メロディが根本にあることは変わらない
──じゃあこの作品って、ロング・スケールとしてひとつの答えが出た、と胸を張れるものじゃないんですか。
菊川:いやっ……まぁ今回はこれが正解なんですよ、僕らの中で。でも、次にどうなってるかは正直わかんないです。
──完成度から言えば「これが到達点」というコピーだって書けそうな作品なんですけどね。でもみなさんの意識の中では……。
菊川:通過点、ですね。あくまで。
──はい。ちなみに今回のアレンジも時間は相当かかってますよね。
菊川:そうですね。だいたい二転三転ぐらいは毎回してますね。2回3回と違うことやってみてようやく、あ、これだな、っていうのが見えてきて。
楠:でも、そこからまたゼロに戻ったりすることもありますし(笑)。
──そういう苦労が曲に滲んでこないですよね。サラッと、なんの汗もかかずにできたようなイメージが。
菊川:喜んでいいのか悲しんでいいのか(苦笑)。でもそうやって聴いてもらえるのも嬉しいですよ。
──そういう曲に挟まれてるから、昔の曲がポッと出てくると逆に新鮮だったりして。5曲目の「frames laid out」と10曲目の「The day rain changes to the rainbow」が再録ですけど。
菊川:はい。これはですね、5曲目のほうは前回のミニ・アルバムの曲なんですけど、ミニ・アルバムの時だけ今までのエンジニアさんと違うエンジニアさんだったんですよ。で、今回のアルバムはもともと昔からやってるエンジニアさんにやってもらって。その、今回のエンジニアさんのほうが僕らとしても付き合いが長いし、その人の手で改めて録ってもらいたいなっていうのがあったから。だから入れたっていうのがひとつ、ですね。でまぁ、10曲目の古い曲っていうのは、サード・アルバムにも古い曲を1曲入れたんですよ。前のファースト・アルバムから1曲入れたんですけど、そのシリーズ第2弾という感じで。
──やっぱ再録は楽しいですか。
菊川:そうですね。単純に4人でやってないですからね、昔の曲は。でもライヴでよくやってるし、だったら今回新しくアレンジも変えちまえ、と。そういう感じですかね。
──新曲に挟まれると、やっぱ「The day rain changes to the rainbow」のメロディって、青いというか若いなぁって思いますよね。
菊川:そうですよね(笑)。でも昔の曲のほうが意外と、不思議と自信あったりするんですよね。
──へぇ。
菊川:これなんでかわかんないんですけど、ファースト・アルバム作り終えた時が一番自信あったんですよ。なぜか。日に日に自信がなくなってるってことなんですけど(笑)。
楠:ダメじゃん(笑)。
──それは、昔は若かったし怖いもの知らずだった、という意味じゃなくて?
菊川:まぁまぁ、そういうのも確かにありますけど。ようやく処女作として作れたっていう嬉しさもあるんでしょうけど。
──逆に言うと、今はそれだけ悩むことが多いんですか。
菊川:多いですね。っていうのも引き出しがどんどんどんどん増えていって、選択肢がいっぱいあるから。昔のほうが迷いなく「これとこれでいい。よしできた!」っていう感覚でやってた気がする。今のほうが、1曲に対して使う時間が全然多いな。
楠:うん、全然多い。
──技術的にも難しくなってますしね。
菊川:うん。だから今回のを聴いてファーストだったりセカンドだったりと聴き比べると、単純に「すげぇ上手くなってるじゃん」と思うんですよ。それは誰が聴いても思うだろうし。でもその反面、昔の曲って今聴いても「おー、意外といいことやってんじゃん」みたいなのがあったりするんですよね。だから曲の作り方とか、曲に求めてるものって、まぁやってることは難しくなってますけど、根本的なところで言えば変わってないんだと思う。
──メロディありき、っていう基本ですよね。
菊川:うん。だからもしかすると、今後インスト・バンドになっていくかもしれないけど──。
楠:(笑)それはないだろう!
菊川:ないかぁ? ないな……うん、それはない(笑)。だから多分、唄っていく、っていうことはやっていくと思います。結局どうあっても、唄って、っていうのがみんなのやりたいことだったりするから。