更すれば撮りきれたんですけど、妥協したくなかったんで、キャスト・スタッフの理解もあって、再集合させてもらいました。
──撮影で大変だったのは?
小関:武器が最初に折れるのは僕だったんです。自分たちでダンボールで作ってる設定でした。それを後半つなげるのは大変なので、角度を工夫して折れてませんアピールしながら戦いました。
──森川さんはいかがでしたか
森川:驚きですかね。普段驚くことがあっても「キャ〜!」とか言わないじゃないですか。それをホラー映画には必要な叫びを出すっていうのがけっこう大変でした。普通は振り向かないでしょ、ってところを気配で気づいてくださいって。どう振り向くんだろう? っていうのが大変でしたね。
内藤:恐怖を表す間やタイミングはホラー映画的な文法が必要なんで、ただ驚けば怖くなるわけじゃなくて、引っ張ってる時間が必要。芝居として咀嚼しながらやっていくのは大変だったと思います。撮影で一番大変だったのは寝られなかったことでしたが、小関さんは絶対弱音を吐かない。相手役がテイク重ねても何も言わず、プレッシャーを与えないような感じで、でも毎回きっちりやってくれて。助かるなーって感じでした。
小関:楽しかったです。
──プロとして我慢してたわけじゃなくて自然に?
小関:特になかったですね。自分ができなくなった時のことはもちろん考えました。もし相手が自分だったら…なんてことを考えてました。プレッシャーにプレッシャーが重なったらキツイですもんね。ズタズタになっちゃうから。なんでやらなきゃいけないんだよ! みたいな。
内藤:撮影で疲れてくるとイラッとして、そういうのが出てきてもおかしくないと思ってたから。冷静さを保ってましたね。
森川:私は眠れないとダメですね。もうグッタリ派です。この前は13時間くらい寝ました。
──撮影で寝られないことがよくあるんじゃないですか?
森川:普段が寝すぎなんで、みんな的には寝れてるみたいな撮影でも寝足りないとか(笑)。
──お二人が対照的で面白いですね。
小関:似てるんですけどね、雰囲気が。
──監督から見てお二人は似てるんですか?
内藤:似てないと思う(笑)。森川さんは寝てないと辛そうなんで、ちょっと一人にしてあげるみたいな(笑)。
小関:僕も一人が大好きなんで。大勢でも過ごすけど、一人の時間がないと僕もダメな人です。
内藤:森川さんの「一人」と、小関さんの「一人」は、多分違うよ。小関さんのは「一人楽しいな〜」って写真バシャバシャ撮ったり、爽やかな感じ(笑)。森川さんは「一人になれた。ようやく力抜ける。ふう〜」って感じ。
小関:ええっ!?(笑) 僕は中学生の時テニス部だったんですけど、仕事をしていたから部活に出れていなくて。久々に行っても大変なことや辛いことを笑ってやりすごすタイプなので、同級生に「何ヘラヘラしてるんだよ!?」って言われたり。ちゃんとやってるから笑っているのに、みたいなのがありました。
──いろんなやりすごし方があるんですね。
居てもいい人、内藤監督!?
──お二人から見た内藤監督の印象は?
小関:内藤節が(笑)。映画見ていただくと分かるんですが、独特の感じは普段話していて重なる部分がありますね。他の方の作品と違うのはユーモア、人間の影。それが入り組んで。明暗がはっきりしているようでしていない独特さがありますね。
──森川さんはいかがですか?
森川:なんか……。
小関:コワイ!(一同爆笑)
内藤:「仕事ですから」って言われそう。
森川:居て落ち着く。自分の入らないでって範囲に入ってこられても別に嫌な感じがしない(笑)。
──それは最初からですか。それとも撮影してる間に?
森川:初めからでした。オーディションで一応会ったことがあるとはいえ、話したわけでもないのに、一緒に作品をやりますとなって、衣装合わせ、本読みの時から別にこの人なら居ても良いと思う人ってなかなかいないですね。自分から近寄りたくなる。
──監督はそこまで信頼を寄せられてどうですか?
内藤:撮影してる時に森川さんが言い出したと思うんですけど、「用意、はい」の言い方がいい。その後、逆に意識して言いづらくなった(笑)。
小関:葵ちゃんが言ってましたね。たとえばシリアスなシーンとかに(大声で)「うぉーい! はい!」みたいなのは苦手って。
森川:それはみんなそうじゃない?(笑)
小関:逆にシリアスな泣きのシーンだから気を使って、(小さい声で)「…はい」、みたいなのも苦手。内藤監督の言い方は気にならない(笑)。
森川:それ結局、悪いイメージじゃない?(笑) 自分の輪の中に入っても嫌な感じがしない。嫌じゃないっていう(笑)。
内藤:嫌ではないけど良くもない(笑)。
──でもなんとなく分かりますよ。内藤さんは森川さんのことを理解されているから、必要以上に踏み込まない。距離間の保ち方がお上手なのかなと。
森川:だからこそ自分が寄っていきたくなるんだと思います。
《話は内藤監督の左手の指輪に。自主映画を制作していた時代は先生として特別支援学校(養護学校)に勤務していた内藤監督。退職後も演劇部の顧問として非常勤となり、今年1月に1歳年下の同僚の先生と結婚した》
小関:結婚とかプロポーズの瞬間って憧れますね。一番楽しい瞬間でいいなって思います。
──最後に名前を呼ぶシーンは気持ちがつながる瞬間だと思うんですけど、演じられてどうでしたか?
小関:あんまり何も考えてなかったです(笑)。
内藤:お互い名前を呼ぶようなキャラクターじゃなかったけど、そこだけ叫ぶ。
小関:人間として変わっていくんですが、自分の素の部分とは違ってました。あそこは非日常に突入する。……そうか! 内藤監督の独特さって、独特の非日常感かもしれないです。日常と非日常や明暗が入り組んでるような。