今が一番いい音が鳴らせているのを伝えたい
──2月に行なわれた新宿ロフトのワンマンでは、本作に収録された新曲が数多く披露されたじゃないですか。ダブル・アンコールで演奏された「遥か繋がる未来」も初披露にも関わらずオーディエンスのシンガロングが凄まじくて、楽曲の持つ力をまざまざと見せつけられた気がしたんです。
OKI:ド頭から「荒野の黙示録」だったし、「GO NEXT GO FUTURE」や「STRONG TIES」、「ROCKIN’ GROOVY TIME」、最後の最後に「遥か繋がる未来」をやるという異例のライブでしたよね。「遥か繋がる未来」に関しては、日々いろんなことがあるけど最後にみんなで未来へ向かってシンガロングしよう、大声出して拳を突き上げようっていうのを提示したかったんです。
SEIZI:今年一発目のライブであれだけ新曲をやって、それであの盛り上がりだったから、お客さんも新しいアルバムが期待できると思ってもらえたんじゃないかっていう自負はありますね。
OKI:今回のアルバムにわくわくするような期待をして欲しいという気持ちで新曲をやったし、それに対してあれだけ熱を帯びたリアクションをしてくれたのはバンドとして凄く幸せなことですよね。頭と終わりに新曲をやるライブなんてなかなかできないですから。
──「荒野の黙示録」はアルバムの頭から意表を突くシャッフル・ビートと耳に残るギター・リフでいきなり心を鷲掴みにされますよね。
SEIZI:ああいう曲がアルバムの幕開けになるのは新鮮ですよね。
山根:アレンジを詰めていた段階で、マネージャーから「この曲のベース、凄くいいね!」と言われて嬉しかったんですよ。ああ、この方向で間違っていなかったんだなと思って。
OKI:わざと山根のいない時にこっそり聴かせたんですよ(笑)。あの曲もアレンジとアンサンブルに呼ばれたところがあったんです。ざっくりとストイックに行きたかったんですけど、詞も歌もプレイも三位一体で上手くハマりましたね。
SEIZI:仮にレコーディングに入る前の段階で一発録りをしても、全員が最低でも95点を取れるぐらいの感じだったんですよ。そういう意味では割と時間をかけた作品だったと言えますね。録りは短期集中でしたけど。
山根:録る前から準備は万全だったし、あとはサクサク録るだけでしたよね。年末にOKIさんから「次のアルバム・タイトルは『遥か繋がる未来』にする」と聞いた時からスイッチが上がりっぱなしだったし。
──芯が太くて温かみのある音色、簡にして要を得たアレンジが本作におけるサウンドの大きな特徴だと思うんですが、それも際限まで研ぎ澄ませたリハーサルと一意専心のレコーディングの賜物なんでしょうね。
OKI:今のバンドの空気感を一番いい形でパッケージしたかったんです。とりわけ気に留めたのはそこですけど、州治さんのお陰で最高な音で録れたので何も申し分はなかったですね。小島康太郎さんのマスタリングも文句なしの職人技でしたし。
牟田:ビーツに戻って改めて感じたのは、目指すべき軸がブレないバンドだなということなんです。真ん中に図太い軸があって、それが揺らぐことがないって言うか。今回のアルバムもそうだし、ライブもそうだと思うんです。お客さんに何を求められて何をするべきかが明確だから、それに向けてただ頑張るしかない。
OKI:ライブ中に牟田の気持ちがグッと入り込んで感動しているのが背中で分かるんですよ(笑)。そういう時は必ずいい音が鳴っています。
牟田:時折、叩きながら客になっていることがあるんですよ(笑)。
OKI:気合いは音で伝わりますからね。「おッ、山根のヤツ飛ばしてるねぇ!」とか、そういうのはお互いによく分かるんです。
──拳を力一杯突き上げてステージに思いをぶつけるオーディエンスの姿を見れば、否応なしに気持ちを奮い立たされますよね。
OKI:それはもちろん。誤解を恐れずに言うと、俺たちはミュージシャンとして音楽をやっているわけじゃないんですよ。あくまでも人として音楽をやっているだけなんです。一人の人間としての思いを音楽として昇華しているだけだから、普段の生活と音楽の世界観が切り離されるわけがないんですよね。たまたま音楽を生業としていて、音楽が縁でいろんな人たちと繋がりを持つことができる。ライブにしてもそうで、人としてお客さんたちと向き合っているからこそ同じ目線でいられるんですよ。
──しかも、2月の新宿ロフトでもそうでしたが、若いオーディエンスがしっかりと増えているのが頼もしいですね。
OKI:若い人たちにはもっとライブに来て欲しいですよ。俺たちもロックで育った世代だから当然なんでしょうけど、だんだんロックが大人の音楽になりつつあるじゃないですか。自分たちの子どもと言ってもいいぐらいの世代の子たちにはYouTubeみたいに便利なツールもあるわけだから、「こんなイカしたロックもあるんだ!」みたいに新たな発見が多々あると思うんです。そういうのをきっかけとして、俺たちのように30年近くストレートなロックをやり続けているバンドのライブを体感して欲しいですね。
──来年で結成30周年を迎えるバンドの底力は生半可なものじゃないですからね。
OKI:まだ高校生だったSEIZIがこれだけ貫禄がつくぐらいバンドをやり続けていますからね(笑)。音楽以外にやりたいことがないし、ただ純粋に音楽をやることが好きなんです。音楽をやることの意味や意義を改めて考えるまでもないし、ごくごく自然な向き合い方なんですよ。30年近く現役でやってきて、今が一番いい音が鳴らせているのを伝えられたら最高だし、それは今度の『遥か繋がる未来』でも今やっているツアーでも体現できている自負があるんです。その流れを受けて、長く応援してくれているファンの人たちと一緒に来年のアニバーサリーを楽しめるものにしたいですよね。ただその前に、今は『遥か繋がる未来』という自分たちでも大きな手応えを感じるアルバムを作り上げたことでテンションが上がりっぱなしだし、『遥か繋がる未来』と兄弟みたいな作品を作る可能性はありますね。発表する形態はどうなるか分からないですけど、今の俺たちを取り巻く環境やそこで抱える思いは『遥か繋がる未来』一作だけで完結するものじゃないし、“遥か繋がる未来”のその先にあるものをなにがしかの形で提示していきたいですね。