チームが一丸となって動き出せている
── In 197666は、エンタテインメントのショーとして成立するものを提示出来るところに辿り着いたと。
西:環境も精神的にも。だから、『Fly』という曲をリード曲にしたかったんです。当時見ていたニュースを題材に、社会風刺的な意味合いのある歌詞になっていて、パンキッシュな部分をポップネスに昇華した、自分たちの中では達成感のある曲です。すごく爽やかな曲の中に入っている詞の世界が、今までのインナイの中では最高のものが出来たんじゃないかと思っていて、いろんなメッセージを込めているので、一言でも言葉がひっかかってくれたらすごく良いなと思いますし、このメッセージを含んだ上で、耳障りの良いものになったというのは、メジャーへ向けて切磋琢磨してきた結果なのかなとも思います。歌詞にしても、今回は初めてメンバーみんなで考えるということをしたんです。これまでは、それぞれのパートにそこまで口を出さないというのが暗黙の了解であって、でも今回は全員が一丸となって作っていく感じ。「ここがもうちょい足りないんだよな」「やっぱりそう思う?」というやりとり。パートが違っても、みんなが気になることってけっこう近くて、時間をかけて作らせてもらえたので、じっくりとやれたというのはあります。それに、独りよがりの歌詞になるのがイヤだったんです。メンバーもスタッフの人たちも納得するものを作り上げたかったから。チームとしてひとつの作品なので我を通すというよりは頼む力を貸してくれって。
── ライブを見ていても思いましたけど、4人が一体となっている感じはしますね。
西:昔はステージ上でバトルでしたけどね(苦笑)。今は一体となってます。『D』は原の一言がなかったら書けなかったですね。歌詞で悩んでいた時に、『Stars Seed』に『シキサイの種』という曲があるんですけど、種から花とか茎とかに成長したところを書いてみたら? と言われてからインスピレーションが爆発しました。そこから一輪だけ咲いている花もそれを支えるために、ものすごい根を広げているというイメージが浮かんで、それをフォーカスしたいと思って。それで、ストーリーをどうしようってなって時に、宮沢賢治さんの『まなづるとダァリヤ』の世界観が好きで、そのストーリーをなぞっていこう、と。丘の上に赤い大きな花をつけた1本のダァリヤがあって、まわりの雑草からはあなたはキレイねと言われるけど、時間が経つと花は枯れて黒ずんでいくというお話なんですけど、そのダァリヤの目線から見た孤独を描きました。童話が好きだった人とかが、もしかしてと気付いてくれたら面白いなと思いますね。表層テキストはシンプルに書こうと思っているんですけど、わかりづらい世界観というか、作品へのコアなこだわりが実は全部の歌詞に入っているんです。その深意に辿り着いて欲しいなというキーワードを入れておくと面白いかなと思うんです。
── 一番悩んだ歌詞だとどれになりますか?
西:『街は灯りを消したまま』のサビはメンバー作というか、「等身大のことを歌ったら良いんじゃないの?」って言われて、アイディアをそのまま採用しました。メンバーに言われた通りにメロディーを付けて、歌詞を書いて、前後のAメロBメロだったりサビだったりのストーリーをそこから考えて、いらないところを削って、シンプルにしたのがその歌詞です。でも、一番苦労したのは、『パズル』かな。
森下:『パズル』と『falls out』は、みんなで歌詞を読んで、よくわからないところとか、もう少し変えてみたら? というのをけっこう話しました。
原:サビもけっこう変わりましたし。サビの後半全部いらなくね? って。
西:曲のタイトルが『パズル』だけあって難解でした。
── 全体的に難解ですけどね(苦笑)。みなさんは、西さんの書いた歌詞を読んで「難しいこと言ってるわあ」って思うことはありますか?
原:思い続けてますよ。
森下:難しくて漢字が読めないって言うのもあります(笑)。
西:英語で送ったら何言ってるかわかりませんって言うんです(笑)。でも、3人とも発想が豊かというか自由なので、詞作するにしても、ある程度決めてることってあるんですけど、全く違う視点を持っているから面白いなとは思います。180度向こう側というよりは、358度ぐらいしたところからすごいアイディアを出してくるという感じ。俺が凝り固まってる部分をほぐしてくれる意味のわからなさを持ってる。だから、自分1人じゃ書けなかった詞が書けたし、メンバーに意見をもらうことによって、こういうふうにしか伝わらないんだっていうところの修正が出来るので、また次に出す作品はもっとブラッシュアップされたものになるんじゃないかなと思ってます。
レコーディング中の珍事件とは
── 森下さんは前作のレコーディングからのIn 197666に加入してますが、曲作りから関わるのは今回が初めてですよね。
森下:『Stars Seed』は曲が出来ていたからギターを弾くだけだったけれど、今回は曲作りから参加したので1曲1曲思い入れが違いますね。音作りも含めて、すごく丁寧にやれました。
原:ギターのソロですごく苦労していて、わかんないって弾きまくっている中から「それ良いね」って言われることもあったよね。
西:俺たちが森下に求めたソロって、ギターヒーロー感だったんです。
── それが大事ですからね。
森下:でも、僕がそうやって悩みながらギター録ってるのに原さんと三浦さんはワイワイ喋っててうるせーなって思いましたけど。
西:携帯の面白い画像を見せて、笑いまくってた。
原:内容が中学生ですよね。それは今後気をつけます(笑)。
── 本当に仲良いですよね。レコーディング中は事件みたいなものってありました?
森下:西さんが今回メジャーに向けて、新しいギターを買ってレコーディングスタジオに来たんです。でも、アンプと繋げて触った瞬間に感電して、その反動でギターをぶつけたらしくて、2日で傷物になって(笑)。
原:スタジオでギター弾いてる時間よりも、ワックスで拭いてる時間のほうが長かったですよ。
森下:しかも、西さんはいつもスプレータイプのワックスを使ってギターを拭いているんですけど、事務所でスプレーをかけるたびにワックスが床に散ってて、そこを歩くとみんなツルーンって滑るんです(笑)。ここめっちゃ滑るってわかってても滑っちゃうんです。みんなそれにやられてましたね。
原:事務所でゴロンゴロン人が倒れてた(笑)。
西:事務所がスケートリンクになっちゃって。身構えても無理(笑)。ほんとごめんね。
── そのワイワイした感じで地方とか車で移動する時は、車内が賑やかそうですね。今回リリースしてツアーはやらないんですか?
森下:調整はしているんですけど。
原:5月25日にShibuya O-Crestでワンマンライブがあるので。
西:今はそこに向けてます。
── では最後にリーダーからも一言お願いします。
三浦:4月3日に『(NO)MY DESTINY』でメジャーデビューします。今までより多くの人に聴いてもらえるように作ったアルバムなので、ぜひ聴いて5月25日遊びに来て下さい! 以上です。