今始めたら未来が変わるかもしれない
── 『The Cat Is Hard-Boiled』はバンジョーが入り、アルバムのアクセントになって良いですよね。
佐々木:こういう要素をアルバムに入れたいというのがあって、アルバムのために作った曲です。歌詞はサビの“永遠ってなんだ”っていうでかいテーマを猫に聞いたら、“なんか不味そう”って言われそうだなっていうイメージで、それを歌詞にしました。家の近所に猫がいるんですよ。それを見て思いついた歌詞で。
── 私は存在を証明したがっている気がしたんですけど。
佐々木:そういう意味では、お前はこれでいいのかっていつも自分を疑っている部分はありますね。職務質問された時に書いた『Human License』がありますけど、“あなたが人間かどうか”ってけっこう大袈裟な歌詞だったじゃないですか。自分の頭の中にある思想というと大袈裟ですけど、考えてることがでかい規模であったとしても、自分の生活とリンクしてないとダメだと、これはそれと一緒ですね。原発の事故があった後、前から永遠なんてなかったんですけど、もっとないなって思って。それに対する気持ちを書いておこうというのはありましたけど。
── AFOCの動物シリーズとしても期待を裏切らず(笑)。
佐々木:言われたらそうですね。今のところ欠かさず入ってますね(苦笑)。
── 『見るまえに跳べ』とか、身体で感じるサウンドがすごく増えてきてませんか?
佐々木:言いたいことから書くと頭でっかちになるのがいやで、それは大事にしてますね。ちゃんと身体で反応できるようにしたいし、音もかっこよくないとダメだと思っているので、パッと聴いて新しいものとかかっこいいという感じとか、身体が動くような感じは大事にしてやってます。そこで喋ってるだけのブルースだったらつまらなくなっちゃうし、俺が好きだったものとは逆になっちゃう。『見るまえに跳べ』に関しては歌詞もシンプルに書けたし、ライブでみんなわかってくれているという実感はあります。
── うねるベースもかっこいいですし。
佐々木:最初は自分でベースも入れるんです。でも姉さん(HISAYO)のベースが入ると、当たり前ですが格段に出来上がりが良くなりますね。姉さん節がかなり入ってます。
── HISAYOさんに対しても、こうして欲しいなどけっこう言うんですか?
佐々木:自分でなんとなくこうしたいというのがあるので、それを言って、あとはニュアンスだったり、ここは姉さんの気持ちで録って欲しいとか交換しあうという感じです。
── ドラムの渡邊さんは、今回収録された曲に対してなんて言ってました?
佐々木:『理由なき反抗』を聴いて喜んでいて、「すごいいいじゃん!」って言ってました。いつも疑いの眼差しで取り組むんですよ、アイツ。これで良いのかなって。今回はタイトル言った時点でいいね! ってすごく乗り気でした(笑)。
── 渡邊さんは雰囲気的に『ろくでなしBLUES』とか読んでそうなタイプですから(笑)。
佐々木:なべちゃんが読んでるのは『ジョジョの奇妙な冒険』ですね。
── 世の中としてもそうですけど、今は未来があまり見えないと思っていて、『FUCK FOREVER』の歌詞の言葉を借りると“クソくだらない世界”に対してどう生きていくのか、それは今の若い世代がそれぞれ思っていることではないかと思ったんですが。
佐々木:未来が見えないって俺らの世代からしたら前からで、就職難の人しかいなかったし、どうやって飯喰っていくんだろうって思ってる20代のヤツラばっかりで、それを抜きにしてもネガティブなものを時代のせいのするにはラクだと思うし、俺もそうしがちですけど、ロックンロールバンドマンだから、そこに対してメッセージを入れていきたい。未来なんていつでも見えないけれど、今始めたら未来が変わるかもしれない。だけど、未来がないと思ったら変わらない。当たり前のことなんだけど、当たり前のことをちゃんと言う。だからLOVEもFUCKも我慢しないで言うっていうのはそこに繋がっていて。『ブラックバード』は最初から未来を歌っていて、その頃と気持ちは一緒だけど、今は向こうを見ながら歌うというよりは足元を見ながら歌えています。
── 足元が見えた上で未来を考えると。だから、『見るまえに跳べ』の最後で、“今は今しかない”と言ってるんですね。
佐々木:あと『FUCK FOREVER』で、“始めようクソ素晴らしい世界”って。FUCKって攻撃する言葉でもあるんですけど、最高とかヤバイという時も使うじゃないですか。ヤバイという言葉もダメな時も良い時も使う言葉で、それって自分の気の持ちようだと思うんです。最高な時が“FOREVER”でも良いし、ダメな時はダメかもしれないから、その気持ちを作るのは自分だと思うので、ロックロールバンドでいる限りは転がって行きたいし、意地でも誤解をされても転がっていないとダメだと思っていて。
── ロックンロールバンドだから言える言葉もありますから。
佐々木:例えばFUCKだって、攻撃的すぎるなんて全く思ってないし、なんでかと言うと愛を持って攻撃してるからなんです。なんで攻撃するかと言うと、良くしたいから。このシステムは良くないとか、この環境にいるから俺はダメなんだじゃなくて、この環境を良くしたらもっと良くなるかもという発想でいたほうが絶対に良いと思っていて、それは政治でもいいし、身近なコミュニティでもいいし、目に見えないんだけどどこにでも隠されている真実なんじゃないかなと思っていて、それを言い当てたいなって。現代社会のストレスとか言われますけど、ストレスなんて昔からその世代ごとあると思っていて、直面すると苦しいけどあまり悲観的には考えてない。ある意味楽観的なんでしょうね。FUCKって言っても大丈夫だろうって思ってるし(笑)。引かれたら説明出来るし、説明する前に曲で聴かせたい。口で説明しきれないところがたくさんあるんです。そのために曲を作っているし、そこに全部託せた感じが自分では良かったなと思います。2012年の日本にFUCKは必要だったんじゃないかなと思っているので。12月に出すから後出しみたいに思われるかもしれないけれど、それは信じてます。
── 2012年を総括してFUCKだった、と。
佐々木:今年の言葉ですよ。流行語にはならないけれど、年末にお坊さんが書く感じです、『FUCK FOREVER』って(笑)。『I LOVE YOU』もそうでしたけど、これが必要なんじゃないか、言い当ててるんじゃないかと勝手に思っています。
── 昨年のAFOCは“2012年ロックバンド代表”と言ってましたけど、今年は?
佐々木:日本を代表してFUCKを言わせて頂きました(笑)。ブルースやってる人たちって苦しいから楽しいことないかなってギター持っていて、俺もそうでみんなの気持ちを代弁してるかはわからないけれど、言えない人たちもきっといるわけですよね。言っちゃいけない場所も絶対にあるわけで、でもロックンロールバンドはそんなの気にしてる場合じゃないから、俺たちもボコボコしてるんですけど、ボコボコしてる部分が誰かの心のボコボコしてる部分とピッタリ合ったら良いなと思っています。