敢えて禁じ手を使った『パラドクサル』
──『きらりいろ』の話をされていたときに、ポップな曲だと言われていましたけど、この曲は子供でもわかる詞とメロディーというような気がしたんです。詞を作る時ってどういう時にできます?
小高:真夜中に酔っぱらって…ですね。
──今回も石川さんが詞を書かれている曲もありますが…。
石川:必要に迫られた時に書く詞が多いので、日常的に詞を書いてみようかっていう生活はしてないんですよ。今回も「『不安と夢』 (M-8/ファントムと読みます)の詞を書いてみない?」って小高に言ってもらって、慣れてない部分もあるから最初は小高に技術的なものを教えてもらって自分なりに考えて。俺も作業はたいがい夜中に。 そっちのほうが、素直な気持ちが出せるような気がして。
──夜中が一番素直なんですよね。
石川:高ぶりなのかな。
小高:夜と昼って違うよね。
──深夜に日記を書いて起きて読み返すとなんでこんなの書いちゃったんだろうって思うじゃないですか。だから深夜って気持ちが一番高まる時間なのかなっていう気持ちはしますね。アレンジはけっこう時間かけてやられました?
合田:すんなりですよ。
──アレンジで一番こだわる方は?
石川:俺かもしれないな。でも、今回は4人それぞれ口出して。 小高も小高ですごい。
小高:僕が曲を作っているから完成形のイメージがあって、デモテープはめんどくさいから作らないんだけど雰囲気だけ伝えて、僕は保守的な口出しかな。ブレーキをかける。さっくん(合田)、それいきすぎかなーって。
合田:龍はドラムだからリズム的なところはかっこよくしたいし。
小高:リズムのアレンジで曲がすごくおもしろくなる。キメをこうしようっていうのは龍が多い。曲の構成は俺が多い。
──最初に曲を作った時点で何となくの完成形は頭にあっても、みんなでアレンジすると違う方向に行ったりもあるんですよね。今回イメージと全然違う感じになったというのはありました?
小高:『パラドクサル』。もうちょっと普通でした(笑)。
──鳴き声みたいな叫び声が入ってますよね?
小高:アペアペ言ってるやつね。
──詞に“かもめ”が入ってるからかもめをイメージしてる気もするんだけど、何度か聴いていくうちにかもめじゃないなと(笑)。
合田:あんなかもめいないですよ(笑)。
小高:俺もかもめじゃないと思ったけど、みんなが「かもめでいいんじゃない?」って。かもめってこうやって鳴くっけなー?って思ってました(笑)。
──あれはなんで入れてみたんですか?
小高:テクニカルな話になるんですけど、サビのインパクトをでかくしたくて、サビとサビ以外を分けて録っていて、それは普通禁じ手なんですけど、おもしろくするために敢えて禁じ手を使ったんです。エンディングでイントロと同じコード進行戻るんですけどテンションは戻さず、うるさいままカオスで終わろう。パッと聴きはなるほどなって思って聴かないと思いますけどね。それがアレンジの楽しいところなんです。俺らだけでウッシッシみたいな(笑)。カオスで変態な感じに俺も声で混じれないかなって歌入れの時に思って、テイクごとに「アペアペアペ!」って積極的に。
石川:最初はいきなり言い出したからビビったけど(笑)。
小高:予想以上にみんなウケてたんで、歌うたびによりみんなを笑わかせようと、より良い「アペ」を追求してたら、ミックスの時に全部使われて、1アペにエフェクトかけて6アペになってたんですよ。「アペアペアペアペ──────!!!!!!!」(突然叫び出す)
石川:ハンパないアペになってて。
──あれは本当にカオスでしたよね。
石川:クレイジーなかんじがね。ぶっ飛んだことをしたかったんです。
合田:遊び心溢れる曲になりましたよ。
山下壮ギタリスト伝説!?
──ところでいきなりですけど、ギターの詳しいことはよくわからないんですが山下さんのギターってなんかすごいなっていつも思ってました(笑)。
山下:その“なんか”が知りたいんですけど(笑)。
──ライブ後も心に残るんです。
山下:いいことですよね。
合田:なんだかよくわからないけどすごいギタリスト(笑)。
小高:俺らぐらいの年まわりで下北沢とか新宿でバンド始めたころって、ギターソロを弾かなくなったんですよ。今売れとる人もギターソロをバチバチ弾かないじゃないですか。流行じゃないのか。その中で壮はしっかり弾く。しっかりギターソロを弾くってムズイなーって他のバンドを見ていて思ったんです。形だけの速弾きはかっこよくないというか。かっこいいボーカリストは狂気を感じる。かっこいいギタリストも狂気を感じる。素の人はかっこよくないの。
合田:なりきり度合いがね。
山下:昔からじっくり弾くほうが好きですからね。それが今出てきているんでしょうね。
石川:最近出るよね。いい年の取り方してるよね。最初は小高が言いよったグッと来ないギターだったのかもしれないけど、技術とアピールの仕方とかがいい感じに年を重ねてきて、いいギタリストになったというか。
──アレンジでも山下さんはギターソロの部分とか口を出すのかなって思ったんですよ。
山下:あんまり主張が強くなくて、バランスを取るほうなので。
小高:今回ここは好きなように弾きまくってっていうのは俺から言う感じだった。『不安と夢』とか『ヘブンズドア』の最後とか一人ぼっちで弾きまくって酔いしれてる感じ。
──酔いしれてるイメージがあります。
山下:楽しかったよね。自分で思ったことをやってって言われてたんで。
小高:『ヘブンズドア』のレコーディングの時に壮をモニターで見てたんですけど、レコーディングなのに手とか上がっとった。あれはかっこよかったよね。あれこそ狂気だったよね。
山下:それぐらい気持ちを込めれたんですよ。いりもしないフリがついちゃうぐらい(笑)。
小高:全てが弦の振動に関係しているんやろうな。
山下:なりきるの大事だからねー。ライブでもがんばります(笑)。
──ライブいっぱいありますもんね。
合田:今までの中で一番大きいツアーです。
──どんなツアーにしたいですか?
石川:アルバム自体手応えがあるから、ライブも間違いなく楽しいんだろうなっていう予感は現時点であるけど、その予感をライブ重ねることによってどこまで超えていけるのかっていう楽しみがあって、研ぎ澄ませていきたいなと。アルバムを聴いてライブに来て、LUNKHEADというバンドを体感してもらいたいです。CDで伝えきれないこともライブで発信できると思うので…。ぜひ聴いてもらいたいですね。
合田:ライブははっちゃけたいですね。アルバムはいろんな曲が入っていて、いろんな見せ方ができると思うので、とりあえずCD聴いてライブ会場来てくれと。
山下:ライブは本当に楽しみなんですけど、いい作品ができあがっててこれからのライブの軸になりそうな曲もいっぱい入っているので、ニュースタンダードなライブを見せられるツアーにしたいです。
小高:初めて行く場所が多いしどうなるかまったくわからないですけど、お客さんが1人でも1000人でも変わらないテンションでやれるんじゃないかと、そうなってきた気がするんです。だから、ぜひ楽しんで欲しいと思います。まだ学校に1人とかクラスで自分だけしか僕らのことを知らんとかいう人が多いと思うんです。そういう人が僕らを見つけてくれてライブを楽しみにしてくれたら、直に会いに行けるというのはすごい嬉しいし、やっと来たっていう人もいっぱいおると思うので、会えるのが嬉しいですね。
石川:ライブで行く自体が初めてなところいっぱいあるもんね。
小高:楽しみだね。