東日本大震災以降、数々のチャリティ・イヴェントをいち早く積極的に敢行してきた我らがザ・マックショウが日本の平和と復興を祈って完全生産限定プレミアムEP『ロックンロール・スルー・ザ・ナイト〜真夜中を突っ走れ!〜』を広島平和記念日(8月6日)に発表する。
疾走感溢れるタイトル・トラック『ロックンロール・スルー・ザ・ナイト〜真夜中を突っ走れ!〜』と跳ねまくる鍵盤が印象的な『トゥイスティン・ナンバー・ナイン』の新曲を筆頭に、コージー・マックとトミー・マックの故郷ヒロシマをテーマにした『100メートルの恋』(昨年発表の『Here Comes The Rocka-Rolla 〜情熱のロカ・ローラ〜』収録)を再びピックアップ。さらに『熱帯ドライヴ』と『100メートルの恋』のライヴ・ヴァージョンを収録するという大盤振る舞いだ。
『100メートルの恋』(ライヴ・ヴァージョン)を演奏する前のMCでは震災後の日本を取り巻く現状がコージー・マックならではのユーモアに包んで語られており、それを聞けば彼らがなぜ今改めて『100メートルの恋』という屈指の名曲を世に問うのかが判るはずだ。ヒロシマで過ごした青春時代への追憶をテーマにした楽曲ではあるものの、「ここが世界の真ん中で」「永遠と信じてた」といったフレーズも違った聴こえ方になるのではないだろうか。
いずれにせよ、この未曾有の国難に際して「たかがロックンロール、されどロックンロール」ができることは一体何なのか、直接的ではないかもしれないが本質を衝いた表現がこのEPにはある。本作は来月発表となるニュー・アルバムの先行シングルと言うよりも、ひとつの独立した作品として捉えるべきだろう。そして、この作品を聴きながら完膚無きまでの傑作『Here Comes The Rocka-Rolla 〜情熱のロカ・ローラ〜』を超える新作の発売を奮えて待ちたい。(interview:椎名宗之)
自粛よりも少しでも被災地の役に立つことを
──東日本大震災以降、マックショウはいち早く被災地の復興支援ライヴやチャリティ・オークション等を積極的に敢行してきましたね。
KOZZY MACK(以下、K):そうだね。まぁ、単純に他のことができなくなったこともあったし。
──震災の翌日にはCLUB QUEでコルツのライヴが予定されていたのに、当然それも延期になって(4月29日に振替公演が開催)。
TOMMY MACK(以下、T):そう、まさにあの震災の翌日にライヴが入ってた。結成から20周年ってことでね。
K:再始動じゃないけど、結成から20周年ということでB.A.D RECORDSオールスターズによるショウケース・ライヴをやろうと思ってね。マックショウもコルツと同時進行で向こう2年くらいの予定を立てていたから、今年は忙しくなるぞなんて思っていて。その矢先に震災が起こった。スケジュールは当然白紙になったから、家で電気を消しながら2、3日あれこれ考えて、これはまず自分たちにやれることをやらなければどうしようもないなと。ヘンに自粛しているよりも、少しでも被災地の役に立つことをやらなきゃダメだなと思った。実際に自分たちの客でも被災したヤツらがいたしね。最初は顧客名簿を見てメールをしたりもしたよ。やっぱりどうしても気になるからさ。東北の客って言えば顔の判るヤツがいっぱいいるしね。大ホールでライヴをやってるわけじゃないから、客の顔もライヴの風景も頭に浮かんでくるわけだよ。
──ライヴハウスというタイマン・コミュニケーションの空間ですからね(笑)。
K:だから余計にマズイなと思って。俺たちが動き始めた頃は、世の中の風潮がまだ“日本を元気づけよう”みたいな感じじゃなかったけど、待ってくれるヤツらはいるわけでさ。被災したヤツらからも「いち早く元気な姿を見せて欲しい」っていう連絡をもらったから、じゃあやろうってことになって。
──それで4月以降ずっと復興祈願の全国走破ライヴを敢行されているわけですね。
K:ウチらは人数も少ないし、すぐに動けたのが良かったと思う。手伝ってくれる横の繋がりもあったし。ただ、震災の直後はなかなか東北の辺りには行けなくて、福島に行けたのも6月に入ってからだったんだけどね。さっきも話したように今年は自分たちのケツを叩いて活発に動くつもりだったんだけど、震災以降、音楽をやっていく意味や意義が自分の中で変わってしまった。だから当初考えていたスケジュールや目標は一旦ナシにして、自分たちは今後どうやって活動していくかに重きを置くようになった。まぁ、どうしてもそうならざるを得なかったよね。ロックンロールは戦争とか災害とかいろんな歴史と一緒に動いてきたわけだから、自分もそれに従ってやっていこうと思って。
──今回発表となるEP『ロックンロール・スルー・ザ・ナイト〜真夜中を突っ走れ!〜』は、震災に関わらずリリースする予定だったんですか。
K:EPを出そうとは思ってたんだけど、曲を書いたのは震災の後だね。最初に考えていた曲のアイディアは破棄して、新たに書き直した。今回のEPに関して言えば、まずこのジャケットだよね。
T:ライヴのステージに掲げるフラッグをまず作ったんだよね。それがEPのジャケットになってる。
──天地に“ロックンロール”“スーイサイド”、左右に“ジョンソンズ”“ロンドン”とカタカナの文字が刻まれた、ジョンソンズの日の丸パッチを下敷きにしたものですね。
K:ああ、知ってた?
──ジョンソンズが日本の特攻隊員に対して抱いた畏敬の念を表したと言われていますが。
K:前のアルバムのツアーの時から日の丸フラッグは使っていたんだけど、震災以降、新たにこのフラッグを作ってやっていくことにしたんだよ。ただ、声高にメッセージを掲げたりするのは苦手なんだよね。第一、こんな革ジャンにリーゼントのバンドに“頑張ろう!”は似合わないじゃない?(笑) だから、面と向かって言うのは照れくさいけど、“頑張りまァす”みたいなさ。俺たちもやれるだけのことをやるから、みんなも頑張ってよ、って言うか。そんなことを強く思って、このロゴありきでフラッグを最初に作った。あくまでもフラッグが先にあって、曲は後だから(笑)。
──何事も形から先に入るマックショウらしいエピソードです(笑)。それにしても、“真夜中を突っ走れ!”というサブタイトル然り、『トゥイスティン・ナンバー・ナイン』の“ナンバー・ナイン”然り、誰しもが連想するのはジョン・レノンただ一人だし、広島の平和記念日に発売されるEPにはうってつけのファクターですよね。
K:うん。まぁ、いつもそんなことばかり考えてるってことだね(笑)。
判りやすいストライクを投げてホームランを打たせたかった
──『ロックンロール・スルー・ザ・ナイト』はマックショウ節の王道を行く疾走感に溢れたナンバーですが、一方の『トゥイスティン・ナンバー・ナイン』はEPのカップリング・ナンバー的な匂いがよく出ていますよね(笑)。
K:『トゥイスティン・ナンバー・ナイン』はあくまでB面だよね。ロックンロールにはB面の捨て曲みたいなものが必要なんだよ。それがまた実に味わい深いっていうね。そういう曲を作るのは意外と大変なんだよ。
T:しかも、『トゥイスティン・ナンバー・ナイン』はレコーディングの前の日に出来たからね(笑)。
BIKE BOY(以下、B):前の日に、スタジオで(笑)。
T:突貫工事みたいなものだよね(笑)。
──B面的な佇まいを醸し出すには突貫工事の要素が不可欠ですけどね(笑)。
K:そうなんだよ。相手に考える隙を与えちゃダメなんだ(笑)。ロックンロールが生まれた頃から、B面っていうのはそういう付け焼き刃みたいなものなんだからさ。それが後世までB面好きなマニアックな人間を生むことにもなる。“ンッ!? これはさすがにないだろう!”っていう曲が好きなヤツもいたりするじゃない?(笑)
──でも、『トゥイスティン・ナンバー・ナイン』はコージーさんのロックンロール詩人としての特性がよく出ていると思うんですよ。
K:じっくり読み込むような歌詞じゃないけどね(笑)。
──とは言え、容易な言葉がメロディと符合することで肉体性を帯びる歌詞じゃないですか。
K:まぁ、ロックンロールっていうのはそういうものだからね。
──盟友であるミッキー“スリム”マックこと伊東ミキオさんによる流麗なピアノが全編響き渡っているのも『トゥイスティン・ナンバー・ナイン』の大きな特徴のひとつですね。
T:あのピアノは避けても避けても出てくるからね(笑)。
K:全部のマイクで音を拾ってるから(笑)。
──今回のEPも、『Here Comes The Rocka-Rolla 〜情熱のロカ・ローラ〜』同様にアナログ・テープを使った一発入魂録音なんですよね。
T:うん。全部一発。
K:ブースの分かれたスタジオで録ったんだけど、ヴォーカルも一発。『トゥイスティン・ナンバー・ナイン』はみんなでジャムっぽくリハーサルしながら録った。伊東君がイニシアティブを取ってね。
──本作に限らず、これまでの諸作品でも伊東さんのピアノは聴き手の心を鼓舞させる絶妙なアクセントの役割を十二分に果たしてきましたね。
K:彼のピアノにはロックンロールに対する愛情が溢れてるんだよね。ロックンロールのことで俺に対して「いや、こういうふうにしたほうがいいよ」って言うヤツはほとんど世の中にいないんだけど、伊東ミキオはそれを唯一言ってくるからね(笑)。「ピアノから入ろうよ」「エエッ!?」って(笑)。
T:それじゃ、伊東君がいない時はライヴができなくなるよ(笑)。
K:彼は俺と違う方向からロックンロールを聴いて育ったから、その幅の違いが面白いところなんだよね。伊東君はクラシックから入って、ロックンロールにもピアノが効果的に使われていることに気づいてから掘り下げて聴いた男だから。でも、好きなロックンロールは俺とほとんど一緒なんだよ。
──『ロックンロール・スルー・ザ・ナイト』は来たるべきアルバムのリード・チューンにしたいと考えて作られた曲なんですか。
K:そうだね。それも含めて考えてはいたけど、俺たち自身がマックショウのファンでもあるから、「次のシングルはこう来るだろう」とか「いや、ここはストレートに来て欲しいよね」とかいろんな話をしてたわけ。で、やっぱり今の日本に対しては直球を投げてあげたいと思ってね。影響力なんてまるでないバンドだけど、それでも微弱ながら影響力が届くところには判りやすいストライクを投げてあげたかった。ホームランを打たせたかったって言うかさ。