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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】a flood of circle(2009年12月号)- 臆することなく続ける"逆説の行進"とその行方

臆することなく続ける“逆説の行進”とその行方

2009.12.01

日々の生活の中から歌を作るのがブルース

──私見ですが、初めて奥村さんがサポートを務めたafocのライヴを見た時、wash?で言えば南波さんがヴォーカルを取る『garden』を演奏する時の“ギタリスト・奥村 大”の凄味に似たものを感じたんですよ。ヴォーカルから一歩引いて、ギタリストに徹するからこその奔放さが遺憾なく発揮されていると言うか。

奥村:うん、判るよ。さっきは堅苦しいことを言ったけど、afocで弾いてる時は純粋に楽しんでるところもあるからね。“ギターっていいな”とか素直に思うし(笑)。

佐々木:相当無邪気ですね(笑)。

奥村:いや、最近そんなことをしみじみ思う。“バンドっていいな”とかさ。

──勝手知ったるバンドだけどよそ行き顔な面もあって…たとえるなら、タキシード姿で近所の銭湯へ行くような感覚なんですかね?(笑)

竹尾:タキシード姿でも、パンツは穿いてないでしょうね(笑)。

奥村:はははは。やっぱり、常にバンドという塊の一部になっていたいね。ひとりだけ必要以上に弾くのもイヤだし、醒めて弾くのもイヤなんだよ。個性が全面に出てるだけなのも俺は違うと思うしさ。俺が好きなのはロックンロール・バンドだから。自分のことはミュージシャンと言うよりもバンドマンだと思ってるし。

──奥村さんはライヴで果敢にオーディエンスを煽ってもいますね。

奥村:あれも鍛えさせて頂いたんですよ(笑)。

佐々木:何を仰いますか(笑)。大さんの煽りに呼応する部分が俺たちにもあるんですよ。サポートしてもらってる前提がありつつ、それ以上に4人のバンドとしていいライヴをするにはどうしたらいいかを大さんとはよく話し合ってるんです。

──今回のアルバムで度肝を抜かれたのは1曲目の『博士の異常な愛情』なんですよね。僅か8ヶ月前にリリースされた『BUFFALO SOUL』の世界観から大きく変化した、afocが更なる高みに達したことを実感できる楽曲だと思うんですよ。オリジナル・ギタリストを失った災いを見事に福へと転じさせた力量をまざまざと見せつけていると言うか。

佐々木:そこで心が折れなかったことがこのアルバムに大きな影響を与えていると思いますね。『博士の異常な愛情』はぼんやりとした形が昔からあったんですけど、曲作りはちゃんとしてなかったんです。インパクトのあるリフの曲が作りたいと思って膨らませた曲ですね。今回はサウンドの意味合いでのブルース感を敢えて敬遠した部分があって、それが前作との一番大きな違いだと思います。

──佐々木さんが定義するブルースというのは?

佐々木:日々暮らしてきた生活の中から歌を作る、それ自体がブルースだと思ってます。その考えは今もブレてないんですけど、『博士の異常な愛情』は“神様の発明品がこの愚かな人間なのか/人間の発明品が神様なのか”というパラドックスを歌詞に込めたかったんですね。大さんに弾いてもらったのはこの曲が一番ストレートだったからだし、大さんのスタイルが活きると思ったからなんですよ。

──“オルタナティヴ・ブルース”というスタイルが確立された感もありますね。

佐々木:そうですね。俺としては凄く上手くミックスできたと思ってます。

奥村:俺もこの曲は凄く好き。竹尾が弾いた曲もいいよね。竹尾が凄いのを弾きやがったとafocのマネージャーから聞いて、iPodで聴かせてもらうことにしたんだよ。でも、イントロを聴いて「やっぱり聴かない!」ってイヤフォンを外したから(笑)。「怖い! 怖い!」って(笑)。

竹尾:俺と大さんは全くベクトルの違うギタリストだと思うんですよ。俺が初めて大さんのプレイを見たのが岡庭がいなくなって一発目のライヴ(7月12日、代官山UNIT)で、単純に弾いてる姿が格好いいし、出してる音も文句なしに格好いいし、サポートで弾いてる人っていう感じが全然しなかったんです。多分、大さんと俺はお互いが持ってないものを持ってるからすぐに仲良くなれたんじゃないですかね。岡庭と俺は同じベクトルだし、ハッキリ言って俺が岡庭に負けるわけがないんですよ(笑)。でも、大さんは俺にないものをいっぱい持ってるからギタリストとして対等に向き合えるんです。

奥村:とにかく俺、ライヴで竹尾のギターが弾けないよ(笑)。

──奥村さんが来る前、ちょうどそんな話になったんですよ(笑)。

奥村:だって、竹尾が27年間背負ってきたものをギターに詰め込んでるのを感じるからさ。それは感動的なことでもあるし、そう簡単に弾ける次元の問題じゃないよ。だから、これはもう俺なりに解釈するしかないと思ってる。

竹尾:でも、afocのファンは誰がサポートで弾いていようが余り関係ないと思うんですよ。それよりも、ライヴでどれだけ格好良く見せつけるかに振り切ったほうが絶対にいいと思う。ライヴ・アルバムじゃないわけだし、このアルバムに参加した4人のギタリストのフレーズをライヴでそのまま再現する必要もないんじゃないですかね。

佐々木:その時々でベストの形を提示できればいいわけですからね。

竹尾:そうそう。だから、さっきは「大さんを困らせたい」なんて言いましたけど、別にそれほど困る必要もないと思いますよ。

奥村:いやいや、困るわ!(笑)

──『月に吠える』だけは完全に3人だけの演奏ですが、何か意図するところがあったんですか。

佐々木:これは単純に俺がずっと弾き語りでやってた曲なんです。凄くパーソナルな曲だし、自分のギター・ソロをこのアルバムの中に刻んでおきたかったんですよ。

奥村:亮介はコードの感覚と唄い手ならではのリズム感のバランスが凄くいいよね。もちろん感情が昂ぶった時はガーッと行くし、そんな部分も含めて俺は好きだな。大別すると、ギタリストって弦を6本で考える人と1本から考えて紡ぐ人がいると思うんだ。ピアノ的な人とヴァイオリン的な人の違いって言うかさ。竹尾や岡庭はヴァイオリン的な人だと俺は感じるわけ。セカンド・メロディを紡ぐのが上手いからね。俺が亮介にシンパシーを感じるのは、俺自身がギターをピアノ的に捉えてるからなんだよ。亮介にもそういう部分があるからね。

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