ライブというよりはライフ
──『FORCE』を通して聴いたときに、シングルになった曲とアルバムにしか入っていない曲とでは、明らかにイメージが全然違いますよね。シングルはポップで聴きやすいんだけど、他の曲っていうのはコアな感じがしたんですが…。
石川:今回は、葛藤があるけど弱い部分は見せたくないって作った『LUNKHEAD』を出した1ヶ月後に出したシングル『夏の匂い』から制作が始まったんです。もっと言えば『夏の匂い』は『LUNKHEAD』を録り終わった直後にゼロから作った曲。
小高:普通じゃないですよ、そういう制作って。『夏の匂い』は純粋にいい曲ができたので、そこから次のアルバムってなると、どういうアルバムを作ればいいんだろうっていう葛藤から。
──では苦労したところというと?
小高:スムーズに進んでいたので、苦労という苦労はないんですよ。
石川:どういうアルバムにしようって、作り始めるまでは苦労しましたけど。
──それが決まったらぽんぽんと。
小高:そうですね。やっぱりやりたいことやるしかないんじゃないだろうか、というところに至ってからなるようになれ、みたいな。
石川:どっちかって言ったら楽しんで作ったほうが強いね。『桜日和』 のほうが大変だったかな。
合田:苦しみを楽しむっていう姿勢は今回確実にありましたね。
小高:この洋服、俺はかっこいいと思うけど、みんなはおしゃれだと思うかなっていう迷いみたいなものがなかった。
石川:それいい例えやな。前作は誰が見てもかっこよくは見えるものを追求してたけど、今回は自分がかっこいいと思える服装を追求していった。
小高:今まではアルバム1枚通して流れを気にしてたんです。 『ヘブンズドア』(M-11)は前作から候補にあがっていたんですけど、この曲が入ったら流れがぶち壊しになるなとか壮大すぎて浮くなって無意識にコンセプチュアルに曲を選んでた。今回はシングルがポップだから、シングルに揃えるとポップなだけのアルバムになる。でもやりたいことやったらデコボコでチグハグなアルバムになりそうで、今回は自分らがかっこいいと思う曲をひとつにまとめたらいいんじゃないかって。だから、曲ごとにコーディネートが違って、エキセントリックなものもあればGパンに白Tシャツみたいなものもある。
合田:Gパンに白Tはわかる(笑)。
石川:まさしくアレやな。『僕らは生きる』。
小高:何も着飾ってない感じ。
──それぞれが個性的な洋服を身に纏っているという感じですね。
石川:今回のアーティスト写真では、それぞれ違うファッションをしているんだけど白系で統一感がある。主張はちゃんとできてる。だからこういうイメージの服装になったんじゃないかな。ジャケットもスピーカーを白く塗って積み重ねてる。大きい音小さい音いろんな音が鳴ってるという感じです。
小高:ぶっ壊れたスピーカーが『パラドクサル』(M-7)。
石川:いびつなんだけど、積み上がって形になってる。なんかかっこいいっていうアルバムなんじゃないかな。サウンドとか歌詞とか、それ以上にビジュアル的な部分もコンセプチュアルに自分らが出したいイメージを提示出来た気がする。
山下:狙ってたわけじゃないんですけどね。
小高:狙えなかった。曲順とか死ぬほど揉むぞって。
──曲順は悩みました?
合田:最後の曲を何にするか悩みました。
──10曲目の『眠れない夜のこと』の詞にある「独りぼっちの朝が来なくてもすむように」と、11曲目『ヘヴンズドア』の「それでも朝は来たよ」という詞は、続いているような気がしたんですが、この流れっていうのは…?
小高:偶然です。曲順は全部録ってから考えようやっていうノリでしたね。しんどいことは後回し(笑)。
石川:難しいこと考えずに前に進もうって。
小高:そういう意味で一曲入魂、この曲はどういうおしゃれにしましょうかみたいな。選曲の段階でアルバムのストーリーが見えてなかったから逆にそれをぶち壊そうと。ストーリーを考えてたらシングルが邪魔でしょうがなかった(苦笑)。そういう意味でファーストアルバムを作ろうって考えたら楽になった。
──やりたいことを入れようっていうね。
小高:ファーストはタイトル決めと曲順で吐くかと思うぐらい悩んで。 そういうのに近い感覚を今だからこそ。それは最終的にいい方向に行ったよね。
石川:みんなで額集めてタイトル決めたり曲順を選ぶ作業ですら楽しかった。苦しいんだけどそれすら楽しむことが出来た。
合田:余裕だったんでしょうね。
──『僕らは生きる』(M-12)では自信を感じましたよ。 今までは突っ走ってきた感じがしたけど、自信がでてきたんだろうなっていう感じだったんです。
小高:自信はないんです。自信がない男がこういうことを追いつめられて叫びましたよっていう感じです。
──語りの部分では照れくさそうに言ってる感じがしましたが…。
小高:そうなんですよ。1テイクしかできないと思って、ものすごく緊張していたんですよ。恥ずかしいなって。「なんかー、~思います」って。声が小さくなるんですよね。
合田:それがいいんですけどね。
小高:歌いながら自分に腹が立ってきたんですよ。俺が語りにするって言い出したのに、ヒヨっとるなぁって。そういう腹立たしさがテイク中に出てきて、気分がだんだんやけっぱちになってきて、おかげで“ライブ”を録れたなと思います。
──ライブ中の小高さんは激高して叫んでいるイメージがありますからね。
石川:恥ずかしそうな感じとか、最後は叫んでる感じとか、人間くささっていうところだと思うんですよね。
山下:もっと言うと、小高と知り合ってからの流れに似てる。初めは人見知りのところがあって、仲良くなるとおっぴろげーなかんじなんです。人としての付き合いの流れも歌のテンションも似てるなって。ライブというよりはライフと俺は思ってる。
小高+石川+合田:おぉー!!!!!!
山下:彼のパーソナリティー。うまく流れができてるなって思いました。
石川:ライブというよりライフ。
小高:うまいこと言いよるわ。
山下:ライブも同じですよ。イベントとかだんだん心通じ合ってくると後半で盛り上がってきて…、っていうのにも似てると思うし、紛れもなくライブだと思いますけどね。