変わることが出来て良かった
── ところで、今作は新メンバーになって初めて出す作品でありながら、旧メンバーでレコーディングした曲が9曲入っていますが、これにはどういう理由があるんですか?
「レコーディング自体は昨年1年かけてやっていたんです。9月に脱退が決まって、けっこう進んでいたというのと録り直す時間がなかったという現実的な理由もあったんですけど、全部録り直そうって言われても僕はやらなかったと思います。その時にしか出せない音もあるし、前のメンバーとはお互い嫌いになって別の道を歩くことになったわけでもないし、残した作品は入れたいと思ったんです。一緒に過ごした時間は何一つ無駄じゃなかったと思うし、それがあって今の自分がいるし、混沌としたDirty Old Menの姿を隠さず見せるべきだと思ったんです」
── 昨年はレコーディングをやっていたとおっしゃいましたが、昨年の2月に『GUIDANCE』をリリースして以降、曲は作っているけれどCDを出すに至るまでの曲がなかなか出来上がらないという話は聞いていました。なので、昨年の1年間は高津戸さんにとって試練の1年だったんじゃないかと思いますが…。
「修行のような日々で、すごく濃い1年でした。曲はずっと作り続けていたんですけど、メンバーとスタッフを含めた全員が納得出来る曲を書くことが出来なくて、プロデューサーにいしわたり淳治さんを迎えて一緒に曲を作っていくことになったんです。根本から曲作りの方法を考え直したり、新しいことに挑戦して、その時に出来た曲がアルバムに入っている『変えるのうた』と『探し物』なんです。今思うと淳治さんに会えなかったら、未来がなかったのかなって感じます。今作では淳治さん以外にも、akkinさんや玉井健二さんと一緒に曲作りをしたんですけど、ギターフレーズで持っていったものを鍵盤にしたり、打ち込みにしたり、新しいアイディアをたくさん頂きました。すごく勉強になりました」
── 昨年秋のツアーで『変えるのうた』が演奏された時に、今までにないサウンドだと思ったし、Dirty Old Menが変わろうとしている感じがすごくしたんです。まさかその後、メンバーが変わってしまうとは思ってもいませんでしたが…。
「そうですよね…。『変えるのうた』は、16分ノリのオシャレな曲をやってみたいと思って作ったんです。歌詞は、淳治さんと出会って自分が井の中の蛙だったと思ったところをきっかけに、自分を蛙に喩えて、ここを飛び出して前に進んでいこうという歌詞になりました」
── 人間の感情を動物に喩えて書いた歌詞は今までも多くありましたが、『コウモリ』もそういう曲ですね。
「これはけっこう前に書いた曲で、いつかやりたいと思っていたんです。少年の葛藤を逆さまに吊されたコウモリに喩えるという歌詞で、こういう歌詞は自分としても比較的書きやすくて、うまく喩えられたなと思ってます。この曲は新メンバーでレコーディングしたんですけど、雄司がメロコア出身なので好かれようと思っていたのに、こういう曲よりもどちらかと言えば、『探し物』みたいなポップな曲のほうが好きだったというオチはありましたけど(苦笑)」
── “悲しいのに笑ってて”という歌詞は、まさにDirty Old Menという。
「真骨頂ですね、Dirty Old Menの(笑)」
── 『変えるのうた』でDirty Old Menが変わろうとしていると感じたと言いましたけど、『探し物』はアコースティック・ポップで、今までになかったサウンドになっていて。この曲良いですね。
「夏の海のようなカラッとしたイメージで書きたいなというテーマがあったんです。新しいものを作りたいし、変わりたいと思っていたので、バンドっぽくない感じの曲ですけど、この曲が良いって言ってくれる人がすごく多いんです」
── また、『スターチス』は鍵盤を使用して音もキラキラしているし、Dirty Old Menにしては珍しい(!?)明るいラブソングで…。歌詞の“何千何万回も恋に落ちてる”ってすごい表現ですね。
「淳治さんと出会ってたくさん吸収した後に書いた曲で、いろんなものが吹っ切れていたんです。歌詞を書くのもすごく楽しくて、最初は普遍的なラブソングを書く予定でしたが、“何千何万回も恋に落ちてる”という、大袈裟な表現を入れるということにも挑戦したくなって。サウンドも今までにない感じになりました」
── これからは物語性のある曲ではなく、『doors』や『a heart of difference』のような内面を吐露する曲が増えていくんですか?
「どちらも書きたいと思ってます。『変えるのうた』のように、何かに喩えたとしてもメッセージ性があるというか、わかりやすいものを。聴いてくれる人も日々いろいろなことがあって変化していくように、僕らも変わっていかなければならないし、もっともっと自分ら発信でメッセージを届けて行かなくちゃいけないなっていうのはありますね」
── 止まらないですね。止まれないと思いますけど。5月26日からは仙台enn 2ndを皮切りに、新メンバーとは初めてとなる全国ツアーがあって、ファイナルはこれまでの東京ワンマンの中では一番大きい会場となる赤坂BLITZで。
「4人での初めてのツアーなので、ひとつずつ目標を立てて達成させながら進んでいきたいと思います。それが自信や力になると思っているし、1回のライブごとに成長していけると思ってますから」
── 4月14日のライブで、“変わることを恐れずに進んで行こう”と言ってましたが、今は変われて良かったと思いますか?
「新メンバーの2人に出会って、変わることは悪いことだけじゃないって。変わらないものをずっと探していたけど変わるって良いことだなって。もちろん良いことも悪いこともたくさんあると思いますけど、今は良いことの方が多いので変われて良かったです。最高の仲間に出会い、音楽をやれているのが今すごく嬉しくて、決めた道は間違ってなかったと思います。僕らが変わったことにまだ戸惑ってる人も多いと思いますが、この4人になって“かっこいい”っていつか言ってもらえると思っているので、迷いなく進んでいきます」
── 楽しみにしています。
「これからもよろしくお願いします」