Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューdry as dust('10年3月号)

日常を切り取った歌詞。体温が感じられる音。
ただ過ぎていく日々に、彩りを与える全7話。

2010.02.19

 言葉の糸を紡ぐような歌声と、抜群に透明度の高いメロディー。kono氏(te'/残響レコード)をプロデューサーとして迎えて、新しい作品を作ったdry as dust。
 与えられた状況からは常に現状のベストを出そうという彼らの新譜『Good Morning』が3月10日に発売される。誰にでも起こりうる日常、それを切り取って歌う独特の観点と、曲の持つ「温度」に焦点をあてた彼らの最新の動きについて訊いた。(interview:石川 愛/下北沢SHELTER)

dry as dustの"今"を詰め込むことができた

──今回2枚目ということで、アルバムタイトルなど、最初から「ここだけはこうしよう」と、一番気をつかわれたところはどんなところですか?

松永晴貴(Gt/Vo):うちら今回は曲単位なんですよ。レコーディングをするって決まって、これとこれを入れたいっていうのがあった中で、じゃあどういうニュアンスの曲があったらいいかなって考えていったんです。

対馬ヤスタカ(Dr):それで、作ったらまずライブでやってみて。

松永:逆に曲を作る段階で、レコーディングを意識してライブではできないことをやるということを考えたことがなくて、レコーディングだから重ねて録ったらこうなるだろうとか...そういうことはやらないですね。最低限、一発録りでバン! ってできるものしか基本的には意識してないんです。7曲目以外は一発録りに近くて、あとはギターの直しとかをやったぐらい。

──今の純粋なdry as dustの曲に仕上がっているということ?

松永:そうですね、アレンジ的には。

──今回のアルバムは残響レコードのkonoさんがプロデュースをされたということで、プリプロダクションの段階からご一緒だったとお伺いしました。konoさんが残響のバンドさん以外に、プロデュースを手がけるのは珍しいことだと思うのですが。

松永:きっかけは僕らが上京してくる前になるんですけど、デモを録ろうかという時にたまたまkonoさんがスタジオに遊びにいらしていたんです。その時になかなか進まないでいた曲に、アドバイスを頂いてスムーズにレコーディングが進行したんです。それで、今回もkonoさんと一緒にやりたいと思い、お話させて頂いたんです。レコーディング前に「こんなのが作りたいんです」っていう話を一緒にして、konoさんも「いい機会だし、やってみようか」って言ってくださって。

加藤大輔(Gt):今回はkonoさんと、プリプロの段階から一緒に突き詰めてやらせて頂けました。

──となると、思っていた以上のものが出来たんじゃないですか?

松永:はい。あと、曲に関してアプローチの仕方を教わりました。例えば1曲目にこの曲を入れたいってなった時に、じゃあこの曲の肌触りみたいなものをどうしたら良いかとか、あのバンドのあの空間みたいな感じにしたいとか、曲の広がりをどうしたいっていうのを。この盤で自分たちの力を100%出せたかっていったら、それはわかんないですけど...。

対馬:え、出てないの?

松永:いや、俺がわかんないっていうだけで。これが100%だったら次が出せないですからね。

対馬:でも現状のベストは出てるよ。

松永:もっと時間があればなって思う部分が正直ありました。自分たちの環境もそうだけどkonoさんはもっとキツキツのスケジュールでやって頂いたので、もっとコミニュケーションが取れたらと思うこともあって、そういう部分でも、もっといろいろできたかな? ていうのはあるんです。でも、楽曲に関して色を出すっていう、自分たちだけじゃ絶対にできないことを実現させてくれました。最後の曲『始まりの朝に』は特にそうですけど、「こうしてみなよ」って言ってくれてこの形になったんです。

加藤:7曲目に関しては、すごくアイディアを出して頂いたんですよ。

松永:そういう部分では一緒にやれてなかったら出来てない曲かもしれません。でも、正直わからないんです。違う人とやったこともないし、違う人がディレクションをしてこのクオリティの盤ができていたかなんて、正直比べようもないしわからないですけど...。でも『始まりの朝に』はkonoさんにプロデュースしてもらったってことはかなり大きいです。

作る人が歌った方が伝わる

──ブログは、成田さんがよく更新されていますね。

成田光春(Ba):はい。元気いい感じで。

──歌詞を書かれているのが松永さんで。

松永:そうです。だから僕がブログを書いたら、読んでくれている方との壁を作っちゃいそうなので、あんまり書かないんです。

──成田さんが歌詞を作ることに関しては...。

松永:皆無です。

成田:僕は歌詞についてはなんも言わないです。

松永:歌詞に関してはメンバーから何も言われたことがなくて。多分知らないんじゃないですかね(笑)。

──歌詞は松永さんが書くものだという、暗黙の了解がある?

対馬:そういうもんだと。

成田:自然にそうなってます。

──曲は全員で集まって作る感じですか?

対馬:いや、メロディーも松永が。

松永:自分から出て来たことを歌うならダイレクトだけど、例えば対馬君が作った曲を僕が歌うっていうのは、100%その人になりきれないし、だからちょっと違うかなーと。代弁みたいになっちゃうんじゃないかと思うんです。もう1個フィルターを通さないといけない部分があるから。言ってみたら、基本的に誰かから提供してもらってる音楽って聴かないんです。シンガーソングライターとかバンドとか、そういうものしか聴かない。そういう曲が好きだし。作る人が歌った方が伝わるんじゃないかなとも思うし、ウソくさくない。

──歌っていることは、わりと松永さんの本音に近いということ?

松永:そうですね。曲にはまるのであれば。

──違和感のない言葉しか使わない?

松永:どこからどこまでが伝えたい部分なのか、そしてどこからどこまでがボヤきなのか、そのバランスをとりたいんです。だから押し付けがましくは言いたくない。1曲でそのバランスもとりたいし、それに対する答えも全部は言いたくない。曲がそれだけで完結するものにはしたくなくて、それぞれの解釈で聴いてほしいし、聴く側にそれぞれの捉え方があるし。自分が全部答えを言っちゃったらそれでしかないし、全部が曖昧なものとして投げちゃったら「で?」ってなるし。

──でも答えを具体的に提示した上で歌っても、それを聴かせるだけの声と演奏だったら「そういうものだ」って受け入れる方もでてきますよね。

松永:これからいっぱい曲も書いていくし、作っていきますけど、「これは絶対言いたい」っていうことが結局そこに全部おさまってしまったら、それ以外の言葉が付け足せなくなっちゃう。これ以上言うことがないってなりかねないんです。そうなった時に、「俺ってこれしか言いたいことなかったんだっけな」って考えることもあるし、浅はかに全部ぶつけちゃって、聴く人はこれをどう受け止めればいいんだろうと思うし。俺が逆に言われたら、ちょっと笑っちゃうかも。

──重いわ! って?

松永:重いし、じゃあどうしろっつーのよ、みたいな。4人で演奏しているし、4人で曲を作っているし。プライベートでもすごい付き合いが長いんで、プライベートで話をするっていうこともすごく多いんですよ。歌詞が出て来なくて困った時は、そういえばあいつこんなことあったなとか、自分のことじゃなくても、昔あったことを...こう...ちょっとひっぱりだして歌詞にすることもあるんです。(片方だけ口角をニヤリと上げた、素晴らしくズルい顔で)

加藤:うわー、すごいズルい顔した(笑)。

松永:あれちょっといい話だったなとか、あれは切なかったなとか、あれはちょっとキツいなとか、重たかったなとか、そういうのを、オブラートに包んで自分のことのように...。

──でも人から聞いた話とはいえ、松永さんから出て来た言葉ですからね。

松永:きっとあいつはこう思ってたんじゃないかな、とか。あと本を読んだりもするし。結局は、全部自分のことじゃなくて、そこに自分が思っていた感情と近しいものって何かあったかなって考えたりして、1曲がひとつの"話"だとしたら、その話の中に自分と似た心境なんじゃないかなっていうのを持ってきて、自分とその人をごちゃまぜにして曲にしたりします。

──そういう場合は、俯瞰して見てることのほうが多いのでは?

松永:いやー、自分が生きてきた中で衝撃的な出来事とかグッと来ることって、そうそう毎日起こらないじゃないですか。例えば、そういう曲を書きたいなって時は、自分なりに話を...まあ、悪い言い方をしたら"盛って"、書いたりしてます。毎日だいたい決まった時間に起きて、昼食べて夜食べて、1日予定があったらそれに沿って動くし、眠ったからと言って昨日のことが切り替わっているわけではないですよね。例えば昨日食べたカレーがすごくまずかったとして、目が覚めた時にすごくお腹痛かったら「これ絶対昨日のカレーだよ」って、昨日のことは今日にも繋がってる。コンディションとか、身体もそうだし、精神的なことも、寝たら全部が全部180度晴れ晴れとしたものじゃないし...。でもその中で、普通にみんな生活していますからね。

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Good Morning

XQEH-1009 / 1,800yen (tax in)
AVOCADO records
3.10 IN STORES

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