《注目ポイント2》貞子や伽椰子に次ぐホラーキャラクターになるか、ドロメちゃん!?
──ドロメのキャラクターは元々どういう発想で出来上がったんですか?
内藤:親がホラー好きで『チャイルドプレイ』とか『エルム街の悪夢』が好きだったので、ホラーキャラクターをつくりたかったんです。でもアメリカ映画と違って、日本って制作のバジェットが少ないじゃないですか。貞子とか伽椰子ってそういった状況を踏まえた非常にコストパフォーマンスがいいホラーキャラだと思うんですね。白塗りにして、長い髪の毛を垂らせばそのキャラクターになれる。アメリカ映画だと特殊造形やCGを使ってがっちり作り込まないといけない。貞子・伽椰子方式なら低予算のホラーでもキャラクターものをやれるなって。白塗り以外のパターンで、泥をつければいいんじゃないか(笑)、そういう発想でした。
──元になった民話は何かあったんですか。
内藤:全身泥の化け物の設定として、何か使える民話がないかなと調べてみたら、愛知県の豊田市に泥ぶち観音様があって。行ってみると桶に泥が用意してあって、「ご自由にお取りになって投げてつけてください」って汚れないように手袋もあったり(笑)。泥の中に落ちている観音像が発見され、どうやら泥好きの観音様らしいからって社に安置して泥をぶつけるようになったと、そこまでは実際にある話です。映画で使ってない部分の話としては泥塗れの観音像を洗った人が死んだらしいです(一同驚愕)。それはひどいなって話なんですけど(笑)
──親切のつもりなのに、そんなダークな(笑)。
内藤:悪意を込めて祈り、呪う人もいるだろうなと思って。それが化け物につながることで、自分の中でカチッと泥の化け物と民話がつながった、そんな感じです。人間の悪意は『先生を流産させる会』以降、描き続けているテーマですし。今回は比較的ささやかな悪意ではありますけど。
──劇中出てくるイラストは内藤監督が描かれたんですか?
内藤:そうです。
《ここで小関さんが、漫画のように描かれたコンテが巻末にプラスされた分厚い台本を見せてくれた。画面のイメージが分かりやすく伝わる構成になっている》
──最近の商業映画はホラーに限らず原作ものが多く、オリジナル作品が成立しにくいと思いますが、今回この作品を手掛けて今後の可能性は感じられましたか。
内藤:そうですね。日本のホラーは比較的シリアスなものが多くて、アメリカのホラーって笑って観られるものがあるじゃないですか。ああいうノリを欲しいなと思ってたんですね。『悪霊病棟』を演出した時に、Jホラーの基盤を築いた鶴田法男監督に言われたのが、気がついたらドアが開いてたという演出をする時に、ゆっくりドアが開く画を撮るか、振り向いたら完全にドアが開いているという2パターンがあって、前者はモンスターで、後者は幽霊だと。自分は最初、モンスター演出をしてて、鶴田さんに指摘を受けて幽霊演出にしたんですけど、資質として自分にはモンスター演出が自分には合っているのかなと。そういう資質を『ドロメ』に生かしました。
《注目ポイント3》フィナーレを盛り上げる必然のコスプレ!
──公式サイトを見てまず驚くのがお二人のコスプレ姿ですが、こういった設定にされたのはなぜですか?
内藤:プロデューサー側から言われたんです。コスプレ感が欲しいって(一同笑)。
田坂:演劇という題材になった時に、学園モノを象徴する女子が制服という設定は決まってるんですけど、それを受ける男子っていうのは制服だとちょっとおかしいからジャージになったんです。そのバランスを取るわけじゃないんですけど、男子は最後演劇のコスプレで活躍するとしたら、それに付随して女子がコスプレしたってことで、あれは必然なんです!
森川:必然!(笑) 私、ロリータ服とかすごい好きなんで、衣装合わせの時にいろいろ着れて楽しかったです。
小関:普段着ることはあまりなくて、面白かったです。あれでアクションしたりとか。
内藤:制服姿の学園モノホラーが多いんで、ちょっと変化球にしたかったんですよね。最後のバトルがコスプレだと、戦闘服としても機能するなって。さぁ闘うぞ、みたいな。ドラマ上も活きるな、と。
──最後のバトルは演じていかがでしたか?
森川:人を殴るのは辛かったです(一同笑)。どうしても力を抜いちゃって上手くいかないですね。
小関:走るところは楽しかったですね。
森川:こせっきー、スローモーション撮る時に自分でスローモーションするよね。
小関:そういうもんだと思ってた。最初は普通に撮ってる状態で僕がスローモーションになるのかなと思っていました。撮影したものを観てみたら、なんか違う(笑)。周りもスローモーションになってる(笑)。
──大きな勘違いで(笑)。
小関:でもそれがいいかな、みたいな感じになって。続けていたらけっこう気持ち良かったです。爽快感がありましたね。
──監督ご自身は2本の出来上がりをみて、予想以上の結果はありましたか?
内藤:ラストはスカッとさせたいとあのように作ってたんですけど、スカッとを飛び越えて、ちょっと可哀相になっちゃった(笑)。可哀相すぎて、笑えてくるっていう。でもそれはそれで面白いかなと思っていて。作り手の想像を超えたものになっているという意味で。辺鄙な田舎町の奇妙なお祭りにも思えるんですよね。意味分かんないけどすごいエネルギーを発してる。そういう楽しさのあるクライマックスになったと思ってます。
──学園祭ノリのような。
内藤:そうですね。学園祭のフィナーレみたいな(笑)。