RIP SLYMEのILMARI(Vo)をはじめ、KOSEN(Gt)、YAS(Ba)、SOHNOSUKE(Drums)の4人で結成されたThe Beatmoss(バンド名は"ビート"を"灯す"が由来)始動! 昨年11月には、バンドサウンドを軸に鳴らされた7曲を収録した1枚目のミニアルバム『The Beatmoss Vol.1』をリリース。そして、かなり速いペースで1月23日に2枚目となる『The Beatmoss Vol.2』をリリースする。『〜Vol.1』とはサウンドがガラッと変わり、『SUPERSTAR』のような4つ打ちのダンスチューンもあれば、『So Fish』のようなファンキーな曲もあり、ポジティブなメッセージを持った7曲で、ここから先多くの人を魅了しながら活動していくことを確信出来る作品だった。また、ILMARIのボーカルは圧倒的な存在感を放つと同時に、ギターを弾きながら歌う姿はとても新鮮に映る。
バンドとしては新人だが、メンバーそれぞれのキャリアとスキルを集結した彼ら。2月には東名阪で初のワンマンツアーが決定している。今回はメンバー4人にお話を聞くことが出来た。4人がどれだけこのバンドを楽しんでいるのかも実感出来る時間だった。(interview:やまだともこ)
ロックバンドならではのパーカッシブさ
── まさかILMARIさんがバンドで活動されるとは思っていなかったです。どうしてバンドをやろうと思ったんですか?
ILMARI:もともとロックが好きで興味があったんです。それで知り合いだったKOSENくんと話をしていく中で、ロックの曲を作ってみようよってなって、最初はデビューするとかは考えていなかったんですけど、2人でデモを作ったら気持ち良い感じになって。それをいろんな人に聴いてもらったら、「リリースしてもいいんじゃないの?」ってなったのがきっかけです。
── 『Flippin'Out』(『The Beatmoss Vol.1』収録曲)のMVを拝見したらILMARIさんがギターを弾いていて、違和感はないんですけど意外だなと思ったんです。ギターは前から触っていたんですか?
ILMARI:かじったことがあるぐらいで全然出来なかったんですけど、教えてもらって練習しました。練習は好きなので、夜中に酔っぱらって3万の大観衆をイメージしながら1人でILMARIオンステージとかやってます(笑)。
── そして、前作から2ヶ月という早いペースで『The Beatmoss Vol.2』がリリースされますが、バンドを組んだ初期衝動で、今は曲のアイディアがポンポン出てくるという感じなんですか?
ILMARI:それだと3ヶ月後ぐらいにまたリリースすることになりますけど(笑)。やる気の表れという捉え方でも良いんですけど、大きな流れとしては2011年のあたまから4人でリハに入り始めて、5月ぐらいからThe Beatmossが何者かを言わずに都内のライブハウスで対バンをイベントに出演させてもらっていたんです。それと並行して曲作りをして、アルバムを作ろうと選曲をしていたんですけど、ライブをやるようになってから出来た曲もあるし、それ以前に作った曲もあるし、打ち込みにトライした曲もあるし、曲の幅が広すぎて10曲とか11曲入れたアルバムを作るにはゴチャゴチャになっちゃうなって。それで、『〜Vol.1』はバンドサウンドで固めて、『〜Vol.2』はそこに入らなかった打ち込みの曲とかKOSENくんがボーカルを執るものを入れようということで、『〜Vol.1』と『〜Vol.2』に分けることにしたんです。この2枚はそういう意味での差別化で、でも2枚で1セットという感じなのでリリースの時期が近いんです。
── こんなに短期間でバンドって変わるんだという印象はありましたけど、そういうことだったんですね。
ILMARI:みんなそう思いますよね。自分でも聴いてそう思いましたからね。
── 作曲とアレンジは全てKOSENさんが手掛けていますが、みなさんさまざまなジャンルでキャリアがあるので、その要素を混ぜていくというのは大変な作業だったのでは? と思いますが。
KOSEN:SOHNOSUKEさんやILMARIさんは、自分が今までになかったジャンルの人なので、N.E.R.Dなどのヒップホップを教わって、それをバンドに生かそうという話になった時はすごく苦労しました。『〜Vol.2』だったら『Break Down』とか、『〜Vol.1』の『Flippin'Out』は今までの自分にはなかった感じです。
ILMARI:最初はラップの歌が1曲もなくて、2011年の夏ぐらいに僕とKOSENくんが作っていたデモが、『〜Vol.1』に収録している『Yellow Sun』とか『Summer』のメロウな曲なんですけど、その後リズム隊の2人が加わってライブをやっていく中で、メロウな曲はあまり盛り上がらないってことに気付いたんです。そうしてThe Beatmossの音楽ってなんぞやとライブ後に反省会をやって、いろんな曲を聴いたり、聴かせてもらいながら曲を作っていく中で、The Beatmossってこういうバンドなんだとメンバー同士で分かりあった感じが出来てきて、狙ってたような狙ってなかったような、みんなのエッセンスと気持ちが入って出来たのがこういう感じだった。ライブをやってなかったら、今頃恐ろしいことになっていたと思いますよ(苦笑)。
── 歌詞はラップが入ると、言葉の使い方やノリが変わると思うんですけど、その辺も試行錯誤しながらですか?
ILMARI:せっかくロックをやってるので、言葉のノリを僕がやってるRIP SLYMEやTERIYAKI BOYZと一緒にはしたくなかったんです。僕がボーカルでなくラッパーとして入ったロックバンドって中途半端ですごくイヤだなって思って、KOSENくんにロックの人の言葉のはめ方やノリを教えてもらいながら。途中KOSENくんがヒップホップの言葉のはめ方になっちゃって、あのピュアさは出て来ないなって思ってましたけど(笑)。
KOSEN:すごい聴いたんですよ。そのうちギターを弾くなんてかっこ悪いかも、これからはラップだろって思い始めて(笑)。
── 影響されすぎちゃいましたね(笑)。でも、ロックバンドだと韻を踏んでリズムを取ることがあまりないので、それをKOSENさんが挑戦しているというのもひとつの面白味ですよね。
KOSEN:必死に踏もうとしたんですけどね(苦笑)。
ILMARI:ラップは韻でリズムを取るんですけど、ロックの場合は韻で取らないし、それをロックの人がやろうとすると面白いパーカッシブさが出るんです。高校生の時に聴いていたレッチリとか、リズムの取り方をラップっぽくしてるけど、ラッパーとは全く違った、それに近いかもしれないです。今のロックの人ってラップうまいですよね。ちょっと前だけど、ジム・クラス・ヒーローズにしたってラッパーとしてやっていけるスキルじゃないですか。でもこのバンドはそうじゃない面白いパーカッシブさを大切にしたいんです。
KOSEN:今では、ロックの人がラップをやってることがロックなんじゃないかと思うんです。ミクスチャーロックがそうだったのかもしれないですけど、ああいうヘヴィーなサウンドじゃなくてもラップをするのがむしろロックじゃね? って。それがThe Beatmossの動機にもなってます。