どれがリード曲になってもおかしくない4曲です
── シングルのお話を聞きたいのですが、7月4日にリリースするシングル『Sister』は、シングルとして売り出すのがもったいない程のボリュームを感じ、とても聴きごたえのある内容でした。この4曲は自主盤時代からある曲ですか?
森:昔からある曲は2曲目『藍色に』、3曲目『Telomere』です。それで、最近出来た曲が1曲目『Sister』、4曲目『Laika and Hz and contrast.』です。
── この4曲がシングル収録曲として選ばれた理由を聞かせてください。
森:作品として1枚にパッケージしたというよりかは、みんなの多数決で好きな曲を入れました。
白山:良い意味でまとまりがないので、どれがリード曲になってもおかしくない4曲ですね。
小川:幅の広さが良く出ていると思う。
白山:全国流通盤として最初の1枚だからこそ、聴く人を選ばないものに仕上げました。1枚に対してコンセプトが強すぎると、それが苦手な人は入りにくいかなと思いまして。
森:自主盤としてこれまでに何枚かリリースをしているんですが、世間一般的には全国流通する1枚目なので、コンセプトを言うならば「人の意見を聞けるようになったよ」という感じです(笑)。
── 基本的には楽曲の作詞/作曲をやっているのは森君ですか?
森:そうです。編曲に関してはバンドでやります
── それでは、新譜『Sister』に収録されている楽曲の楽曲解説を聞かせてください。
森:「このひととは、(好きすぎて)結婚できないんだろうな」と思うひとのことを歌っています。 これに、いわゆるシスターの純潔なイメージを重ねています。 「好き」ということを突き詰めていくと、結局はすべてのことを包括して、“無”になるのだなと。 基本的には、明るい曲ですが。
── では2曲目『藍色に。』は?
森:「irony」という言葉に掛けているのですが、これも色恋沙汰の曲です。めちゃくちゃ好きだった女の子にふられて、すごい虚無感があって書いた曲です。自分が言っている事や発信している事を嘘臭く感じる事が多々あり、全然通じないなと思う事があって。最後にオチがある訳じゃなく、ただ単に情景描写の寂しいと思っている曲です。
── 自分の体験が曲に反映される事が多そうですね。
森:自分の中で良い曲というのはリアルである事だという定義があって。経験があるなしにも関わらず、リアルだったら良いと思うのです。結局リアルという所に辿りつくなら自分自身の経験が一番伝わりやすいのかなと思います。
── 森君は人の「死」に遭遇した事はありますか?
森:死生観に関しても捻くれた意見があって、人が死ぬという事に対して、悲しいと思う事が失礼なんじゃないかなと思う所があるんです。人間が何億人もいて、必ず「死ぬ」という所に辿り着くじゃないですか。「死ぬ」というゴール地点が悲しみになるなら、俺は生きていたくないと思うんです。
── なるほど、、、。私がその質問をしたのは、リアルを言葉にする人がそういった境遇に遭遇した時、どんな言葉が生まれてくるのかなと思い聞いてみました。
森:「死」と「生」を意識した曲を書いたのが3曲目『Telomere』です。誰かの事を忘れた瞬間に、その人の存在は死んでしまうのかなと思う。忘れるという事に対して昔から拒絶反応があるのです。だからこそ忘れる事に対して臆病でいたくないという曲が『Telomere』です。
── 4曲目『Laika and Hz and contrast.』は?
白山:収録曲の打ち合わせをした時に、元々シングルに収録予定だった曲が、お話を頂いたKONAMIのゲームに向かないのではという事もあり、ゲームに入ってもおかしくない曲を作ったのがきっかけです。
森:でも凄くこの曲には意味があります。タイトルにある「『Laika and Hz and contrast,』の「Laika」は地球上にいる動物の中で初めて宇宙に行った犬の名前です。「Laika」が初めて宇宙に行った犬という事と、僕らが初めて全国流通盤のCDを出すという意味を被せて色々と考えて作った曲です。
白山:確かに宇宙感がある曲だよね。
森:「Laika」という犬は打ち上げで死んでしまうので、戻れなかったのですが、「Laika」という犬の事を僕らが意識の中で今でも覚えているので「Laika」は生き続けているように、僕らの音楽がいつまでも人の意識の中でずっと生き続けていられたらなという思いを込めて書きました。
── こうやって各楽曲のお話を聞くだけでも色々と聞き出せるので、多数決で決めた割にはやっぱりこのシングルはボリュームありますよ(笑)。
白山:確かにボリューミーですね。
森:どの曲がどんな風に収録されても、こうなったと思います。僕らの曲は基本的に理屈っぽいメッセージが裏に隠れていたりするので、そうゆう所を色々と感じて聞いてもらえたらなと思います。「こんな意味があるのでは」と推測しながら聴いてもらいたいです。
小川:歌詞を見て聞いているだけじゃ分からない所もあるので、1人1人違う意見を持ってもらっても良いので考えて聴いて欲しいです。
── では、今だから話せるようなレコーディング秘話を聴かせてください。
白山:全然スムーズじゃなかったです。
森:僕ら思っていたより演奏が下手だったという(笑)。あと、初めて大きな規模のレコーディングをしましたね。
白山:レコーディングスタジオで録音するのが今回は久しぶりだったというのがありましたね。結構あたふたしました(笑)。
森:今回のレコーディングは、それぞれの「良い音」が聴けたので、それを身体で覚えられたから判断基準がグッとあがりましたね。
ステージにあがるといつもと違う自分になります
── 次はライブについて聞きたいのですが、私が初めて皆さんのライブを見た時、ボーカルの森さんがお客さんをじっと見て演奏し歌っている姿が印象的でした。
森:僕は私生活が終わっていて、人付き合いがとても苦手なのです。凄く考えてしまうし、溜め込んでしまう。人に対して警戒心が強く、疑い深い性格なのです。ライブはそういうのを解き放つ場所ですね。ステージにあがるといつもと違う自分になります。何かに取り憑かれる訳じゃないですけど、スイッチが入るよね。
白山:みんな普段めっちゃ真面目です。ステージから降りると暗いですよ(笑)。ステージを降りたらびっくりされる事が多いです。
森:僕らが逆にお客さんに救われていますね。同じ風呂に入って喋っているような居心地の良さを感じます。
── 皆さんのライブを見ているお客さんを見ると、さっきまで一緒に喋っていた仲間を憧れの目線でステージを見るかのような印象を受けました。
森:同じ方向を見て同じ音を聞いている100人や200人のお客さんに対して、僕らは真っ向から向かって音を出しているのでそこにとても意味を感じます。だから憧れというよりかは、エネルギーは発しているのかなと思います。
── そして、私にはお客さんと目を反らさない皆さんがステージにいるように見えます。
森:ステージから見ていると基本前列の人の顔しか見えないですが、学校が終わってから電車に乗り継いで、雨だったら傘をさしてライブハウスに来てくれるじゃないですか。ドリンクチケットを買って僕らを見てくれるからこそ見ない訳にはいかないですよ。その人がどんな人か少し分かるような気がして僕はそれがとても嬉しいです。
── では初めて新宿ロフトに出演した時の心境はどうでしたか?
白山:憧れのライブハウスでした。キャパが広い事もあるのですが、キャパ以上の広さを感じましたね。ここを埋めるにはどうしたら良いのだろうかと考えた時に、ただ単に一杯するのではなく大きい何かが必要なのだと思いました。
森:僕らライブハウスを色々と回って来ましたが、やっぱりライブハウスが持っているエネルギーやカラーがあって。ロフトの階段を降りた時に「ここには色々な物が刻まれているのだろうな」と。僕らもちょっとぐらい爪痕を残せたらなと思いました。ここに出るだけで、もしかしたら爪痕を残せるかもという期待感もありました。
小川:全く同じですね(笑)。
田中駿汰(Dr.):歴史がある感じを受けました。
── 8月に控えているワンマンライブについて聞きたいのですが、どんなワンマンにしたいですか?
白山:ワンマンなので、普段のライブでは出来ないような事がしたいですね。例えばアコースティックライブを入れてみたり、コール&レスポンスをしてみたり。
田中:俺たちがやりたい事を全部やる感じですね。
── 初めてのワンマンではないですよね?
白山:去年は今年と同じ日にやりました。その時はオープニングアクトを入れたので今年はガチワンマンです(笑)。
── 最後に聞きたいのですが、Brian the Sunは、将来どんなバンドでありたいですか?
森:先の事を見据えるという事はとても大事だと思うのですが、明日の積み重ねが1年後になると思うので、10年後20年後も明日どうしようかなとこの4人で考える事が出来たらなと思います。明日に向けてどうする? 次のライブに向けてどうする? という気持ちを忘れないで音楽をやっていきたいですね。
〜ありがとうございました〜