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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】WRONG SCALE(2005年7月号)- Things as they are──"自分たちの在るがままに"

Things as they are──“自分たちの在るがままに”

2005.07.01

昨年3月、ギター&ヴォーカルの大西俊也が加入し、不動の3人から無敵の4人へと進化を遂げたWRONG SCALEが、単独作としては約2年半振り3枚目、4人編成となって以降初のアルバム『triangle to square』を完成させた。切なく美しいメロディ・ラインと疾走感が見事に融合した彼ら独自のサウンドがギュッと詰まった捨て曲皆無の全12曲、至福の40分強を存分に堪能できる文句なしの最高傑作と言えるだろう。随所に絡むストリングスの響き、至妙なコーラス・ワーク、胸を締め付けられる儚い旋律...どれを取ってもこれまでの諸作品とは決定的に抜けが違う。アルバムを通 して得られるこの問答無用の気持ち良さはとにかく半端じゃないのだ。ベース&ヴォーカルの野田剛史にその抜け具合の訳を問い詰めるべく、話を訊いてみた。(interview:椎名宗之)

難しいところは増えたけど、だからこそ面白い

──メンバー増補後初の単独作『triangle to square』を聴かせて頂きまして…この突き抜け具合は一体何なんだ!? という、その要因を解明するのがこのインタビューの趣旨なんですが。

野田:なるほど。どうぞお手柔らかに(笑)。

──やっぱり、ギターの大西さんが加入されたことが一番大きいんでしょうか? タイトルもズバリ、“3人から4人へ”といった意味ですよね。

野田:判りやすいタイトルですよね。でも、4人編成になって特別もの凄く大きく変わったっていう実感は、僕自身あまり持たなかったんですよ。アルバムを構成する曲が明るめなのが多いからかな? とは思いますけど。

──曲調は明るいけど、「trace of grief」(深い悲しみ)や「Anxiety」(心配, 不安)、「Reason of sorrow」(悲しみの訳)など、タイトルは暗いものが多いですよね(笑)。

野田:僕ら、基本的に根暗なんで(笑)。4人になってバンドとしての足並みが揃うまで、どうしても多少時間が掛かりますよね。それが半年くらい経ってまとまってきて、同じ方向を向いてきた。そんなところを今度のアルバムにも反映できたことがポイントだと思ってます。

──昨年2月にHOLSTEINとのスプリット・アルバム『NIGHTINGALE』のリリースはあったにせよ、単独作としてはほぼ2年半振り。でも、待った甲斐は十二分にある非常に聴き応えのあるアルバムですね。

野田:セカンド・アルバム(『Upstairs for the bed』)を出してから『NIGHTINGALE』までは、スプリットに収めた3曲しかなかったんです。その後も全然曲はなくて、せいぜい1~2曲程度。そのタイミングで4人になって、スプリット・ツアーを回って。バンドを始めたばかりのピュアな気持ちでライヴに臨んでいたので、それなりに固まるのに時間が掛かって。で、そろそろ腰を上げて「新曲、作ろうか?」っていうのは随分後になってからでしたね。合宿に行って、4~5日間籠もって、寝る時間以外はずっとスタジオに入って集中的に曲作りをしてました。部分部分のネタは各人あったから、それらを巧く組み合わせて、煮詰めていった感じです。今回は曲を広げるのが大変でしたね、ネタって言うよりは。ネタが広がりすぎて、そのネタがどこに行ったのか判らないようなこともありましたから。ネタはあくまで起爆剤でしかないし、そこからどう広げていくかは各個人の可能性や引き出し、モチベーションに委ねられますからね。

──4人編成になったことで、そのネタの広げ方も微妙に変わりましたか?

野田:随分と変わりましたね。3人は3人の良さがあって、3人でできることを極限までやってきたんですけど、1人増えただけで大変なんだなっていうのがまず先に来ましたね。難しいところは増えましたけど、でもだからこそ面 白い。

──ギターが増えると音の重ね方にも慎重になるでしょうし。

野田:弦(楽器)が一本増えただけで相当違いますからね。ギターとベースが重なる部分でも判断に迷うことが結構あるので、ギターとギターになれば尚更ですね。だから今回はパートごとのコミュニケーションを細かく取ってやりました。ギターが2本になったことで、ライヴでは特に手応えを感じるようになりましたね。音源に関しては、2本のギターの音がぶつかって試行錯誤したり、コーラス・パートを練ってみたりといろいろ細かいことをやってみたので、実感として自分たちの中で掴みきれないところもあるんですけど。作業が終わってまだ時間も経ってないですし、今度のツアーを回っていくうちに噛み砕いていけると思いますけどね。

──アルバムの冒頭を飾る「p.s moved out」は、直訳すると“追伸:引っ越しました”という…。

野田:そうですね。レーベルも引っ越したし、メンバーも増えたし、っていう。歌詞との脈絡は全くないですけど(笑)。

──3曲目の「Things as they are -date 3.12-」はアルバムの根幹を成す曲だと思うんですが、これはHOLSTEINとのスプリット・ツアー初日、4人編成になって初めてライヴを行った去年の3月12日を指しているんでしょうか?

野田:それもあるんですけど、その1年後にメンバー全員とPAを入れた5人でバンドの在り方について深く掘り下げて話し合った日でもあるんです。今年の話なんですよ。WRONG SCALEの中での個々人の在り方みたいなものを、それまでの僕らはあまり話し合ってこなかったんです。各々がその場の空気を読んだり、必要以上の摩擦は避けてきたところがあったんですね。それがいよいよ話し合わなきゃダメだというレベルにまで来て。

──その話し合いの末に「Things as they are」、“自分たちの在るがままに”という結論に達した、と。

野田:メンバーが3人から4人になって、ゼロからバンドをやり直すとなると、いろいろと考えたりするじゃないですか? そうなると“まとめなきゃ、まとめなきゃ”っていう思いが先走って、その結果 、構えすぎたと言うか、気づかないうちにバンドとしてちっちゃいまとまり方になっていたんですよ。まとめること自体はいいんだけど、それによって自分たちらしさが希薄になったら本末転倒だろう、と。そんなことにハッと気づいて、みんなで話し合ったのがその日だったんですよ。それをあえてタイトルにしたのは、自分たちでも忘れないようにしたいと思って。

──そんな内部での話し合いが『triangle to square』制作の重要な機動力に繋がったんですか?

野田:作品の、と言うよりは、今後のライヴへの機動力になっている気がしますね。その話し合いをしたのはレコーディングの後でしたから。

──4曲目の「36」っていうのは?

野田:あれは単純に、36秒のインストなので(笑)。ファースト・アルバム(『effort for scale』)にも「45」っていう45秒のインスト曲がありまして、その曲は長谷川京子のDVDに使ってもらったことがあるんですよ。車を洗ってるシーンで。個人的にハセキョーは大好きだったから、観た時に「スゲェ! 車洗ってる! ホットパンツ!」って思って(笑)。

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