青春時代は何でも許されるのか?
──5曲目はタイトル曲でもある問題作『盗んだバイクで天城越え』です。
掟 ちなみに特定の楽曲とは何の関係もありません(明らかにウソをついている顔で)。ただ、昔からおかしいなと思っていたのが、若気の至りと言い張れば何でも許されるのかと。盗んだバイクで走り出したら、盗まれた人はどうなるの? 校舎のガラスを全部壊して回ったらそのガラスは誰が弁償するの? 青春の過ちで許してたまるかと。窃盗は犯罪!! 窓割るのは器物損壊!! そういう怒りを常に持ち続けてましたからね。
──確かに今までは被害者の視点がごっそり抜け落ちてました。
掟 せっかく盗むんだったら、近所を走り出すぐらいじゃ許さないよ。天城越えに使うぐらいじゃないと。モチベーションの問題なんですよ。やさぐれた欲求不満を解消するぐらいの気持ちで盗まれちゃ、こっちも困るんだよ。盗むなら盗むなりの理由を述べよ! 天城越えぐらいの理由があれば俺も許すぞと。
ロマン これって、そんな歌じゃなかったんじゃないの?
掟 そういう歌です。今決めました。
──例えば、80年代の尾崎豊に代表される「反抗する若者は美しい」といった風潮に対するアンチみたいなものもあるんですか?
掟 まあ、当時『卒業』とかのシールをカンペンケースに貼ってるようなやつは大抵ブスでしたから。
ロマン というか、だいたいバカが聴いてた音楽でしょ。
掟 バカとまでは言いませんが...、でもブスでしたね〜。
ロマン 俺は男子校だったからブスはいなくてバカばっかりだったんだよ!
掟 そういえばロッキンオンっていうクソ雑誌があるんですけど、あいつら広告費でページを買わせるくせに原稿の直しには一切応じないんですよ。以前ロマンポルシェ。でインタビューを受けたんですが、取材に来たのが学生あがりみたいなアンちゃんで話全然理解出来てないし、写真撮影は使い捨てに毛が生えた程度のカメラでやってるしで、あきらかにナメられて。どんな記事になるのかすごく心配だったので、ゲラ(※入校前の原稿のこと)がどうなったか当時のマネージャーが編集部に電話したんです。そしたら「うちはゲラチェックとか基本的にやってないんで」、「うちは尾崎がゲラチェックさせろって時もさせませんでしたから」って、平然と言われたらしくて。いやいやいや、お前ら今、尾崎豊が俺達よりも遥かに上の人みたいに言ってるけど、俺は尾崎より自分を下だと思ったことはないし、第一そんなもん理由になんねえから。ふざけた会社だなと。それ以来、ロッキンオンの印象と共に、尾崎豊の印象も悪くなったんです。その時の怒りがすべて尾崎豊に行っちゃったんですね。尾崎ファンの皆さんすいません。これはすべてロッキンオンが悪い!
──6曲目の『尿素配合』は、ロマンポルシェ。の得意分野とも言える、脅迫観念をそのまま歌にしたものですね。
掟 だって思うでしょ? 「尿」なのになんでみんな普通に買ってるの? なんで尿で化粧してるの? おかしくない?って。その疑問は前からずっとあって。あれ、誰の尿なんだろうって。
──それが●ィナ・ターナーの尿じゃないかと?
掟 いやいや、ティ●・ターナーなんて一言も言ってませんよ。でも仮に●ィナ・ターナーの尿からできてたとしたらイヤでしょ? 具志堅ティナかもしれませんが。
ロマン そっちの方が失礼だろう!
掟 いや、具志堅ティナの尿だったらOKです。カワイイから。
──ここから後半。7曲目は真樹日佐夫原作の映画『非情学園ワル』の主題歌『ワルのテーマ』です。
掟 1曲目の『ハイスクールララバイ』はロマンポルシェ。を可愛く見せるための表の顔なんですが、それでナメられちゃいけない。1枚のアルバムの中で硬軟のバランスをとるのに必要なのが真樹日佐夫先生のような本物の男らしさだろうと。ロマンポルシェ。の言ってることって理不尽で間違ってるんだけど、聞いてるとなんとなく正しく思えてくるじゃないですか。この歌詞も構造が一緒。「おれはワル ワル ワルがなぜ悪い」って。自分で言ってんじゃねえかって(笑)
ロマン おかしな話だよね。
──ある意味、一番ロマンポルシェ。らしい選曲ですね。
ロマン ロマンポルシェ。として初めて真面目な曲をやりましたよ。
ウーパールーパーってすごい
──そして8曲目『一杯のかけそば』。これも有名な題名ですが。
掟 昔から「一杯のかけそば」を歌にしたいと思っていて、「2杯目のかけそば」とか歌詞を書きかけては潰してて。そこで、1じゃない、2じゃない...100だなと。一杯のかけそばを100人で分けたら、なんとか数の力で誤魔化せるかなと。
──9曲目『愛の面白半分実験料理』。
掟 これも基本的には男が女に振り回される歌なんですけど、最近俺、「ウーパールーパーってすごいな」って思い始めて。というのも、ここ半年ぐらいの間に、ウーパールーパーに関する情報が立て続けに入ってきた。犬の散歩をしてる時によく公園で会う、犬を5匹飼っているユニークなおばさんがいるんです。実は某有名女優さんのお母さんなんですが、5匹を手で持つのが大変だから、リードごと胴体にくくりつけて歩いてる(笑)。その方と話している時に「うちで飼ってるウーパールーパーがつがいだったらしくて、今何百匹に増えちゃってね、誰か欲しい人いないかしら?」って相談されたんです(笑)。それとは別にニュースで見たのが、日本国内でペットとして人気がなくなったあとも増殖して処分に困ったウーパールーパーを、中国に食料として輸出するっていう話で。中国のある省では昔から食べられてたらしいんですけど。で、その出荷方法がまたひどくて、一度干物にしてから輸出するんだって。ってことは、食べるときにまた水で戻すってことでしょ? もう想像したら気持ち悪くなってきて、これが料理に入ってるのかって考えたらだんだん具合が悪くなってきた。それで食用のもので一番食べられないものってなんだろうって考えた時に、思いついたのが生煮えのウーパールーパーだったんです。
──10曲目『100%他力本願宣言』ですが、これって...
掟 このアルバムを象徴する曲ですね。自分で曲を作ると1曲作るのに2ヶ月以上かかるからアルバムなんか作れない。いや、本当にね、自分で作った曲は大好きなんですが、とても人には薦めたくない。だから専門のプロが作った方が良いなと。次作は全部久保こーじに作ってもらいたい。面識ないけど。
──11曲目は『24時間プロレスショップ』。
掟 純プロレスファンって、これだけ人気のないジャンルを支えている人達だから、もう相当頭の中がこじれちゃっておかしなことになってる。ねじ曲がった愛情というか、並の愛情ではもう守りきれなくなっているのが現代のプロレスだと思うんです。いまでも年中マスカラスのことだけ考え続けている、頭のおかしなプロレスヲタがもっと増えたらいいなと思って作った曲です。
──12曲目の『男は薄着』はロマンさんの作曲ですが、勢いがあっていい曲ですね。
ロマン いや別に。いつもプンクボイで作ってるような曲ですよ。いまさらいいと言われても...。
──これがアルバムの最後を飾っているのがいいんじゃないかと。
掟 1曲目がこの曲だったら、そのまま停止ボタン押させるだけの力のある曲ですからね。それこそ俺は好きなんだけど人に薦めるには無理がある。非常にロマンポルシェ。らしい曲です。ロマンポルシェ。の一つのフォーマットとして、ハードコアパンクをテクノでやるというのがあるんですが、ただハードコアテクノにはせずに、もっとスカスカした感じの音にしている。今回も最終的に全部リバーブをかけてるのは、80年代中盤のパンクのソノシートの音質を参考にしているからなんです。とりあえずリバーブかけときゃごまかせんだろ、的なね。80年代の音響処理に敬意を払った一曲。
──以上、全曲解説してもらいましたが、6年振りのアルバムとしては期待以上の充実したアルバムになっていると思います。これを機に今年はロマンポルシェ。の活動も忙しくなりそうな感じでしょうか?
掟 まあ今も昔も、来た仕事を受けてるだけだからね。
ロマン 自分たちで開拓とかしないですから。
──まあそう言わず、唯一無比のバンドですからもっと活動して下さい。
掟 かつてニューウェーブ・リバイバルと言われていたバンドは、みんなどんどん音質がよくなって違うものに進化してますが、そんな中、ロマンポルシェ。はいつまでたってもチープな音色だけを作り続ける唯一のバンドでいようと思います。次回作はカセットテープで出すぞ!