「THE××ズ」と書いて「ザ・チョメチョメズ」と読む。メンバーは山城新伍も『アイ・アイゲーム』も知る由のない弱冠20歳、"活彩あおもり"こと青森県は黒石市からやって来た気鋭の4ピース・バンドだ。その奇抜なバンド名然り、紅一点のヴォーカリストの頓狂なパフォーマンスやパンツ一丁でスティックを豪快に振り回すドラマーの特異な容姿然り、一見すると単なる色物に思われるかもしれないが、その素顔は至って純粋にパンクとブギーを混在させた我流の音楽を追求しようとしている音楽至上主義集団である。だからこそ、結成からわずか3年の間に耳の肥えた音楽ファンから絶大な支持を集め、数々の登竜門的イヴェントの檜舞台に立ち、晴れてメジャー・デビューまで漕ぎ着けることができたのだろう。
取っかかりは何でもいい。とにかく一度、猥雑だが底抜けにポップな彼らの音楽を是非聴いてみて欲しい。「アルバムもジャケットもPVも全部、『何じゃこりゃ!?』って笑って欲しくて作ったんですよ。どうにかしてみんなに笑ってもらえたら凄い楽しいんです」と津軽弁で屈託なく話すヴォーカル、なつみのキュートなルックス目当てにライヴを観るのもいい。血湧き肉躍るTHE××ズの和製グルーヴはあなたの心を瞬時に鷲掴みにして決して離さないはずだ。(interview:椎名宗之)
お客さんが少ない時は逆にテンションが上がる
──2009年の結成以来、2010年には『閃光ライオット』のファイナリストに選抜されて、2011年にはフジロック・フェスティバルの『ROOKIE A GO-GO』に出演して、そして今年は遂にメジャー・デビューと、順調すぎるペースでめきめきと頭角を現していますね。
なつみ:そう見えるだけだと思いますけど(笑)。途中でメンバーが替わったり、浮き沈みはいろいろとありましたから。いろんなところで注目されてきたことよりも、今のメンバーで音を合わせてるのが凄く楽しいんです。前よりどんどん楽しくなってきました。
──ベースが替わったんですよね?
なつみ:はい。多分、それが凄く大きいですね。前までは、どこでライヴをしても「リズム隊が全然合ってない」って言われてたんですけど、メンバー・チェンジしてからはとてもいい感じなんですよ。
──なつみさんも唄いやすくなった?
なつみ:唄いやすいし、気持ちいいですね。ステージの中で信頼できるメンバーに囲まれてライヴをやれてるのが凄く気持ちいいです。
──なつみさんにとって、このTHE××ズが初めてのバンドなんですか。
なつみ:そうです。私以外の3人は他でコピー・バンドをやってて、ギターのれんさんのやってたコピー・バンドが解散して、一緒にバンドを組むことにしたんです。それからドラムのセクシーワイルドが入って、今年の3月にベースのてつしが入って、今に至る感じです。
──そもそもどんなきっかけでTHE××ズをやろうと思ったんですか。
なつみ:れんさんとは幼馴染みで、高校生の時に地元の青森のライヴハウスで久し振りに再会したんですよ。その時にお互い音楽が好きなことを初めて知って、「だったらバンドを一緒にやろうよ」ってことになって。
──なつみさんは最初からヴォーカル志望?
なつみ:楽器ができなかったから、ヴォーカルでいいやと思って。それが18歳の時ですね。
──バンドを始めるには割と遅いほうですよね。
なつみ:周りに友達がいなかったから(笑)、なかなかやる機会がなくて。絵を描いたり詩を書いたりはずっとしてたんですけど、詩を書くだけなら独りでできるじゃないですか。それよりもやっぱバンドっていう形が良くて、そんな時にたまたまれんさんに会ったから、これでバンドがやれるなと思って。最初は自分が詞を持っていって、それにれんさんが曲を付けてくれる感じでした。
──最初からTHE××ズというインパクトがあるにも程があるバンド名を名乗っていたんですか。
なつみ:オリジナルをやり始めてからはTHE××ズでしたね。それまではセックス・ピストルズのコピーをやってたんです。でもそれも2ヵ月ぐらいで終わって、すぐにオリジナル曲が出来ちゃったんで、それじゃバンド名も変えようってことになって。それでTHE××ズに。
──なつみさんが命名したんですか。
なつみ:いや、それはれんさんが決めました。
──抵抗はなかったんですか(笑)。
なつみ:いや、むしろ“かわいいじゃん!”って思いましたよ(笑)。
──結成当初はどんな方向性のバンドをやろうと?
なつみ:セックス・ピストルズのコピーをやってたぐらいなので、初期パンクみたいな音楽を女の子がうるさくやったら面白いんじゃないかっていう単純な発想で(笑)。
──パンクの要素ももちろんありますけど、音源を聴くと、割とブルースの影響も色濃く出ているように感じますね。
なつみ:途中かられんさんがブルースから逃れられなくなっちゃって(笑)、どんどんどんどんブルースにのめり込んでいったんですよ。地元のよくライヴをやってた所で、毎週ブルース・セッションっていうのがあったんです。おじさんたちがやってるブルース・バンドと共演して、れんさんはそこでギターの技を磨くとか言ってたんで、そういうのが影響してると思いますね。
──これまでのTHE××ズはイメージ先行で語られがちと言うか、キワモノ的な存在として見られることが多かったと思うんですが、僕は先日のシェルターでのライヴを見て印象が変わったんですよね。各人の演奏は達者でアンサンブルのまとまりも良かったし、なつみさんの歌とパフォーマンスもちゃんとエンターテイメントとして成立していたし、割と正統派のバンドなんだなと思って。
なつみ:自分たちはずっと正統派のつもりなんですけどね(笑)。やっぱ、見た目とか名前とかパフォーマンスとかで判断されちゃってたのかなと思いますけど。
──ちなみに、フロアに降りて唄うのはよくやっているんですか。
なつみ:お客さんが少ない時は、逆にテンションが上がって飛び降りちゃうことがたまにあるんです。フロアが空いてたら、“これは自分のために空いてんのかな?”って思っちゃうんですよ(笑)。