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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】Lucky13(2006年10月号)- 君がカラスの色を黄色って呼ぶなら 僕だって胸を張って黄色と呼ぼう

君がカラスの色を黄色って呼ぶなら 僕だって胸を張って黄色と呼ぼう

2006.10.01

'05年に『ワンダー / つながる夜空』『東京ライフ / 改札口の恋』の2枚のシングルをリリースし、インディーチャートで上位にランクインした幸か不幸かわからないバンド名を持つLucky13。'06年に入りリズム隊に新メンバーを迎え、10月18日『カラスの色は』をリリースする。表題曲にもなっている『カラスの色は』の詞にドキッとした。これまでにこんなにあたたかいラブソングがあっただろうか。Vo.中瀬氏が発する一言一言が心に刻まれ、大切なものを思い起こさせてくれるようであった。こんな素敵なバンドに出逢えたことが自体ラッキーです。(interview:やまだともこ)

メンバーチェンジをしたらやりたいことが多くなりました

──今年に入りメンバーチェンジをして10ヶ月ぐらい経ってますけど、バンドの雰囲気はどうですか?

井上寛隆(Dr.):
楽しいですね。やればやるほどもっとやんなきゃってすごくいい感じ。常にポジティブでいられるし、次のステップにいくことを考えています。

中瀬至(vo.):一番充実している感じがあります。

──個人的に感じたことなんですけど、今までのLucky13はもっと音が軽いイメージだったんです。でも、今作『カラスの色は』を聴いたら重量感もあって、それはメンバーが代わったのも影響してるのかなと。

中瀬:レコーディングが実質3回目ぐらいなので分かってきたというのもありますけど、やっぱりメンバーが代わったのも大きいですね。今までは基礎からやるということが多かったけど、入って来た井上くんとマッキー(千葉牧人 / Ba)が基本以上の事ができるので、いろいろ楽になったというのもあるしやりやすくなった。

──でもリズム隊が2人代わるのは大きいですよね。

中瀬:そうですね。ただ、2人いっぺんに代わると昔の曲やっても新鮮なので、それはそれでいいんです。自分のリズム感をそこまでいいものだと最近思わないので、今はこのリズム隊にお任せしちゃってますね。

──目標も高くなりましたか?

中瀬:やりたいことは多くなりました。ライブでミニキーボード使ったり、『その永遠』(M-5)はガチでピアノなのでミニキーボードじゃ対応できない曲もありますから。

──『ヒナゲシ』(M-3)にピアノが入ったのは新鮮でしたね。

中瀬:あんなに大々的に入れるつもりはなかったんですけど、持っていったフレーズが良かったんで、最初はうっすらとだったんだけどミックスの作業でレベルが上がっていったんです。でもピアノって押せば音が鳴るすごい楽器ですよね、ってこんな年になって言うことでもないけどね(笑)。今懸念してるのは、あれをライブでやったらピアノが無くてがっかりと言われかねないなと(笑)。

──どうですかねぇ。でもこれからはもっとやりたい楽器が増えてきますね。

中瀬:機会があれば…。管楽器とか入っても面白いと思いますしね。前は自分をギターとボーカルをやる人って思ってたんですけど、いろんなことを手広くというかつまみ食いしながらやりたい。

僕の革命はどう?

──では、『大きすぎない歌』(M-1)ですが、詞を読むと存在を主張している曲だという印象を受けた曲でしたが。

中瀬:僕の考えていることを知って欲しいというのはありますね。ただ、考えを押しつける気は全くないので、「僕の革命はどう?」って聞いてるんです。基本的に確固として自分があるわけではなくて、常に「何言いたいんだろ?」って思いながら生活していて、自分はこういう人間だというのを決められないので、常に疑って生きているんです。相手のことも疑うし自分の事も疑うけど、それは悪いことではなくて、疑った上で君が好きだっていう人のほうがよっぽど信用できる。だから「世界はひとつなんだよ」って押しつけるより、お互い考えることも違うしっていうのを踏まえて共存したほうがいいんじゃないかと思ったんです。他者との違いを見つけることって一見悪いことのように見えるけど、巡り巡ってそれが一番大切なことなんですよね。「君と僕は違う」っていうのからまず始めた方がいいんじゃないかと思って、『We are the world』に盾突いてみたんですよ(笑)。悪くないんですけどね。僕がこの曲を作るより多くの寄付金をアフリカに渡してるんだから実のあることをしてるんだけど疑問を感じますね。違いを認め合うのがテーマなので、僕と同じように考えろというと矛盾するんです。だから問いかけなきゃいけない。CDが発売されて答えがちょっとでも返ってくると嬉しいなと思いますよ。

──4曲目の『エコー』も「君ならどう?」の曲ですね。

中瀬:これこれこうだからこう思うという詞が多かったんですけど、そうじゃないのが作りたいと思って意識した曲です。人と繋がることって、必ずしないと生きていけないもの、そういうのを突き詰めてただ呼び合うのもいいかもっていう詞になったんです。

──なるほど。ところで、『2000年目の友達』って今のLucky13を象徴している曲ですよね。

中瀬:まさしくそのとおりです。今の4人で最初のセッションの時に僕がアコギ1本で持っていった曲で、すごい短時間でできたよね。

井上:「ちょっと叩いてみて」って言われて「あっ! できちゃった!」みたいな(笑)。

中瀬:その間栄次郎はトイレに行っていて「今の曲ってみんなどうしたの?」って(笑)。

──出産の瞬間に間に合わなかったお父さんみたいですね(笑)。

熊坂栄次郎(G):
自分の中では衝撃でしたよ。出来てたのも衝撃でしたけど、中瀬さんがキーボードを弾くと言い出してどうしようって。U^盾今までギター2人だったのに、僕のギター1本で支えなきゃいけないというのはあまりない経験だったので、僕が変わらないきゃいけないって思った転機的な曲ですね。

──産まれた瞬間も奇跡的、気持ちも詞も前向き。今のLucky13をキュッと詰め込んだ作品になったんですね。

中瀬:詞は意識しましたよ。ずっと僕の中で「2000年」って凄いなって思ってたんです。西暦2000年ですよ! 1998年ぐらいからドキドキしてましたもん。

──…えぇ。じゃあ2000年になった瞬間って何してました?

中瀬:銚子電鉄に乗って銚子に初日の出見に行ってました。銚子電鉄は単線なので、人出が多くなろうが銚子の先に行く電車は1時間に5本ぐらいしかないんです。この1本を逃すと初日の出の時間、犬吠埼に着けないっていう電車に乗り合わせちゃって、人間の醜い部分が全部出るような電車だった(笑)。人間ってあんなに電車に詰まれるんだとか、あと一人乗れる、あと一人乗れるって。それで着いてみたら曇りだった(笑)。それが僕の2000年だったと思います。これだけ話して曲のイメージに犬吠埼はないんですけどね(笑)。

──「船出」というフレーズがあるじゃないですか(笑)。

中瀬:そうでした(笑)。

──そういえば、中瀬さんって『ヒナゲシ』の詞を読んで思ったんですが、別れ話中の辛い状況でも「ラブソングを歌わなくちゃ」とあるように、辛い時にこそ楽しくしなきゃという気持ちになる人なのかなっていうのを感じましたが。

中瀬:「ラブソングを歌わなくちゃ」は相手がいて実質終わってたとしても、その子と一緒にいることに固執する自分がいて、この子といたいからラブソング歌わなきゃ、みたいな感じですね。

──それは本気のラブソングじゃないですよね。

中瀬:だからそのラブソングがどんなだったかは出てこないんです。

──ということは、恋愛にしても消化してから曲にするタイプですか?

中瀬:冷静になってから曲にするっていうパターンのほうが多いですね。即物的な歌にはしないですね。

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