a flood of circle(以下:AFOC)が新たに放つミニアルバム『FUCK FOREVER』。今作はインペリアルレコードに移籍した第1弾の作品。
2011年に『I LOVE YOU』をリリースした彼らから届けられた『FUCK FOREVER』は、とても攻撃的なタイトルだが、改めて話を聞くとその真意は理解できるものだった。未来には期待できないものとして生きてきた彼らの世代だからこそ、時代に抗いながら今を必死に生きている。それがこの作品から充分に窺うことができた。
今回も佐々木亮介に単独インタビューを敢行した。年を重ねるごとに佐々木が泥臭くなっていく感じは否定できないが、ロックンロールと共に転がり続けていることを証明しているようにも感じられた。(interview:やまだともこ)
世の中にFUCKと言うべきことがあるタイミングだった
── 今回の『FUCK FOREVER』はミニアルバムですけど、AFOCの曲って基本的にメッセージがちゃんと込められているからずっしりしているという感じなんです。でも、ミニアルバムという形もあるのか、今回はより手渡しやすくなったんじゃないかという印象を受けました。
佐々木:表題込みでいつもに増して言葉が強いので(笑)、ミニアルバムという形はこの曲のためにはすごく良かったのかなと思います。歌詞の量だと10曲分ぐらいあると思うし、『理由なき反抗』も長いし、タワーレコードの限定盤に入る『BLUES MAN』もめちゃめちゃ長いですし。
── しかし、昨年『I LOVE YOU』をリリースして、今回は『FUCK FOREVER』とはすごい振り幅ですね(苦笑)。
佐々木:言ってるテンションは同じではあるんですけど、『I LOVE YOU』を出したのが昨年の震災の後というのもあって、ロックバンドが今言うべきことはなんなのかって探している時に、自然と『I LOVE YOU』が出来たんです。あとアルバム『LOVE IS LIKE A ROCK'N'ROLL』で言うと『感光』の歌詞が大事で、その2曲で2011年に言うべき事が決まっていたのかなって思っていたんですけど、アルバムリリース後に負のスイッチが入ってしまったんです。喉の調子が悪くて今年の1月ぐらいまでずっと引きずってライブもやりきれないし、悔しい日が続いて、どうしようと思ってるうちにアルバムのリリースツアーが2月から始まって。でも、そんな気持ちでいても自分にとってもバンドにとっても良くないので、みんなで飲みに行っていろいろ話して、どうにか復活しようという過程で、“FUCK”という言葉が自分に一番しっくり来たんです。自分がクソだなというのがすごくあったし、このクズ野郎という思いもあって。ツアー先のホテルに酔っぱらって戻って、クソって思いながら熱いシャワーを浴びて、あーーとか言って鏡を見ながら中指を立てる。
── 失礼かもですが、それはそれで佐々木さんがやってると想像するととても画になるような…。
佐々木:そんなことないです(苦笑)。嫌な部分ってみんなの前では見せたくないので、1人になったときにウワーってなるんですよ。そんな感じで自分に対する苛立ちだけを持ち帰りまくっていたんです。それが不幸中の幸いと言うか、出すところが俺の場合歌詞しかなくて、1月に『FUCK FOREVER』の歌詞が出来ていたんです。『I LOVE YOU』と要素は全く逆ですけど、『I LOVE YOU』と同じぐらいすごく自然に出てきた歌詞で、『FUCK FOREVER』と『KINZOKU Bat』と『理由なき反抗(The Rebel Age)』は同じ月にいっきに出来ました。この3つが出来た時に自分の中で、『I LOVE YOU』から次のメッセージに自然に移行しているなって思ったんです。『I LOVE YOU』を書いたあと、来年どういう言葉を探せば良いのかなって思っていたんですけど、『FUCK FOREVER』は自然に出てきたものだったから、これが正しいんだなって。
── 探していたものの中にはどんなものがあったんですか?
佐々木:『The Cat Is Hard-Boiled』みたいにバンジョーをいつか弾いてみたいなとか、こういうのにしたいなというのはあったんですけど、まん中に置けるものはなんなのかなって思っていたんです。その時に自分の中でストレスを抱えていた部分もあったし、ここは納得いかないとか、震災で祖母が被災したんですけど、祖母が住んでる環境に対して扱われ方おかしいんじゃないかというのもあったり、世の中にFUCKと言うべきことがあるタイミングだったんです。自分の中のグサッときたものと、グサッと言わなきゃっていうものが同時に形になった気がして。これはあとから冷静になって考えたことですけど。
── 最初は自分に対する怒りから、世の中を見渡したものへと繋がったという感じですか?
佐々木:出てきた理由はそれだと思います。毎日いろんなニュースが溢れている中で、自分が隣接しているこれは問題だぞというものにしか取り組めないから、ロックに思いを込めたんです。それがスタート地点ですね。
── 震災を境に見てる世界が広くなってませんか?
佐々木:距離感を測ってる場合じゃないなというか。
── 6月にロフトプラスワンでトークイベントをやった時に、『FUCK FOREVER』という言葉を言ってたじゃないですか。これを言った瞬間、まさかみたいな雰囲気が会場にあったと思うんですけど。
佐々木:『I LOVE YOU』の時も、みんなに「え? どうしたの?」って言われましたよ。それと同じで、リリースして聴いたら納得してもらえると思います。誤解を招くタイトルではあると思ってますけど、それぐらい力強いのがいいかなと今は思ってます。ロックンロールバンドなんだから、LOVEもFUCKも言わなきゃダメでしょと思ったのが強くて、覚悟は決まってました。
── 言う覚悟は決まっていた、と。これは今出さなければダメだと思ったって事ですか?
佐々木:最初は『FUCK FOREVER』を作品に入れるかも決めてなかったんですけど、ミニアルバムのことを考えているうちに、このタイトルでこれが入ってるってのが大事なんじゃないかって。みんなで話してる時も、これは今出したほうが良いんじゃないかっていうのもありました。あまり不健康な感じではないなと自分では思っていて、さわやかにFUCKと言っています。
── まあ、FUCKはFUCKですけどね(笑)。
佐々木:メロディーも丁寧に書いたつもりだし、肝心な部分のFUCKが伝わったらいいなと思ってます。
自分の身の置き方や生き方で抗ってみせる
── でも『FUCK FOREVER』というタイトルのアルバムをレコード会社からよく出してもらえましたよね。
佐々木:それは感謝ですね。
── 中指を立ててるジャケも。
佐々木:言葉とビジュアルが象徴化されすぎてますが、今まで好きで聴いてくれる人にはすぐにわかってもらえる自信がありますし、今までAFOCを知らない人も、なんじゃこりゃでもいいから聴いてもらったらちゃんと伝わるんじゃないかなという気はします。これは最初から中指が立ってるジャケが良いと言ったわけじゃなくて、写真家の新保さんの写真展を見に行った時に、ずらっと並んでる最後がこの写真だったんです。それを見た時にこれだなというのがあって、自然と力強いものに巡り会えたというか、そういうタイミングだったんだろうなと今でも思ってます。
── では『KINZOKU Bat』と『理由なき反抗』はどんな成り立ちで?
佐々木:簡単に言うと、『FUCK FOREVER』はほとんど洗面所の前で行なわれてる歌詞なんですけど、『KINZOKU Bat』はボコボコにされる夢を見たんです。すごい夢を見たなと思って起きて、でもそれと同時に、自分でダメだと思っていることがあるんだと思って考えていたら、今日やろう、今夜やろう、明日やろう、明後日やろうって死ぬまで言ってろっていう気持ちになって書いていきました。『理由なき反抗』は、昔やっていたバイト先をクビになった人がいて、理不尽な理由やシステムに則ったあげく仕事がなくなった人たちが多くて、自分の生活の環境を含めて、システムにFUCKと言わなきゃいけないと思ったんです。内面的なものと外に向かったFUCKが同時に出てきて、FUCKと言うためにも、自分の環境に抗うというよりは、自分の身の置き方や生き方で抗ってみせるというのが大事なのかなって。LOVEとかFUCKとか理屈で出て来なかったのと同じで、理由や目的を探すためにロックンロールをやるんじゃなくて、やりたいからやってるんじゃんって。この3曲が、自分でもすごく信頼出来る3曲だったんです。これを軸に考えれば良いなって。
── 『理由なき反抗』は『I LOVE YOU』と同じく弥吉淳二さんがアレンジを手掛けてますが。
佐々木:『I LOVE YOU』と表裏一体ですが、今のAFOCのモードをすごくわかってくれました。デモの段階ですごく気に入ってくれて、反抗しているが故にロックンロールの楽しい部分だったり、明るい曲だったのでそこは大事にしたほうが良いんじゃないかと、そこを伸ばしてくれたかな。あとこの曲のギターは弥吉さんが弾いてくれてます。
── 『Summertime Blues Ⅱ』は忌野清志郎さんへのオマージュですか?
佐々木:エディー・コクランのオリジナルとザ・フーと清志郎さんからで、3つとも好きなんです。『見るまえに跳べ』は今年の春にやったツアー“LOVE IS LIKE A ROCK'N ROLL-見るまえに跳べ-”のテーマソングで、今年の夏にやった“(LOVE IS LIKE A) SUMMERTIME BLUES The Circuit”もテーマソングを作ろうと思ったんです。それで、『Summertime Blues Ⅱ』という曲を書いたんですけど、最初はもうちょっとシンプルな曲でした。
── あんなに歌詞が詰まってなかったんですか?
佐々木:はい。でも、アルバムを作るに向けてせっかく『Summertime Blues Ⅱ』を名乗っているんだから、言いたいことは全部言ってやろうって。それで言葉が溢れかえっていたから、喋っちゃったほうが良いんじゃないかなって。最初みんなに言った時に、すぐにそれ面白いねってなって。