来たる3月16日、新宿ロフトで興味深い対バンが実現する。'50年代後半から'60年代前半にかけて隆盛を誇ったマージービートと呼ばれる真の意味でピュアなロックンロールを継承するバンドが集うイヴェント『PREMIUM ROCK and ROLL NIGHT』がそれだ。その顔触れは...平均年齢23歳ながらその演奏技術は随一、新興勢力・THE BAWDIES! バンド結成4年ながらメンバーのキャリアは一級品、個々の活動も盛んなRadio Caroline!! 今年で結成10周年、今やこのシーンの代表格・THE NEATBEATS!!! この豪華絢爛なイヴェント開催を記念して、THE BAWDIESからROY(vo, b)、Radio CarolineからPATCH(vo, g)、THE NEATBEATSからMr.PAN(vo, g)のお三方に集まって頂き、各人に"この1枚"を挙げてもらいながらそれぞれのルーツ・ミュージックを大検証。今も色褪せぬブリティッシュ・ビートについて存分に語り倒してもらった。(interview:椎名宗之+植村孝幸)
──本日のお題は、'50年代後半から'60年代前半のブリティッシュ・ビートについて存分に語ろうというものです。まずはざっくりとその辺りの音楽を好きになったきっかけからお聞きしたいのですが。
PAN:若手! お前からや!
ROY:…は、はい! えーと、高校3年生くらいの時に…。
PAN:(PATCHをチラ見して)俺達がいくつの時だよ?
──諸先輩方の神経を無闇に刺激しないように(笑)。
ROY:はい(笑)。レコード屋でザ・ソニックスが流れているのを聴いて、とにかく恰好いいなと思って。それで店員さんに聞いたら「'60年代のバンドだ」って言われて…そこから自分でルーツを調べたりして、リトル・リチャードにまで辿り着いて。
──それからどんどん遡っていく感じなんですね。
ROY:ええ。そこからビートルズなんかも聴き直したりして。でも、最初はザ・ソニックスでしたね。
PAN:俺はね、高校卒業してイギリス行った時かな。イギリスの街に溢れていたって言うか、クリフ・リチャードとかザ・シャドウズとかが。案外、日本では当時聴いたことなかったし、それが大きいかな。それまでもサーチャーズとか聴いてはいたけど、それもオールディーズの一環として聴いていて、ブリティッシュはそんな聴いてなかったし。PATCHは?
PATCH:ちゃんと聴いたのは19~20歳の頃かな。最初は高校の時にローリング・ストーンズを聴いて。それから上京してきてから、DJやってた友達に色々聴かせてもらって。でもその頃はバンドよりも黒人音楽、R&Bとかブルースが好きでよく聴いていて、それをカヴァーしてるバンドを聴いていたって感じでしたね。だからイギリスもそうだけど、アメリカのガレージ・バンドとかもよく聴いていたかな。
──'50年代後半から'60年代前半にかけてのフェイヴァリット・バンドはどの辺ですか?
ROY:最初からヴォーカルに興味があったので、バンドっていうよりは、リトル・リチャードとか黒人のヴォーカルものですかね。
──リトル・リチャードは、ビートルズがカヴァーしたことで再評価されたりしましたよね。
PAN:俺は、'50年代はどっちかと言うとロカビリーばかり聴いてましたからね。まずはエルヴィス・プレスリーから始まって。俺の場合は、グループなんだけどヴォーカルがちゃんとおったのが好きで、最初はジョニー・バーネットとかが強烈でしたね。他の白人のポップスとか、いわゆるオールディーズとは一線を画してるなと。
PATCH:俺はそう言われるとその辺りの音楽は余り聴いていないのかもしれないけど…やっぱりローリング・ストーンズになっちゃうかな。どっちかと言うと、2人よりはその頃のものは聴いていない。
──でも、ストーンズがカヴァーした曲のオリジナルを辿って聴くと、音楽的な教養がかなり高まりますよね。
PATCH:そうだね。ビートルズも元々ガレージとかやっていたり、カントリー&ウエスタンの要素も持ってるしね。
ヴォーカリストは声のパワーと黒い声が重要(ROY)
──今日はみなさんにとっての“この1枚”というレコードを持参して頂いておりますので、早速披露して頂きましょうか。
ROY:僕はブリティッシュではないのですが…最初はやっぱり、リトル・リチャードの「TUTTI FRUTTI/KEEP A KNOCKIN'」(7インチ)ですね。最初にロックンロールという言葉にピンとくる音っていうのがこれを聴いた時でしたね。
──ROYさんにとって、リトル・リチャードの一番グッとくるポイントはどこなんですか?
ROY:黒人のヴォーカリストが凄く好きで、声のパワー、低音とか太い声とかがかなり重要に感じるんですよ。だけど、リトル・リチャードの声はそれプラス、高い声があって。他の黒人のヴォーカリストの声を聴いていると、“こう唄いたいなぁ”って思えるんですけど、リトル・リチャードを聴くと“こうは唄えない、声が出せない、レヴェルが違う”って感じるんですよね。最初にそれを聴いちゃったから、衝撃が凄く大きくて…。
──一番影響を受けたヴォーカリストと言っても過言ではない?
ROY:そうですね。テンションも違うし。
──このシングルの2曲は、言わずと知れたリトル・リチャードの代表曲ですよね。
ROY:やっぱり最初に聴いたってこともあって、思い入れがありますね。あともう1枚、全く関係ないんですけど、ザ・ソニックスを聴いて色々と調べていった頃に、黒人音楽のルーツはR&Bっていう言葉が頭に残って、何を聴いていいのか判らなくてコンピレーションを探したんですよ。その時に見つけて初めて買ったのが『KING NEW BREED RHYTHM & BLUES』というオムニバスで、このアルバムの1曲目、マイク・ペディシンの「BURNT TOAST AND BLACK COFFEE」が恰好良くて今でも凄く好きなんです。でもこのミュージシャン、誰に訊いても知らないって言うんですよ。せっかくなので持ってきたんですが、お2人は知りませんか?
──それは黒人の女性ヴォーカル・グループのコンピレーションですか?
ROY:いや、色々と入ってますね。
──それにしても、またシブいアルバムを選びましたね。
ROY:たまたまですけどね。ジャケットが黒人だし、R&Bって書いてあるし、間違いないかなと思って。
──いわゆるジャケ買いってやつですね。PANさんはご存知ですか?
PAN:いや、収録されてるファイブ・ロイヤルズとかは知ってるけど…この曲は判らんなぁ…。
PATCH:ジョニー・ワトソンとか入ってるんだ、へぇー。
PAN:マイク・ペディシンっていう白人のアーティストはいるよね、オールディーズで。
──曲自体はどこかのバンドがカヴァーしているから聴いたわけではないんですか?
ROY:いや、僕もこれで初めて聴きましたね。
──この手のコンピレーションは普段からよく買いますか?
ROY:このKENTってレーベルのは結構好きで、内容も面白くて、見つけるとすぐに買いますね。
PAN:イギリスのACEっていうレコード会社の中のレーベルやね、これ。
──特にこの時期の音楽は、“このレーベルなら間違いない”っていうのがありますよね。
ROY:ありますね。ブルースでも、最初どれを聴けばいいか判らない時はCHESSのを買っておけば間違いないとか。
──PANさんはこの時期、どのレーベルがストライク・ゾーンですか?
PAN:どうやろ? 俺はSUEとか好きかな。ブルースやとEXCELLOとか。
──ストーンズ好きなPATCHさんは、DECCAとかあの辺ですか?
PATCH:そうだね。ATLANTICとかもいいよね。
PAN:VOLTとかHIGHも良いよね。
PATCH:でも、レーベル買いってハズレが2回続くとイヤになっちゃったりするよね(笑)。
PAN:CHESSでもあるよね、古いやつだとDOO-WOPし過ぎちゃったりとか。