自分たちなら何でもできるという自信が強くある
──これだけヴァラエティに富んだレパートリーがあるのに、ここ最近の短い時間のライヴばかりだと消化不良を起こしますよね。自分たちのほうがよっぽどいいバンドなのに、なんでこんなバンドが後のいい時間に出るんだ? みたいなことを思ったりしませんか。
なつみ:正直、思いますね。“なんでコイツらがトリなんだろう?”って思うようなことが(笑)。でも、時間の短いライヴも最初は“マジかぁ…”みたいな感じになるんですけど、いざやっちゃったら“楽しかったね!”ってなるんで(笑)。まぁ、短いライヴだったら短いなりに、インパクトのある曲しかやれませんけどね。
──知人の北海道出身のバンドマンが、「しんしんと音もなく降り積もる重い雪の中で育った人間にしか分からない生活の感覚というのが絶対にあって、それが歌にも反映されている」と話していたのが印象に残っているのですが、そういった感覚はなつみさんにもありますか。
なつみ:あるのかもしれませんね。高校を卒業したらみんな免許を取るんですけど、自分は車を持たずに歩いて行動してたんで。冬は車がないとツライんですけどね。雪が降ると何かと不便でイヤだなぁって思いがある反面、降り積もったら真っ白だからキレイだなぁって純粋に思うんです。雪が降ってる時って、景色が全部灰色になるんですよ。色が無くなっちゃって、空もずっと曇ってる。凄く閉鎖されてる気分になるんです。それを知ってるのと知らないのとじゃ、感覚が違ってくるのかもしれませんね。
──THE××ズが体現する“闇”と“病み”の原点にあるのが白銀の“pop town”なのかなと思ったんですが。
なつみ:うーん。病人的な“病み”っていうのを今まで意識したことがなかったんで、今言われてちょっとビックリしてます(笑)。
──だって、「いっそ×××してあげようか」ですよ?(笑)
なつみ:そうですかねぇ…(笑)。むしろ自分では“潔いことやってるな”って思ってるぐらいなんですけど。実際、「病んでる」とかけっこう言われたりしますけど、こういうインタビューではっきり言われるとは思わなかったです(笑)。確かに、ちょっと病んでる女の子から手紙やメールをもらったりして、“なんでだろう?”って思ってたんですけど、男の人が聴いてもそう感じるならそうなんだなって今思いました(笑)。
──なつみさんとしては、ただ実直に歌詞を綴っているだけなんですよね?
なつみ:自分のことを病んでるって思ったこともないし、凄い明るいなぁって思ってるぐらいなんですけどね(笑)。この間も、バンジー・ジャンプをしてきたんですよ。
──はい?(笑)
なつみ:ずっとやりたかったんです。ヒモ1本しか付いてなくて、思ったより怖かったですね。そんなに高くないんですけど、めっちゃ高く感じちゃって。
──バンジー・ジャンプに興じる女性と「あなたが笑うと私は吐きそう」と連呼する女性が同一人物とはとても思えませんけど(笑)。でもどうですか、THE××ズの初期の代表曲がギュッと詰め込まれた会心の作が出来たという手応えがあるんじゃないですか。
なつみ:いいものを作れたと自分でも思いますね。インディーで出したのと全然違くもないけど、その先に行けたかなって思うし、さらにその次にも繋がるようなアルバムが出来た気がします。
──THE××ズとしてやれることがまだまだたくさんあるぞ、と?
なつみ:ホントにやれることはいっぱいあるんだなって気づきました。“頑張ればできるじゃん!”って言うか(笑)。「卑小な死」とか「ゼスチュア」みたいな曲は今までなかったし。「はなきちGUY」も最初はギターのコードを1個も使ってなくて、下の弦2本を押さえただけで作ったのをみんなに持っていったんですよ。そしたられんさんにめっちゃ怒られて、「なんだこの曲は!?」って言われて(笑)、ボツになるところだったんです。でも、れんさんが頑張ってコードで弾けるところは弾いて、自分なりにアレンジして、何とか形にしてくれたんです。そういう成長過程が見られたレコーディングだったんですよ。だから、自分がめちゃくちゃな曲を持っていってもみんながどうにかしてくれるし、今まで以上にみんなのことを信頼できることに気づきましたね。
──でも、作曲のノウハウをよく知らないなつみさんが作曲を手がけるからこそ「何じゃこりゃ!?」な面白い曲が生まれるんじゃないですかね。
なつみ:それは凄いあると思います。作曲のテクニックとか全然知らないんで、詳しい人が聴いたら「全然ダメだ、こんなの!」って言われるだろうなって自分でも思ってます。
──THE××ズは、今のなつみさんにとって自己表現の場としてこれ以上のものはないという位置づけですか。
なつみ:うーん、どうなんだろう…。自己表現をしたいっていうんじゃなくて、ただ単にバンドがずっとやりたかったんですよ。その延長線上で自分の思ってることを歌にできるのを知ったから、自分のことよりもまずバンドありきなんですよね。
──カタい言葉になりますけど、芸術活動に従事している意識もありませんか。
なつみ:芸術って分かりにくいじゃないですか。「この絵の良さが分かんないのはダメだ」みたいな押しつけがましさがある気がして。説明がないから、「エッ、これのどこがいいの?」って感じる作品も多いし。別に説明しろってわけじゃないけど、私は分かりやすいほうが好きなんです。シンプルで分かりやすいのが一番いい。
──と言うことは、リスナーやオーディエンスに対して舌を出しながら“あかんべぇ”をしてやりたいという気持ちも特にないですか。
なつみ:こう来ると思ったらこう来たか!? っていう変化球のスタイルは凄い好きだし、そういうギャップは曲作りでも活動の仕方でも面白いと思いますけど、別に悪態をつきたいわけじゃないですね。面白いか、面白くないかですべてを決めます。
──迷った時の判断基準として?
なつみ:迷わずとも、面白いか、面白くないかで決めますね。今のTHE××ズのアルバムはこんな感じだけど、いずれはクラシックをやっちゃうかもしれないし、クラフトワークみたいなことをやっちゃうかもしれない(笑)。そういうのも無きにしも非ずなんですよ。アルバムによって作風が全然違うのも面白いなと思ってるし、自分たちだったら何でもできるっていう自信が強くあるのかもしれないです。全然根拠はないですけどね、基本的にバカの集まりなんで(笑)。