Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューアーバンギャルド(Rooftop2015年12月)

殺すな、殺すな、言葉を殺すな──
平成二十七年のパラレルな世界、戦時下の昭和九十年が提示する現代の闇と病み

2015.12.01

液晶ではなくリアルなものに触れることが凄く重要

──それほど単純なことじゃないし、複眼的な考察が必要ですね。
松永:作品というのはその時の世相を反映するものだし、右の要素と左の要素、弱者の要素と強者の要素、その両方を混ぜ合わせることによって現状を示すべきだと思うんです。それなのに、一方的な枠の中に閉じ込めたがる人があまりに多すぎる。
浜崎:片方の側面しか見ないという意味では、ツイートと一緒ですよね。140字の中だと言いたいことを言いきれないから、続きものになったりするじゃないですか。その1、その2、その3…って。でも、その2だけを切り取られて炎上してしまうとか、よくありますよね。その前後のことや全体をちゃんと見ない人がホントに多いなと感じます。
松永:たとえば三島由紀夫も右翼的な作家と目されているけれども、そこに至るまでには思想の変遷がいろいろとあって、ある面では凄くリベラルな部分もあるんですよ。でも世の中は表面上のことしか見ないから、三島と言えば右翼ってことで片づけられてしまう。それと同じように、原発は賛成? 反対? とか、戦争法案は反対? 賛成? とか、中国は好き? 嫌い? とかで人のことを勝手に決めつけちゃうけど、クリエイティブとはそんな簡単なことじゃないし、僕らがもっと複眼的に創作していることを知って欲しいですね。
浜崎:会田さんの作品が撤去されたことをさっき天馬が話してましたけど、実際にクレームがあったのは一件だけだったらしいんですよ。その一件の反対意見のためだけに作品が撤去されてしまうなんて、凄く驚きました。そんなにアレルギー反応が出ちゃうんだ? と思って。
松永:作品に対してどう思うのも、どう発言するのも勝手だけど、それによってお互いが潰し合いになるのは表現にとって良い未来なのかな? と思うんですよ。ジョージ・オーウェルの『1984年』で描かれたのは権威を振りかざす為政者たちが国民を監視する世界だったけど、今やSNSで国民同士が監視し合う世の中じゃないですか。
浜崎:SNSは人間性が出ますよ。しかも、人間の一番汚い部分が出てしまうツールだと最近よく思うんです。スマホやパソコンの画面を通した言葉なら人が傷つかないとでも思ってるのかな? とか考えたりして。
──今や「書を捨てよ町へ出よう」ではなく、「液晶から飛び出して現実を見よう」という時代なのかもしれませんね。
浜崎:「コインロッカーベイビーズ」はまさにそんな歌ですしね。
松永:僕自身もネットに対して中毒的な部分があるので自戒を込めて曲にしているんですけど、液晶ではなくリアルなものに触れることが凄く重要だと思うんです。映画にしろ文学にしろ、今の感動の基準って泣けるか泣けないかですよね。そうやって二極化で捉えるのが僕は凄くイヤで。
 

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──「全米が泣いた」というキャッチコピーが常套句の世の中ですからね(笑)。
松永:そうそう。それって「いいね!」ボタンを押すか押さないかの違いに似てる気がする。感動の表現は本来もっといっぱいあるはずで、絶望するほどのショックや痛みを負わせる感動だってあるじゃないですか。
──その点、アーバンギャルドの音楽は純然たるエンターテイメントとしても楽しめるし、深く踏み込めば踏み込むほどいろんな捉え方もできるし、捉え方を強制することももちろんないし、間口はとても広いですよね。
松永:こっちが発するメッセージを全部受け取ってくれなくてもいいんです。たとえばゴダールの映画は難解だとよく言われるけど、どんな入り方をしてもいいと思うんですよね。お洒落な雰囲気だから見るのもいいし、好きな女優が出てるから見るのもいい。ただ、その作品に込められたテーマは確実に鑑賞する人が受け止めるはずなんですよ。アーバンギャルドの音楽もテーマが難解だと感じる人がいるかもしれないけど、まずは音の面白さや歌詞の語感から入ってくれればいいかなと。以前、知り合いの3歳児のお子さんが僕らの「あたま山荘事件」を唄うのを見たことがあるんです。浅間山荘事件のことは何も知らなくても、「あたまアタマ頭のなかで戦争戦争〜」って繰り返し唄えるものなんだなと思って、それだな! と。ポップであるとはそういうことですよね。一見コミカルな左卜全の「老人と子供のポルカ」にも、ゲバ(学生運動)とジコ(交通事故)とスト(ストライキ)の最大の被害者は老人と子供であるというメッセージが込められていたように。
おおくぼ:「箱男に訊け」はそれと似てるかもね。今はライブで凄く盛り上がってるけど、まだCDが発売されてないから歌詞がよく分からないのかもしれないし。
瀬々:ただヘンな箱が暴れてるだけの曲だと思われてるかもしれないね(笑)。
──それにしても、これだけの大作を完成させたら創造のハードルはますます上がる一方ですね。
浜崎:次はこの反動で、いきなりボサノヴァに走ってみたりして(笑)。
松永:無印良品で流れてるようなやつね(笑)。
浜崎:そうそう。突然そんなふうになっても面白いと思うんですよ。自分たちでハードルを上げてるって言うよりも、今できることを最大限やらなきゃっていう使命感が常にあるんです。また次の作品を出させてもらえる機会があれば、その時にできる最良のものを出すんだろうなと思います。それがひょっとしたらボサノヴァかもしれないし、レゲエかもしれないし、「家族を大事にしようぜ!」って唄うラップかもしれない(笑)。
おおくぼ:ない話じゃないよね。その時々で出したいものを出す、やりたいことをやるのがアーバンギャルドだから。
 
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昭和九十年

平成二十七年十二月九日(水)発売
■初回限定盤(DVD付):FAMC-208/3,800円+税
■通常盤:FAMC-209/2,500円+税
発売・販売:株式会社KADOKAWA

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【収録曲】
01. くちびるデモクラシー
02. ラブレター燃ゆ
03. コインロッカーベイビーズ
04. シンジュク・モナムール
05. 詩人狩り
06. 箱男に訊け
07. 昭和九十年十二月
08. あいこん哀歌
09. ゾンビパウダー
10. 平成死亡遊戯
11. オールダウトニッポン
【初回限定盤DVD】
ミュージック・ビデオ4曲+<アーバンギャルド2015 春を売れ!SPRING SALE TOUR>ファイナル公演(東京・新宿ReNY)のライブ映像10曲=全14曲収録

LIVE INFOライブ情報

アーバンギャルド 2015 XMAS SPECIAL HALL LIVE
『昭和九十年十二月』
【大阪】2015年12月17日(木)大阪BIGCAT
開場18:30/開演19:00 4,999円(ドリンク代600円)
【東京】2015年12月22日(火)渋谷区文化総合センター大和田・さくらホール
開場17:30/開演18:30 4,999円(ドリンク無し)
 
『昭和九十年』発売前夜PARTY“ガスマスク会”
2015年12月8日(火)20:00〜 池袋LIVE INN ROSA
 
昭和九十年十二月九日! アーバンギャルドの渋谷に死す
2015年12月9日(水)19:30〜 ヴィレッジヴァンガード渋谷宇田川店
 
アーバンギャルドの公開処刑10
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2015年12月12日(土)12:00〜 タワーレコード名古屋近鉄パッセ店
2015年12月12日(土)19:00〜 タワーレコード梅田NU茶屋町店
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