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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】BEYONDS(2007年12月号)- 新雪の未踏峰の如く佇む新世紀BEYONDSの新たなる地平

新雪の未踏峰の如く佇む新世紀BEYONDSの新たなる地平

2007.12.01

目に見えないものを信じていたい

──「29 nightingales」は本作中最もメロディアスなナンバーですが、29という数字とナイチンゲールの関連性というのは?

谷口:29というのは善郎がずっと尾を引いている数字らしいんですよ。ナイチンゲールは小夜鳴鳥(ツグミ科の灰色がかった色の小鳥)のことで、僕自身は鳥をイメージした曲にしたかったんです。善郎としては鳥を爆撃機になぞらえて、殺したくないのに殺さざるを得ない戦争について疑問符を付けた内容の英語詞にして欲しいと言ってきた。で、ちょっと待ってくれと。鳥というのは僕の中では平和の象徴であって、殺戮の武器のモチーフには絶対にできないと突っぱねたんです。それで色々と考えた挙げ句、ああいう日本語詞になったんですよ。この曲は個人的にも今回のアルバムの中でかなり気に入っているんですよね。

岡崎:日本がアメリカと戦争していた事実を今や知らない大学生がいるというじゃないですか? そうやって第二次世界大戦が風化されていくのもどうかと思って。B-29が日本の空を覆い尽くして、爆弾をひたすら待ち受ける日本人があの時代無数にいた話が僕はどうしても頭から離れないんですよね。健ちゃんが言うように、鳥は平和の象徴で爆撃機とは相反するもので、でも両極だからこそ自分の中で被ってしまうところがあるのかもしれない。

──「人間の証明」は、『The World,~』に収録されていた「Touch My Life」で描かれていた物語の続編というか、相通ずる世界観があるように感じたのですが。

谷口:…うん、似ていますね。「Touch My Life」は亡くなってしまった僕の弟のことを唄った歌詞なんですよ。「人間の証明」は、僕の心の中では弟とヨーちゃんに捧げた曲なんです。随分前ですけど、ヨーちゃんと角川映画の『人間の証明』の話をしたことがあって、もう二度と取り返すことのできない子供の頃にあった殺伐とした切なさというか…そんなものを歌に込めたかったんです。歌詞にある“逆から強いビーム”というのは、僕が幼少の頃に実際に見たものなんですよ。屋上から偶然見たでっかい隕石みたいなもので、誰に話しても信じてもらえなかった。だから僕は、子供にしか見えない妖精が存在するのを信じているんです。そういう目に見えないものを僕は信じていたいんですよね。

岡崎:タイトルも秀逸だし、歌の後ろで流れているブライアン・イーノみたいなシンセも凄くいいと思う。曲に関して言うと、メドレーみたいな感じで曲が目まぐるしく変わるようにしたくて、どんどんパートを足していったんですよ。1曲の中に5、6曲分の要素があるんだけど、不思議と散らかった印象は受けないでしょう? ただ、これを楽譜にしたらまるで屏風みたいな長さになっちゃったんですけどね(笑)。

──アルバム・タイトルにもなった「weekend」は歌の力を最大限に引き出したシンプルな楽曲で、アルバムの締めに相応しいですね。

谷口:最後のこの曲がそれまでの10曲を包括している存在だと善郎が言っていたんですよ。まさにその通りですね。

岡崎:“weekend”=“週末”というのは物事の“終末”としても捉えることができるし、“安らぎ”として捉えることもできる。ポップで凄くいい言葉だと僕は思ったんですよね。

──“weekend コーラスを是非頼む”という歌詞がありますけど、新生BEYONDSを始める前に各々が属していたバンドのメンバーに向けた内容なのかなと深読みしてしまったんですよね。

谷口:いや、この歌詞の「君」は自分の伴侶であり、大切な人のことですよ。まぁ、“週末”という節目を唄うということは、今までの人生ですれ違って来た人達に対しての思いもあるのかもしれないですね。自分の書くどの歌詞でもそうなんですけど、ラヴ・ソングというのは自分が愛する異性に対してだけではなく、同性の友達に対する思いも重複してしまうんですよ。本当はもっとラヴラヴしい歌を唄いたいくらいなんですけど、どうしても中性的になってしまう。

岡崎:じゃあ、“コーラスを是非頼む”という歌詞の真意は?

谷口:エフェクターのコーラスをガンガンに掛けてくれ、ってことですよ。

岡崎:ウソだぁ(笑)。同じマイクで一緒に唄ってくれってことじゃないの?

谷口:まぁ、この曲はね(笑)。

──健さんが同志である岡崎さんに向けて唄った歌でもある、と(笑)。こうして新しいBEYONDSとして初めてのアルバムが完成して、率直なところどんな思いですか。

谷口:僕としては、今までの生涯で一番怖いアルバムなんですよね。アルバムというか、曲自体がどう受け止められるのかが。

岡崎:うん、僕も今まで手掛けた作品の中で一番未知ですね。懐疑的では決してないんだけど、判らない。ひとつの理想像があってそこに向けて着地したという作品じゃなくて、偶発性や葛藤やいろんな要素が相俟って、気が付いたらここに到達していたという感じだから。

谷口:あるいは到達していないのかもしれない。3年くらい経たないと自分の中で答えが出ない気がしますね。それだけ予想外の作品になったという意味で、否定しているわけじゃないんですよ。

──でも、そうしたメンバー自身ですら未知に感じる部分があるからこそ音楽に対して新鮮さを保ち続けて、また一歩前に進めるわけじゃないですか。

岡崎:うん、今は素直にそう思えますね。意外性があるからこそ面白い。『UNLUCKY』から始まって、今までBEYONDSが発表してきた作品はどれも音楽性が懸け離れたものだと思うんですよ。でも、すべて健ちゃんが唄っていて“BEYONDS”と名乗っている。それはバンドとして理想だと思うんです。いつの時代でも、次の作品がどうなるか皆目見当の付かないバンドで在りたいですからね。

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