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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】WRONG SCALE(2006年5月号)-水面に落ちた水滴が波紋として広がるように

水面に落ちた水滴が波紋として広がるように

2006.05.01

前作『triangle to square』が各方面で高い評価を得て、現在までに約2万枚のセールスを記録するなど未だ衰えぬ勢いを見せるなか、WRONG SCALEが新しいミニ・アルバム『fate effects the surface』を完成させた。胸を締め付けられる儚い旋律と至高のコーラス・ワーク、疾走感に溢れた迸る激情サウンドはさらに進化。ミニ・アルバムの特性を活かした収録曲のヴァラエティさとトータル・タイムが絶妙で、何度でも繰り返し聴ける中毒性の高い作品だ。決して消耗品にはなり得ない、ずっと寄り添っていたい名盤をまたも作り上げた彼らにアルバムの制作過程の話からバンドとしての理想像までたっぷりと訊いた。(interview:椎名宗之)

自分達の経験したことが自然と滲み出ている

──去年の7月に発表した3rdアルバム『triangle to square』が未だに息の長いセールスを記録しているそうですね。

野田剛史(b, vo):
『Rooftop』で取り上げて頂いたお陰ですよ(笑)。

──いやいや(笑)。作品が本当に素晴らしかったので、いいものがちゃんと評価されて何よりです。

楠 誠一(ds, cho):それだけ受け入れられてる実感はないんですけどね。ただ、そのレコ発のツアー・ファイナル('05年9月3日、渋谷O-WEST)はあれだけの大バコで、しかもワンマンでお客さんがたくさん来てくれて、あの時は凄く実感がありましたね。

──個人的に『triangle~』を今も愛聴しているせいもあるのか、作品の鮮度が未だに落ちていないので、今回のミニ・アルバム発表が思いのほか早かった気がしますね。

楠:僕らもビックリしております(笑)。

野田:その前は2年半空いてましたからね。適度なスパンでコンスタントに作品を出せたら…という理想がずっとあったんですけど、実現するまで腰が上がらない面があって。今回はその重すぎる腰を上げてみた感じでしょうか。

──今回も曲作りの集中強化合宿はされたんですか?

野田:はい。合宿に2回行って、スタジオに3日籠もりました。正味1週間あるかないかで。

──早ッ!(笑)

野田:いや、合宿はホントのベーシックな部分だけですから。この作品の完成度でいくと2割程度しかその時点ではできてませんでした。レコーディングまでに6割やって、レコーディングで頑張って4割上げた感じです(笑)。

──前回のツアーの手応えが音作りにも作用したんじゃないかと思うんですが。

野田:狙ってるわけではないですけど、自分達の経験してきたこと、身に染みてきたことがどこかに盛り込まれてるとは思いたいですね。それが自然に出ていればいいと思いますけど。

──『fate effects the surface』というタイトルにはどんな意味が込められているんですか?

楠:毎回コンセプトがあってアルバムを作るわけではないので、このタイトルも全体がそうだというわけじゃないんですけど、水面に水滴がポトンと落ちて波紋が広がるように、小さな出来事が次第に大きく広がっていく…というような漠然としたイメージですね。何となく意味が深いようには見えるんですけど(笑)。

──最初からミニ・アルバムで行こうと?

野田:そうですね、サイズは決めてました。シングルはどうもな…っていうのがあったんで、ミニ・アルバムで行きたいね、と思ってました。行きたいね、の段階で頑張ってたんですけど、一応それを強引に実現させた感じですね。

──基本的には前作の延長線上にあると思いますが、「tiny」のようにバンドの初期を思わせる激しいナンバーもありますね。

野田:要素として元々あったものですからね。ちょっと浮く感じはあるかもしれないですけど、昔から聴いてくれてる人や作品を全部持ってる人は違和感ないと思いますよ。僕らの持ってる要素の一部ですから。ベーシックは仰る通り前作の延長線上にはありますけど、その中でも多少広がりを持たせたものにはできたと思ってます。

──前作では、各人が持ち寄ったネタの広げ方に苦戦したと仰ってましたが、今回はどうでしたか?

野田:ギターに寄せるアレンジはギターに一任して。前回はスタジオに入る前に7~8割方固めてからグッと詰めていったんですけど、今回は凄く試行錯誤があった作品だと思います。作曲者は苦労したと思いますよ。

──ベーシックな曲作りは菊川さんと大西さんが?

大西俊也(g, vo):コードなりメロディなりができてからバンドで固めていく、って感じですね。

菊川正一(g, vo):僕がメインで書いたのは「tiny」「thinking aloud」「cheating others」の3曲で、1曲目の「frame's laid out」に関してはトシとの合作なんです。お互いが作ってきた曲を重ねたのは全くの初めてで。やりたい曲の雰囲気が似てたんですよね。トシの曲にはサビがなかったり、僕の曲はAメロが弱かったり、お互いに弱点があった。そこでそれぞれのいいところを合わせてみたんです。

楠:曲の頭数が必要だった時期に2曲がくっついて1曲になったからちょっと大変だな、とは思いましたけど(笑)。でも、結果的に凄くいい曲ができたと思うし、曲を作る新しいアプローチを経験できて良かったですね。

──恒例のインストのタイトルは、今回「36」や「45」といった秒数ではなく(笑)、「h.i.g」という表記ですが、これは何の略なんでしょう? アコギのメロウなナンバーだから“激しく(h)・いかない(i)・ギター(g)”とか?(笑)

楠:それは新しい意見だなぁ(笑)。

野田:ご想像にお任せします(笑)。凄いくだらない略なんですけど、曲の感じからはそんなくだらなさは一切伝わってこないと思いM?ます。人間ってそうじゃないですか? フタを開けたら意外とくだらないもんじゃないですか?(笑)

──長谷川京子好きな野田さんだけに、“ハセキョー(h)・イズ(i)・グッド(g)”だったり?(笑)

野田:ははははは。それいいですね。そっちにしとこうかな?(笑)

──この曲は最初からインストにしようと?

野田:元々バンド・サウンドでやろうって話してたんですが、曲を詰めきれなくてインストに移行したんです。インストとしてアレンジも考え直して。この形でこの位置に収めることでいいアクセントにもなってるし、結果的には凄く良かったと思いますね。

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