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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】hare-brained unity(2007年2月号)- ミラーボールのように放たれ広がっていくまばゆい音の世界

ミラーボールのように放たれ広がっていくまばゆい音の世界

2007.02.01

hare-brained unityの2枚目のフルアルバムにしてメジャー1stアルバムとなる『EVEN BEAT』。2006年は春、夏、冬にそれぞれ『ソライロ』『Sputnik』『ORION』というシングルをリリースし、四季を駆け抜けた彼らだけれど、このアルバムはただ2006年の集大成には留まらない! 持ち味である四つ打ちサウンドをベースにしつつも、ジャケットのミラーボールの光のようにその世界がさらに広がっていることを見せ、2007年のhare-brained unityがどれだけ成長していくかを予見させる仕上がりに。今回はドラムの大坪徹志さんとギターの吉田大佑さんにアルバムのことを中心にお話を伺いました。(interview:古川はる香)

“四つ打ち”という意味を持つタイトル

──アルバムのタイトル『EVEN BEAT』ですが、直訳すると“平坦なビート”とか“一定のビート”という意味になりますよね?

大坪徹志(Ds):そういう意味にも捉えられるんですけど、曲がだんだん出来上がってきたときに、うちのリーダーの(和田)大樹が、「こういうのどうかなぁ?」って持ってきたんです。EVENって、均等って意味もあるから、四つ打ちという意味にもなるし。あとは4人が出しているビートって意味もなくはないかなって(笑)。だからタイトルは後付けになったんですけど、(今回のアルバムは)タイトル通り四つ打ちが中心になっていて、そこからいろんな方向、いろんな幅、いろんな色にヘアブレの持つ方向が出たと思うんですよ。前回のアルバム(「2000'S★★★★★DISCO」)は“DISCO”って言葉があったじゃないですか? 今回はもっと広い範囲で捉えられると思うんですよ。“○○ディスコ”とか“○○ロック”っていう枠が取れて、四つ打ちってダンスビートの中で、いろんな方向に向いてる。本当にこのアルバムを一言で表現するなら、的確かなって思うんです。

──製作に入る前に“こういう風に作ろう”っていうメンバー内での意志確認はなかったんですか?

吉田大佑(Gu):曲調のテーマみたいなものは特になく、逆にテーマを絞らず、四つ打ちを軸にいろんな幅を出そうと。前のアルバムを録り終わって、そろそろ次のアルバムっていうときに、特に話し合ってはいないけど、お互い共通に感じてたことだと思うんです。四つ打ちを軸にとこまで飛んで行けるかと。

──そこは話さなくても伝わることなんですね。

大坪:それはあると思うんです。例えば今、四つ打ちがカッコいいと思ってバンドに取り入れてるんですけど、そこからもっと音楽を広げようとか、こういうことを試したいと。具体的にいえば“こういう音を使えばどうだ?”っていうのがある。メンバーそれぞれが挑戦できたからこそ広がってきたんだと思います。

──メンバーそれぞれの挑戦と言うと、12曲目の『Filter Boy』は和田さんがこだわりにこだわった1曲だそうですが。

大坪:大樹が“こういうのをやってみたい”というもあったし、みんなもそれに肯定的でしたね。ドラムの音にしても、ほぼ打ち込みみたいな音じゃないですか? あれは実際叩いた上からいろいろ加工してて、ちょっとループとかが重なってたりするんですね。『Filter Boy』は音源ならではの手法というか、音源は音源でライブとは別の形でもいいんじゃないかっていう、みんなの広がった考え方もあってできたと思うんですよね。

“作曲:hare-brained unity”である意味

──アルバムの曲は、どれも作曲のクレジットがhare-brained unityになってますが、どういう役割分担で曲作りは進めてるんですか?

大坪:基本的に誰かが曲を全部持って来ることがないんですよ。そういうスタイルはやったことがなくて。僕らは全く何もないところから、とりあえず「次の曲はどうしよう?」って話し合いから進めていくんですね。“春っぽいの”“冬っぽいの”とか“明るいの”“ちょっとキラキラしたの”とか抽象的な言葉もたくさんあるし。そこから「明るいならこういうコードはどうだ?」とか。「スピード感があるならこういうドラムにしよう」ってコード進行やフレーズにしていくんです。そこに大ちゃんのギターが乗ったり。逆に大ちゃんのワンフレーズがあって、そこから広げていくとか。だから作曲クレジットがバンドになっている意味はあって、やっぱり全員で作ってると思うんですね。

──そういう曲作りをしてると、4人のやりたいことがブレにくいですよね。

大坪:最終的にはまとまってるんですかね? それぞれの捉え方っていうのもあるんですけど。ただ“明るい”っていってもどのくらいなのか、それも試しながら音に出していけば結構わかったりするんですね。

──オケと同時に歌詞も作っていく?

大坪:いや、ないですね。うちはオケが先なんです。基本は布谷(吉崇、Vo&Gu)が詞を全部書いてるんですけど、今回は『Updraft』って大樹との共作もありますね。大樹との共同作はRPGを意識して書いたみたいです。あと『Filter Boy』は大樹が布谷が普段歌わないことを詞で書いてみたって。お客さん視点というか、布谷がこういうことを歌ったら(お客さんは)喜ぶだろうっていうのが狙いだったらしくて(笑)。実際布谷が歌ってみると、そこまでの違和感は不思議となかったんですよ。メロディラインと歌ってる人がいつも通りっていうのもあるし、大樹もそんな的外れなこと書かないし。ちゃんとこのバンドの曲になって、詞になってる感じはしました。

──『Sputnik』は作詞クレジットもバンド名になってますけど、これは?

大坪:夏っていうのと、少年心みたいなテーマがあって。全体に子供の視点ぽいじゃないですか? そういうの思い出しつつ。基本は布谷が中心になるんですけど、俺らが“こういうのはどうかな?”って。普段飛び越せないものを飛び越したいねって話になって、宇宙船とか、人工衛星とかいいんじゃない?って感じで決まっていって。恥ずかしい言葉とか発して、それがボツになったりもしたんですけど(笑)。

──恥ずかしい言葉を発して、それがボツになるのって本当に恥ずかしいですよね(笑)。

大坪:うん。流されます(笑)。「○○とかいいね」って言っても、みんな「あー」ってひとこと(笑)。

──4人で作詞した曲もまた聴いてみたいです。

大坪:やってみたいですね。全員の言葉があったほうが広がりがあって、おもしろいのができるかなって発想もあったんですよね。そのうちまた出てくるかな? 大樹作詞はちょろちょろ出てくると思いますね。

──吉田さんは作詞については?

吉田:曲自体のコンセプトが少々はずしたおもしろさとしてきちんとあるときに、布谷以外の言葉をとりいれるのは新鮮なことだし、手法としてとてもおもしろいと思います。でも、基本的にはボーカルの言葉、布谷のセンスで構築した中で歌ってほしいので、そこにオレが入りたいと思ったり、俺の世界を歌わせるんだって気はないですね。ただ、そういう企画としておもしろい化学反応が起きるかなってときは、今後とも挑戦したいと思ってます。

──布谷さんの歌詞は、4人で曲作りのときに話したコンセプトを基にしたものがあがってくるんですか?

大坪:ある程度はそうですね。シングルはちょうどリリース日が春、夏、冬だったから、サウンドもそういう風になってるし、詞もおのずの季節を反映したものになりますね。その中でも『ORION』だったら、冬の曲だけど明るいじゃないですか? 寒い感じじゃなくて、ちょっとギターとかきらびやかでイルミネーション的だし。切なさもあるけど、前向きだったりする。布谷(の書く歌詞)は基本的にポジティブな詞だと思うんですね。簡単にはうまくはいかないことばかりだけど、前を向いて進もうみたいなのが多いですから。僕もやっぱりそういう詞のほうが好きだし。ちょっと幻想的な月だったり、星だったりが出てくるけど、言ってることは結構現実的なんですよね。夢みたいに“〜になればいいよね”ってだけじゃなくて。

──地に足着いた内容になってますよね。

大坪:そうそう。地に足着いてるんですよ。

──じゃあ、曲ができて、詞がやってきて「こうきたか!!」って驚くことはそんなにない?

大坪:普通に「ああ、いいな」っていうのはありますけど。

吉田:最初のイメージみたいなのがあるし、曲の雰囲気が固まってるので、それを逸脱しないようにこだわってる部分がある。「こうきたか!!」っていうのはないけど、俺たちはオケの段階で音でしかなかった、イメージしかしてなかったから、それを言葉にするという作業を経てもらうと、(曲は)またそのとき完成するのであって。その衝撃は何回やっても慣れないですね。

──曲づくりを人に例えるなら、オケという骨ができて、歌詞という肉がついて人になるという感じですかね?

大坪:そうですね。やっぱり最初のルートやリズムが骨で、大佑のギターとメロディが肉だったり、詞が全体の形だったり。

──それがライブで演奏していくうちに、曲自体の性格ができてくるような?

大坪:なるほど。そうですねー。

──そうやって曲に人格ができてくるって考えると、ライブのセットリスト組むのも野球の打順を組むようなものかもしれませんよね。

大坪:それに近いところはあるかもしれない。同じ曲でも2曲目にやるのと、最後にやるのでは聞こえ方が違うし。いや、ホント野球ですね。4番を何にするかとか。ピッチャーで言えば、変化球とかチェンジアップを入れたり。曲の相性もあると思うんですね。この曲の後だとものすごくスピード感が得られるけど、逆だとちょっともたっと聞こえるからっていうのがあったり。

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