バンド結成から10年。In 197666(読み:インナインティーン セブンティー シックスシックスシックス)が、4月3日にミニアルバム『(NO)MY DESTINY』で待望のメジャーデビューを果たす。
昨年10月1stフルアルバム『Stars Seed』制作中に、ギター・森下大輔が加入し、今作は現メンバーになって初めてゼロから作り上げた作品。以前に比べ、表現力が豊かになった今作は、彼らが歩んでいた10年分の軌跡と今を充分に詰め込み、ようやくメジャーのステージに立ったという意気込みや気合いが感じられた。「メジャーデビューはひとつの目標だった」とボーカル&ギターの西 勇輔が言っていたが、憧れていた世界に飛び込み、彼らはよりたくさんの経験をしながら羽ばたいて行くだろうと想像している。
3月に開催した自主企画イベント"In 197666 presents「GONG!!! vol,1」"も大成功におさめた4人に、これまでのこと、そして今の彼らの思いについてお話を聞いた。(interview:やまだともこ)
たくさんの人に出会えて今がある
── メジャーデビューおめでとうございます。バンドを始めたときからデビューしたいという、目標のひとつではあったんですか?
西 勇輔(Vo,Gt):そうですね。目標のひとつでした。インディーズにはインディーズの魅力があるんですけど、メジャーにしか出来ないことを僕たちはやりたかったので、そこは大事に思っていました。CDを作るにしても、メジャーの世界に行けばたくさんの人に関わって頂くことになるから、自分たちの目線だけではなくいろんな意見がもらえることで、より良い作品が作れると思ったし、ライブにしても段階を踏んでもう少し大きな会場でやることが出来たら、自分たちがCDに封じ込めた世界観をもっとわかりやすく表現出来るんじゃないかと思ったんです。それが照明効果かもしれないし、オーケストラを入れるのかもしれないけれど、メジャーで頑張れば、その先に俺たちが憧れた世界があるんじゃないかと思っています。
── 今はようやくスタート地点に立てたという感じですか?
西:そうですね。
── ここまで活動してきた10年って振り返ると長いなって思います?
西:それぞれ違うよね、きっと。
原 琢矢(Ba):気付いたら、みたいな感じですね。
西:気付いたら年を重ねてたんだなというか、まわりの世界が動いてたという感じもありますけど。
原:見ない振りしてたから(笑)。
西:それが俺たちがここまで来るのに10年かかった要因なのかなと思いますけど(笑)。でも、10年前はコピーバンドでしたし、オリジナルをやった時期から数えたら7年ぐらい。18とか19ぐらいの時に全部オリジナルの曲でライブをやって。10年って言っても感覚としてはあんまりわからないんですけど、(Rooftop3月号を見ながら)原がサポートで参加していたHEREはインビシブルマンズデスベッドの頃から知っていたり、俺たちが歩いて来た道の途中には出会わなければならない人がたくさんいたんです。新宿ロフトとか下北沢屋根裏とかライブハウスもそうで、俺たちにとっては原点だし、そこで出会えたスタッフのみなさんとかお客さんとか、遠回りだったかもしれないけれどたくさんの人に出会えて、それによって今の俺たちがあると思っています。今回の『(NO)MY DESTINY」と同じで、全てバンドとしてひとつの意見を出して歩んできた先にある結果だから、それが自分たちで切り拓いた上での運命かもしれない。あらかじめ定められたものではなかったのかなと思います。
── ということは、作品タイトル『(NO)MY DESTINY』は、今のバンドの気持ちを詰め込んだものになっている、と。
西:初めて僕の意見が満場一致で通りました(笑)。
── タイトルが(NO)になっているのはどんな意味があるんですか?
西:“NO MY DESTINY”って現実を悲観的に見た時に「これは運命なんかじゃない」という、その現実に打ちひしがれている感じが出る言葉なんです。本当はこんなんじゃなかったのにっていう意味なんですけど、(NO)とカッコをつけることで、自分の運命だと言い切れる強さを持って欲しいという願いを込めたんです。“NO MY DESTINY”と思う人間の弱さって絶対にあると思うんですけど、その結果に導いたのは結局自分でしかないんですよね。仮にもし神秘的な話で運命だったのかもしれないけれど、そこには自分たちの意志が介在していると。これが俺たちの出した答えなんだとか、自分の世界の中で自分で強く戦って生きていってほしいとか、いろんなメッセージを込めてます。
実はライブで盛り上がる曲が欲しかった!?
── ところで、昨年10月にリリースされた『Stars Seed』のインタビューの時に、次の作品を作ってると言っていましたが、ずっと制作してませんか?
三浦 明展(Dr):その通りです。
原:リードの『『Fly』を作ってる時だと思います。
西:『IQ:64(あいくるしぃ)』(2011年12月リリースのシングル)を作る前から、丸1年以上ずっと制作をやってます。
森下大輔(Gt):曲は常に作っていて、このアルバムは6曲いっきに録ったんじゃなくて、2〜3曲ずつレコーディングして、この曲この曲って。
── となると、リリースされていないものを含めるとけっこうな曲数がありそうですね。
西:曲と言えるほどのものではなくて、パートだったり、ワンコーラスずつとか、ざっくりこんな感じですけどというのを作っていて、ネタとしては60曲とか70曲とか。
森下:今回アルバムに入っている曲の中には、2曲を1曲にしたものもあって、最初と全然違う曲になったものもあります。
西:『街は灯りを消したまま』は、『Stars Seed』の時には出来ていた曲で、ドラムだけは録っていたんです。でも、歌詞とメロディーが納得いかなくて、一度まっさらな状態にして、ドラムに曲を乗せるという手法をとりました。コードと詞メロを何度も書き直して4パターンぐらい曲が出来て、最後の最後にこれになったんです。
原:事務所で、エイトビートにあわせてみんなで頭抱えてるという(笑)。
── そのドラムはどうしても使いたかったんですか?
西:それは…。予算がそこにはレコーディングでかかっているから、ボツにはできなかったという現実的な話もあって(笑)。曲のタイトルも何度か変わったんですが、最終的にタイトルだけは最初に付けていたものになって。前のインタビューでも話をしたんですけど、僕は音から言葉を紡ぎ出してもらうんです。それでこの曲を作った時に、「街は灯りを消したまま」というキーワードだけが聴こえてきて、それを軸に作りたかったから、何度書き直しても「街は灯りを消したまま」というプロットはあまりずらさないようにしてました。「街は灯りを消したまま」って、ちょっと意味ありげな言葉だから、断定的な歌詞を書いたとしても深い意味を与えられるかなと思って付けたんです。
── こういうスローで歌い上げる曲って、西さんの歌声にすごくハマりますよね。反対に、『パズル』は4つ打ちでこれまでのIn 197666で考えると新しいというか、明るめの曲です。
西:みんなでアレンジしていく中で一番苦労したのは『パズル』でしたね。対バンのイベントで他のバンドが4つ打ちの曲で跳びはねながらお客さんを煽るという感じがすごく羨ましくて、その要素は取り入れたいと思っていたんですけど、なかなかうまく出来なくて。
原:今まで作ったことがなかったですから。
西:でも最終的にはIn 197666らしくなったのかなとは思います。
── お客さんを煽る感じが羨ましかったんですね。
西:羨ましかったです。ナイショですけど(笑)。
── 最近のライブではけっこう煽ってますよね。昔はステージ上では笑顔も見せず、楽器を投げて帰っていた人たちだったのに、今では西さん、原さん、森下さんがステージ最先端あたりまで出てきて客席を煽りますから。
原:ここ1年ぐらいでいろんなライブを見て、4人ともライブに対する価値観的なものがガラッと変わったんです。
西:憧れではあるんですけど、笑顔を見せない、楽器を投げて帰るという哲学はもうないです(笑)。中途半端だったんですよ。そういうステージの見せ方が好きなんだけど、もっとお客さんと一体になってみんなが笑顔になれるようなステージを作りたいという思いもあって。今はエンタテインメントのショーとして成立させることを真摯に考えるようになりました。
── 振り切ったということですか?
西:振り切ったと俺たちが言ってしまうと、HEREのみなさんに悪いですけど(笑)。
原:HEREは振り切ったまま戻るつもりがないですから(笑)。
西:ライブハウスシーンには、HEREとかアルカラとかユニゾンとか、自分たちのアイデンティティを振り切ってる人たちしかいないし、それがメジャーの世界なのかなって思うんです。