一番大事なのは歌が楽しく聴こえること
──アルバムの話に戻りましょう。「明日の3時に待ち合わせて荒川の夕日見に行かないかい」は腰に来るシャッフル・ビートが心地好いナンバーで、ぴったり息の合ったバンド・アンサンブルも楽しめますね。
M:まぁ、ザ・フーみたいなもんですけどね(笑)。別に狙ったわけじゃないんだけど、何かそうなっちゃった。イカちゃん(イカリタケトシ:新宿レッドクロス・The Strikes)にアルバムの全曲解説をしてもらったんだけど[編註:オフィシャルサイトとフライヤーに掲載]、この曲は「ギター・ソロのまとまりきってない感じがジョージ・ハリスンぽくてgood!」って突っ込まれてて、ホントにその通りなんですよ(笑)。わざと拙い感じでギター・ソロを弾くとジョージっぽくなるんです。だから「よくご存知で」ってイカちゃんには言っときました。何も反論はありません(笑)。
──でも、あのちょっとヨレたギター・ソロはマモルさんのお里がよく出た部分でもあると思いますけどね。
M:あの手の曲にはああいうソロを弾くしかないんですよ。僕の引き出しにはそれしかないので。何と言うか、「もう終わっちゃうの? 何でもっと弾かないんだよ!?」っていう感じがジョージの好きなところなんだよね(笑)。それでもちゃんとメロディに寄り添ってるところが素晴らしい。まぁ、ノロすぎてソロが口で言えちゃうところがあるけどね(笑)。クラプトンは上手すぎて口じゃ言えないじゃないですか。だから、僕の楽曲にクラプトン的要素が入ると困るんですよ。僕がフレーズを口で言えないから、クラプトンは仲間に入れてあげない(笑)。
──DAViESでも、技術的なことをメンバーに求めることはないですか。
M:うん。それよりも、どういうCDを買ったとか、そういうのが大事ですね。演奏はノリが良ければ充分ですよ。
──バンドと音合わせをする前の曲の雛型はどこまで仕上がっているものなんですか。
M:ほぼ完璧にアレンジが固まってるのもあるんですけど、曲によってはけっこう苦労することもありますね。今回で言えば、「ハッピーソング」のギターのアレンジとか「パレード」のベース・ラインを考えるのはちょっと苦労したかな。「セブンティーン」とか「MAGIC BUS」なんかはそのまんまですね。何事もあまり考えすぎるとダメになるんですよ。一番大事なのは歌が楽しく聴こえることで、いつもそれを基本に考えてますね。ずっとやってると歌が離れていっちゃうので、そこは気をつけてやってます。
──煮詰まるような状況に陥らないように心懸けていると?
M:でも、一度は必ず煮詰まらないとダメなんです。「最悪なものが出来てしまった…」ぐらいのことを一度は思わないとね。そこで頭を冷やして客観視してみる。いつもそうですよ。
──「キャデラック」シリーズも“5号”まで来ましたが、今回は随分と穏やかな曲調に仕上がったのが意外でしたね。
M:何でしょうね。鼻歌でメロディを口ずさんでいたら、「♪キャデラ〜ック〜」って出てきちゃったんですよ。それで「よし、この曲を“5号”にしよう!」と認定をしたわけです(笑)。
──それにしても、あの緩やかなメロディで「ムダじゃねぇぞ ビート・パンク」と突拍子もなく唄われるのが凄いですよね(笑)。
M:まぁ、ビート・パンクは自分が通ってきた道ですからね。でも、せっかくの曲調を台無しにしてるし、如何にどうでもいい歌詞かっていうことですよね(笑)。
──「MAGIC BUS 〜feat. THE WHO〜」は徹頭徹尾、完膚無きまでにあの「MAGIC BUS」で、潔さすら感じましたけど(笑)。
M:マズイですね(笑)。「MAGIC BUS」って唄うところの言葉を変えれば違う曲になったんだろうけど、やっぱりザ・フーの「MAGIC BUS」を引用したかったんですよ。それにコード進行をちょっと付け加えて、日本語の歌詞を付けてね。ホントは変えても良かったんだけど、どうしても「MAGIC BUS」って言葉しか出てこなかった。それで「〜feat. THE WHO〜」ってタイトルに入れる作戦をとることにして(笑)。もうね、いいだろうと思って。僕ぐらいロックが好きだったら「MAGIC BUS」って唄っちゃっても関係ねぇやと。文句を言いたいヤツがいるなら言えばいい。しょうがないんだよ、「MAGIC BUS」って出てきちゃったんだから(笑)。
──いいと思いますよ。何より聴いていて凄く楽しいので。
M:そう、自分でも「MAGIC BUS」って唄ってるのが楽しいんです。最近ライブでもやり出して、お客さんと「MAGIC BUS」って掛け合いするのも凄く楽しいんですよ。
──あのボ・ディドリー的なリズムとビートって、ロックが好きな人の中では血肉化したものですよね。無条件に身体が踊り出してしまうパブロフの犬みたいなものと言うか、もの凄いロックの発明品だと思うんですよ。
M:何が凄いって、コードが一個しかないですからね。ジャッ、ジャッ、ジャッ、のまま最後まで行っちゃう。あとはせいぜいマラカスをシャカシャカ振ってるだけでしょう?(笑) それだけでも充分ノレる。素晴らしいですよ。
──「ウソがつけない 直球野郎/本当は照れ屋 涙にもろい」と唄われる「やさしいロックンローラー」のモデルはマモルさん自身ですか? 「ゴーゴーレッツゴー レッツゴー オ〜レ〜〜」という声援パートもありますし(笑)。
M:どうなんでしょうねぇ。イカちゃんもそんなことを書いてましたけど。僕がモデルなのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。まぁ、どっちでもいいです。
──ロックンローラーなら誰しも当てはまる節があるでしょうしね。
M:ほんの3分ぐらいで楽しく作った曲なのでよく分からないです。もの凄く短い歌詞だし、何にも内容がないですからね(笑)。一番命を懸けたのは「オイ!」っていう掛け声だったし(笑)。「オイ、今の“オイ!”はイマイチだったんじゃないか!?」なんて言って。ハモリよりも「オイ!」が大事っていうのがバンドの方針なので(笑)。
──それは「オンナ子供にゃあ 分からねぇ」世界ですね(笑)。
M:ハハハハ。いいんですかねぇ、そんなこと言って。とにかくノリで作ったもんだから、ラモーンズっぽい感じも自然に出ちゃうと言うか、逆に隠さないぞ、ひねらないよって言うか。ひねる曲もあるけど、これはひねらないよ、と。悪いけどヨロシク! って感じですね。