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INTERVIEW

トップインタビューBEYONDS(2012年3月号)

新たな布陣で生成された“過渡期の傑作”の無垢なる輝き

2012.03.01

 前作『WEEKEND』の発表から早4年、度重なるメンバーの変遷を経て辿り着いた現編成──すなわち、谷口健(vo)、中川暁生(g)、工藤"TEKKIN"哲也(b)、大地大介(ds)の4人こそBEYONDS史上最強の布陣だと僕は断言したい。90年代初頭、USハードコア直系のサウンドに叙情的なメロディを織り込み、日本のハードコア/パンク・シーンの門戸を開いたNUKEY PIKESと並ぶ先駆者である...云々の煽情的な説明はもういいだろう。一角のキャリアを積んで絶大な支持と評価を集めながらも、決してそれに驕ることなく、アンサンブルから生まれる得も言われぬダイナミズムをただただ純粋に堪能しようとする4人の様はとても清々しく、周囲が期待する"伝説の再構築"に対して一笑に付すだけの悠然さが今の彼らにはある。そして、現布陣となってわずか半年弱で発表される最新作『ヘイセイムク』の完成度の高さが今の4人こそ最精鋭のBEYONDSであることを何よりも雄弁に物語っている。
 一時はバンド存続が危ぶまれた事態に直面したものの、それでも向こう岸に足を伸ばそうと七転八倒した結果、航路は再び開かれた。BEYONDSという名の標なき旅は、激浪と逆風に曝されながらも現在進行形で続いているのである。(interview:椎名宗之)

大地、17年振りのBEYONDS復帰

──前作『WEEKEND』の発表以降、ギターが岡崎(善郎)さんから中川さんに替わり、ドラムがアヒト(・イナザワ)さんから大地さんに替わり、バンドにとっては激動の4年間だったと思うんですが、まず中川さんはどんな経緯で加入したんですか。

中川:僕とテッキンさんの職場が一緒だったんですよ。そこでBEYONDSのギターが決まってないという話を聞いて、僕にやらせてもらえないかとテッキンさんにお願いしたんです。

谷口:そうなの?

──エッ、健さんはその話を知らなかったんですか!?(笑)

中川:ちょうどその頃、BEYONDSはNOMEANSNOとの共演(2009年3月)が決まっていて、サポートのギターを探していたんですよね。テッキンさんとは昔からの知り合いで、テッキンさんがまだHUSKING BEEをやっていた頃に僕はとあるライヴハウスに勤めていたんです。そのライヴハウスが潰れて、今の職場に転がり込んだんですけど。

──2005年末に再始動したBEYONDSは健さんと岡崎さんが舵取りをしていたわけだし、岡崎さんの脱退は精神的支柱を失うことになったんじゃないですか。

谷口:『WEEKEND』までは善郎と僕が拮抗する感じで曲を作っていましたけど、テッキンもアヒト君も「続けていきましょうよ」と言ってくれたし、僕は善郎が脱けてもBEYONDSをやれると思ったんですよ。今振り返ると、テッキンもアヒト君もどこかで大丈夫だと思っていたのかなと思うんですけど。善郎が病気療養を理由にバンドをやめたのは、『WEEKEND』を出して割とすぐだったんですよね(『WEEKEND』は2007年12月発表、岡崎は2008年9月5日に脱退)。その後はセイキ君を含めていろんな人にサポートをやってもらって、暁生君に正式に加入してもらうことになって。でも、暁生君が入ってからもうだいぶ経つんですよ。

中川:今年の3月で丸3年ですね。

谷口:ああ、もうそんなに経つのか…。

──構成が複雑な過去のレパートリーを覚えるのはかなり大変だったんじゃないですか。

中川:そうですね。岡崎さんとはアプローチも違うし、ましてや復活前のギターは僕のキャラクターと全然違いますから。今でも昔の曲は弾くのが難しいですね。まぁ、変えられるところは自分なりに変えちゃうんですけど。

谷口:暁生君が入って音がフレッシュになったし、僕が理想としているギターの音、奏法、佇まいが暁生君にはあるんですよ。僕はやっぱりfOULの時に弾いていた自分のギターの音が好きなので。そういうfOUL的なアプローチの音を僕は求めていたけど、善郎は善郎で確たる自分の世界があったし、善郎の中での僕はBEYONDSを一緒にやっていた頃の僕で止まっていたんですよ。善郎は否定するかもしれないけど、彼は“BEYONDSの谷口”をリセットして欲しいという希望があったような気がします。

──ちなみに中川さんは、fOULを聴いたことは…?

中川:なかったんですよ。実はBEYONDSも初期は聴いたことがなかったし、『WEEKEND』はチラッと聴いたことがあった程度で。だから、あまり予備知識のないまま入ったんですよね。

──アヒトさんが脱けた(2011年8月5日のライヴをもって脱退)のは、VOLA & THE ORIENTAL MACHINEに打ち込みたいという理由からですか。

谷口:と言うよりも、アヒト君が実家に帰るということで、物理的にもう難しいというのがあったんですよね。レコーディングもすでに決まっている段階で「これ以上の活動は難しい」とアヒト君から聞いて…凄く急な話だったんですよ。

──そこで白羽の矢が立ったのが、まさかの大地さん。

大地:急すぎですよね(笑)。

谷口:アヒト君が脱けて以降のライヴやレコーディングの話もいろいろと決まっていたんですけど、それをすべて大地に伝えるのはあまりに酷だと思ったんです。だから彼への頼み方は凄く気をつけて、ジリジリジリジリ引き込んでいったんですよ(笑)。最初は「とりあえず来月シェルターでライヴがあるんだけど、それだけいい?」みたいな感じで頼んで。

大地:「6曲くらいでいいから」なんて言われてね。それからどんどん頼まれ事が増える一方で(笑)。

──大地さんは復活して以降のBEYONDSの音源を聴いていたんですか。

大地:聴いてなかったです。だから急遽『シルトの岸辺で』と『WEEKEND』を貸して頂いて。それで聴いてみたら、これは大変だぞ! と(笑)。でも、結局『WEEKEND』までの曲はあまりやらなかったんですよ。ほとんど新しい曲をライヴでやることになったんだよね?

中川:レコーディングが前提にあったので、ライヴでは主に新曲をやろうという裏テーマがあったんですよ(笑)。だから、大地さんが入って以降のライヴはレコーディングでやる曲をメインにしたんです。

谷口:ライヴでやった曲なら大地もレコーディングをやってくれるだろう、と。僕らでそういう作戦を練っていたんです(笑)。

大地:まんまとハメられましたね(笑)。

谷口:もし大地に「俺はそこまでは無理だよ」と言われたら、そこでまた一からドラムを探すしかないな…くらいまで考えていたんですよ。

大地:まさかそこまで考えていたとは思わなかったよ(笑)。

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