このバンドにとって何が一番必要なのか?
──それぞれのギタリストがそれぞれ至上のカードを切って臨むわけですから、それも道理ですね。竹尾さんはafocに対してそれまでどんな印象を抱いていましたか。
竹尾:さっきも言ったように、最初にシェルターで会った時の印象はゼロなんですよ。ちゃんと喋った記憶もないし(笑)。ただ、その後に確かユニットに出た時に彼らのライヴを見て、今時珍しいくらいにギターを弾きまくるバンドだなという印象を持ったんです。俺の好みにドンズバやったんで。話をするようになっていいヤツらなのもよく判ったし、そこから急速に仲良くなった感じですね。やっぱり、ちゃんとギタリストがいるバンドっていうのが大きいんですよ。これは俺、いろんなところで言ってるんですけど、“ギター・ロック”なんていうしょうもない言葉が独り歩きしてるじゃないですか。
佐々木:“ギター・ロック”って、俺たちにとってはジミヘンとかだったりするはずなんですよ。
竹尾:そうそう。今の“ギター・ロック”に何が一番足りないかと言えば、間違いなく“ギター”なんです。凄く使い勝手のいい言葉として“ギター・ロック”が使われてるし、リスナーの中でも“ギター・ロック”というある種のイメージが出来てると思うんですよ。でも、それはちゃんとしたギタリストがいるバンドにとってはクソみたいなもんなんです。 (ここで奥村が遅れて到着)
奥村:大変申し訳ないです! お待たせしました!
竹尾:オイッス、大さん!
佐々木:ちょうど今、大さんの悪口で盛り上がってたんですよ(笑)。
竹尾:まだまだ行けるけどな(笑)。
奥村:それは取り返さないとな。お前らの悪口、言いまくってやる!(笑)
──ニュー・アルバムのミックスはこれで無事終了ですか。
奥村:さっき何とか。超名盤を作ってしまいましたよ。ヤバイ、売れちゃうかもしれない(笑)。
──いやいや、売れてもらわないと(笑)。wash?のニュー・アルバムについては来月号の本誌でじっくり伺うとして、奥村さんは『PARADOX PARADE』のレコーディングにどんな意識で臨みましたか。他のギタリストに負けてたまるかという思いは当然あったと思いますが。
奥村:そうだね。小手先で臨んでも人柄が音に絶対出るから、全身全霊で弾くしかなかったよ。
竹尾:出してる音色が全員違うし、面白いアルバムですよね。
──THE BACK HORNの栄純さんも椿屋四重奏の安高さんも持ち味と特性がよく出ていますしね。
佐々木:栄純さんはレコーディングの時も栄純さんらしかったですよ。裸足で胡座をかいてグレッチのデュオ・ジェットを弾くっていう(笑)。
──奥村さんをライヴのサポートとして迎えたのは、以前からafocのサウンド作りに携わっていたからこそですよね。
佐々木:そうですね。ただ、当然のことながらwash?があるし、大さんからOKを頂けないことも考えてはいました。でも、真っ先に思い浮かんだのはやっぱり大さんだったんですよ。
──奥村さんはwash?本体のレコーディングを押してまで3日間にわたるafocの泊まり込みリハーサルに参加するという男気を見せてくれましたね。
奥村:レコーディングを2日ずらしてもらったのかな。ウチのメンバーも快く送り出してくれたしね。
佐々木:その時、南波(政人)さんが「そういうのをいちいち受け止めて行くのが俺らっぽいよ」と言ってくれたみたいで、心底感激したんですよ。
──ニクいことを言いますね、スケベ椅子ゴールド仕様のストラト男が(笑)。奥村さんから見たそれまでのafoc像とはどんなものでしたか。
奥村:素直にいいバンドだと思ってた。徹頭徹尾“ロック・バンド”だよ。ムチャクチャもあるし、グッと来るところもあるし、急いてるところもあるしさ。
──個人的には奥村さんのオルタナティヴ志向がafocのブルース・フィーリングと溶け合うのか一抹の不安が当初は正直あったんですけど、これが不思議と混じり具合がいいんですよね。
佐々木:俺たち3人は岡庭の代わりとしてではなく、大さん自身に対して全幅の信頼を置いていたんです。大さんのプレイでバンドが未知の領域へ踏み込める確信があったし、afocという枠はありつつも、それぞれのミュージシャンが持ち寄った音でひとつの形にすることが目標だったんですよ。最初は大さんも“もっと岡庭っぽく弾いたほうがいいのかな?”と悩んでくれたりもしたんですけど、少しずつ時間を共有できた今は大さんの持ち味がよく出た形になってると思うんです。
奥村:俺は岡庭のギターも好きだったし、岡庭がいた頃のafocに対しても敬意を払っていたから、どこまでやっちゃっていいのかがずっと悩みなんだよ。未だにそうなんだけどさ。でも、afocはまだこれから新しいお客さんを掴んでいこうとしている攻めの姿勢のバンドだし、初めてライヴを見る人にとってはサポートだろうが何だろうが関係ないわけじゃない? まずは“いいバンドだな”って思われなきゃしょうがないから、自分がどうこうってことじゃなくて、“このバンドにとって何が一番必要なのか?”とか“自分の持ってるどの部分がこのバンドで化学反応を起こせるのか?”とかを凄く考えた。