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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】Lucky13(2007年11月号)- 心の隙間を埋める魔法のウタ

心の隙間を埋める魔法のウタ

2007.11.01

『カラスの色は』から1年ぶりにリリースされるのは、Lucky13初のフルアルバム『コードネーム"男の子"』。 情けない部分もひねくれた部分も正直な部分も、ありのままの感情を詞にすることによって、よりリアルに感じ心に響く。幸せと不幸せが交互に訪れる毎日に、Lucky13を聴くことによって暖かい光が差し込み、何気ない日常に小さな幸せを舞い込ませてくれる。どこか情けなくて、どこか頼りない男の子の詞だけれど、誰もが抱える不安に対して、「とにかく君のする全てを肯定するから」とそっと勇気づけてくれる。そんなステキな曲を生み出した"危険な感じが一切漂ってこない4人(笑)"にお話を伺った。(interview:やまだ「コードネーム"女の子"」ともこ)

君がやった全てのことを肯定する

──11/7に『コードネーム“男の子”』がリリースされますけどフルアルバムは初めてなんですね。ようやく出せる!という感じですか?

中瀬 至(Vo.G.Key):ぶっちゃけるとあんまり…いつもより曲数が多いぐらいの感じ(笑)。でも、いつもならライブでやってるベストを詰め込んで終わりですけど、3曲とか4曲増えた分だけ面白いことができるっていうのがいいですよね。フルアルバムだからできたかなっていうのは『モノレールに乗って』(M-9)。歌詞が前日に変わったり、一発録音だったり。歌詞はレコーディングの直前まで辛気くさかったんですけど、演奏が意外と元気な感じでまとまったので、曲に合いそうなワクワク感を出せる詞をと前日まで悩んで、結局前日までの言葉は一言も採用していないです。あと、10曲のうち1曲ぐらいは趣味に走ってもいいかなって思いまして(笑)。フルアルバムだからっていうのはありましたね。

──『さよなら未来』(M-3)はピアノの弾き語りというのも新しいですね。

中瀬:いろいろアレンジしたんですけど、最終的に「歌とピアノでいいんじゃない?」 って話がまとまりまして、家で録りました。

──この曲は詞を読みながら途中まで聴いていたんですけど、あまりにも悲しくなって…最後まで聴けませんでした。すみません。

中瀬:それは、嬉しいのか嬉しくないのか微妙な気持ちです(苦笑)。

井上 寛隆(Dr.):ピアノが悲しさを増すんですよね。バンドバージョンでもチャレンジしたんですけど、「これは弾き語りのほうがいいんじゃないの?」っていう結論でした。

──『カラスの色は』では人を疑ってる歌が多くかったですけど、今回は“未来のことなんてわからない”という曲が多い気がしましたが…。

中瀬:未来は、あまりわかろうとも思ってないかもしれないですね。でも、『カラスの色は』を作って、バンドとして相当進化しているので、来年もこのスピードで進化したらすごい。

井上:どこまで昇っていくんだろうって(笑)。

──未来予想図はあります?

中瀬:あまりないです。何が幸せかというのも全くわからないので、音楽も仕事もそうですけど、自分のやりたいことをやってる感じです。ロックンロールヒーローになろうという時期もありましたけど、それは自分たちのイメージを限定してしまい、可能性を狭めることになると思うんです。でも、毎日忠実に行くとけっこう悪くない自分になっていくのがわかるんですよ。それがこの1年ぐらいで原点に返ってきたというか…。

──この1年間でレコーディングや曲作りに対して意識的な変化はありましたか?

中瀬:曲作りの話をすると、なんだかんだ言ってアイディアが出てくるなとは思いました。

千葉 牧人(B):レコーディングに関しては、前作よりクリアに聴こえるようにっていうのは考えてました。

中瀬:前のアルバムがロックバンドっぽい音の作りだったんですが、曲も若干変わってきたのもあって、ポップス的な録り方にしたいというのがあったんです。曲の良さと歌詞を引き立たせるために、バンドの特性を考えて全ての音がクリアに聴こえるようにシフトしたんです。

──その中で『ライオン』(M-5)はロック調で、ドラムがすごく良かったですよ。

井上:両足でバスドラを踏んでるんです。

中瀬:本人はこのテイクを気に入っていなくて、みんなは良いって言ってるのに8回ぐらい録って、結局1回目が採用されました(笑)。あれはヒドかった(笑)。

──アレンジは各パートの人が考えるんですか?

中瀬:そうですね。最初はギター1本とかピアノ1本と歌と、あとはこんな感じって伝えるぐらい。

熊坂 栄次郎(G.):“~の感じ”と言ってもらったら自分なりイメージして、それがダメならまた違う感じで作り直します。

──今回一番苦労した曲は?

中瀬:『応援歌』(M-10)かな。

熊坂:みんなで合わせている状態で、他の曲は最終形が見えていたんですけど『応援歌』だけは見えなかったんです。雰囲気は良かったんですけど、最後まで不安が残っていた曲ですね。

──今までは自分に対する曲が多くて、『応援歌』のように人に向ける曲はなかったですよね。

中瀬:メロディーが先にあって、ライブの最後にやりそうなスケールが大きい曲だなと思っていたんです。ここで何を言いたいか考えていたら、この時代にですけど、応援歌にしていいかメンバーに聞いたという経緯はありますね。詞はライブでやっていく中で変わっていったんですが、レコーディングで最初のストレートな形に戻しました。字詰まりが気になったところもありましたけど、そのまま採用して、初期衝動が出ている歌詞なんじゃないかな。たくさん言いたいことがある内の1個ではありますけど、自分なりの応援歌にはなったのかなと思います。君がやった全てのことを肯定してあげようっていう応援の仕方があってもいいんじゃないかって。

──がんばれって言われるよりは、その方が心強かったりしますからね。

僕は男の子だから君を守るのが使命

──アルバムのタイトルはどう付けました?

中瀬:僕らの作るアルバムって、1曲1曲がベスト盤だと思って作っているので、全体を通したコンセプトはないんです。その中でも平均して『コードネーム“男の子”』(M-1)はLucky13らしいことを言っているような気がするんです。アルバム全体を通して、「僕は男の子だから君を守るのが使命」というところに戻るんじゃないかなって思うんです。それを最初に提示して、いろいろ考えてみるっていうのが流れとしていいのかなって。

──やっぱり男の子だから守らなきゃいけないって思います?

中瀬:ギリギリまでは傍観していればいいかなと思いますけど、最後は守らないとですよね(笑)。崖で手をさしのべるってわけじゃないけど、最後には僕がいてあげるっていう状態。

──『アイロニー』(M-8)のような修羅場では(笑)?

中瀬:どうですかねー(苦笑)。この曲もアルバムならではの挑戦でしたね。危険な感じが一切漂ってこない人達ですけど(笑)、鬼気迫る感じ曲を作りたかったんです。でも、このバンドでやると修羅場のはずなのにどこかコミカルなものになってしまう。なんかおもしろくなっちゃったーって(笑)。だから、自分の作る音楽とか詞を再確認しましたね。

──それって歌詞もありますけど、みなさんの演奏で嫌みのない曲になったんじゃないかと思います。

中瀬:滲み出ちゃいましたね。

井上:人の良さが出ちゃったね(笑)。

──(笑)いいことですね。

中瀬:本能で思ったんでしょうね。これ以上暗くしても歌いたくないなって。

──『ボイジャー』(M-4)は、熊坂さんがギターを楽しそうに弾いてる感じがCDから伝わってきた曲でしたよ。

熊坂:音だけでっていうのは嬉しいですね。昔は、すごく無機質なギターをやってましたけど、もうちょっとやれることがあるんだろうって思ったんです。のほほんと見えるけど、メラメラしてるんだなってわかって欲しいですし、ライブは目が見える、顔が見える、やってることが見えるのはそれだけでプラスになるけど、僕は歌を歌わないから、CDでは音で伝えていくことしかできないんです。

中瀬:この曲はギターを効果音的に使っているところがあって、栄次郎の最初のフレーズが良くできていたので、それに合わせてそういう詞になったという感じです。よくできてるなと思います。自画自賛ですけど(笑)。

──誰かを好きになって気持ちが高鳴っている時の胸の鼓動が、ギターのサウンドでうまく表現されていますね。ところで、『さよなら未来』で恋の終わりを歌って、『ボイジャー』は始まりを歌っているように感じたんですけど、つながりは意識されました?

中瀬:『ボイジャー』からもう一度アルバムが始まるという感じにしたんです。『さよなら未来』まで3曲やって仕切り直しになっているんですよ。

──なるほど。そして、『街魚』(M-7)は、めずらしくねっとり系で。

中瀬:演奏もねっとりしてますね。こういうのも気持ち良いですね。合気道的な気持ちよさ(笑)。間合いをちゃんと取って、息を合わせながら。

熊坂:1つのタイミングで音を詰め込んでいるところがあって、ドラムと合わせてる時にすごく緊張感がありましたよ。間をどれだけ取るのかが難しかったですね。しかめっ面しないとできない(苦笑)。技術云々じゃなくて、その雰囲気を出そうと思ったらこうなったんです。

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