hare-brained unityの15か月ぶりにリリースされる作品は、その名も『RECENT DISCO SYSTEM』。今までもダンスミュージックに特化していた彼らの音楽だけれど、それはロックバンドでありながらもダンスミュージックを奏でるという枠があったように思う。でも、今回のミニアルバムを聴くと、その枠があっさりと取っ払われて、とにかく自由に"踊れる"音楽を追求している姿勢が見えてくる......なんて、難しいことを考えるのは聴いた後! CDをPLAYすれば、体は動きだし、思考は止まりDISCO状態にトリップしてしまうのだから。「自分たちがカッコいいと思うものを作ろうとしたらこうなった」と語るのは、ヘアブレのサウンド作りには大きな役割を担っている和田大樹(Ba)と布谷吉崇(Vo,Gu)の2人。今までのヘアブレから想像していた作品を、軽々と飛び越えた仕上がりに、今、彼らが考えること、彼らに起きていることを洗いざらい聞かずにはおれないのだ!(interview:古川はる香)
自分たちの今の音楽性を表したキーワードが"DISCO"
──まずアルバムタイトルに"DISCO"という言葉が入っていたのに反応してしまいました。前にも『2000's ★★★★★ DISCO』というアルバムがありましたけど、再び"DISCO"と入れたのは、何かの決意の表れなのかと思って。
和田:はい。つけちゃいました(笑)。タイトルにつけてないだけで、自分たちの音楽を「ディスコサウンド」って言ってはいたんですけど。
──タイトルに入ると、ぐっと重みを増しますよね。
和田:そうですね。最初は入れないって話もあったんですけど、まぁ入れてもいいかって。わかりやすくなるし。
──それはMAKAI recordへの移籍後、初リリースという意味で?
和田:それよりは自分たちの音楽性が微妙に変わってきて、前よりダンス色が強くなったので。タイトルだけ見て、聴かなくてもこんなCDだってわかるといいかなと思って。でもそこまで深く考えてなかったですね、"DISCO"って言葉を入れるか入れないかに関しては。
──タイトルを見てから聴くと「お!」って思いますね。今までは四つ打ちであっても音はそこまでピコピコしてなかったじゃないですか? それが今回は、ここまでやるのかと。
布谷:今まではバンドのフォーマットでできるダンスミュージックっていうのを守ってきたというか、そこからはみださないようにしてた部分はあります。今回は大樹がコンピュータでの作業とかいろいろできるようになったので。それを取り入れてみようとしたときに、4人だけの音にしがみつかなくてもいいんじゃないかって気分になったんですよ。おもしろそうなことはやって、カッコよければいいじゃんって。
同じ曲に対して、違う歌詞を思い描くこともある
──今までは作詞:布谷さん、作曲:バンド名義という曲がメインでしたけど、今回は作詞・作曲どちらも和田さんという曲があったり、ドラムの大坪(徹志)さんとギターの吉田(大佑)さん作曲のインスト曲があったりしますよね。そこもバンドが自由になっている表れですか?
布谷:以前は4人集まってリハスタであーでもないこーでもないってやりとりをしながら作曲してたんですけど、大樹がコンピューターベースで作業を進められるようなったりして、今までと作り方が若干変わってきたんですよ。今までの曲も4人がイーブンに関わってきたわけでもなくて、曲によってたくさんアイデアを出したとかそうでもないとか、関わり方に差があったんですけど。今回はそれがわりと顕著になったんです。
──和田さんがずば抜けて大きく関わっているとか?
布谷:そうです。インストの『EViL DANCE』に関しては、僕と大樹はタッチせず進めてましたし。そういう部分をクレジット的にも出したらどうかって。
──『EViL DANCE』は完全に大坪さんと吉田さんが作って持ってきたんですか?
和田:俺、ブース入るまで曲知らなかったですもん(笑)。ヘッドホンつけた段階で「これはねーな」と思いました。あ! 曲がじゃなくてこのやり方がですよ!? だって曲わからないと、弾いてくれって言われても弾けないから(笑)。でも、実際それくらいタッチしてないんです。
布谷:曲について話し合いになったときに、僕と大樹はがんがん言って、結局その意見が採用されることが多いんですよ。なので、普段意見を言わない2人(大坪さんと吉田さん)だけでやったらどうなるか楽しみではありましたね。僕も大樹も全く口を出さないっていうのは。
和田:史上初だからね。
布谷:結果、今までのインスト曲とそこまでかけ離れたものにはならなかったんで。そこはおもしろいと思いましたね。
──7曲目の『ウイークエンド』は、私の中で思い描いていた"今までのヘアブレらしさ"がぎゅっと詰まった曲なんですよ。ストーリー性のある歌詞で、ギターリフがきれいでっていう。このミニアルバムにそういう曲が入っているのは何かあるのかなと思ったんですが。
和田:感じの違う曲を何か入れようってことになって作ったんですけど、俺的には「これどうなんだろう?」って思ってたんですよ。逆に「ヘアブレぽい」って言われないんじゃないかと思って入れたので、意外な感想です。ピアノ全開で、布谷はギター弾いてないし、ドラムも同期と生が同じくらい入っていて、今までの曲とは明らかに違うので。そこに「ヘアブレっぽさ」が残ってると思われたってことは、結局守ってるところはあるんだろうな。
──この曲は作詞も作曲も和田さんですけど、他の人が書く歌詞を歌うのは、布谷さんの中でいつもと感覚が違うものですか?
布谷:大樹が詞を書くのは今までもなかったことじゃないんですけど、『ウイークエンド』みたいにトラック・メロディ・歌詞を全部大樹が作って、僕が歌うっていう形は初めてでしたね。大樹が作ろうとしている感じに近づこうっていうのは意識してました。詞の世界観はできるだけ自分で汲み取りますね。この曲に関しては、歌詞の感じとかは従来自分が書く歌詞に近い気がしたので、そんなに違和感はなかったですけど。
和田:この歌詞もストーリー性があるようで、実は何も考えてないです(笑)。難しい言葉は使わないようにしてるから、1回読めばある程度わかるようにはなってると思うし。布谷の歌詞は結構深いんですよ。だから俺は深く書かない!(笑)歌詞を書く機会は多いんですけど、基本的にはトラック作るほうが楽しいんで。歌詞に重きは置いてないんです。
──でも『ウイークエンド』に関しては、自分で歌詞も書こうって思ったんですか?
和田:布谷が「書いた方がいいんじゃない?」って言うんで(笑)。じゃあやろうかって。
布谷:自分が書いたメロディじゃないし、歌詞まで大樹がやったほうが、おもしろいんじゃないかなと思って。どうなるか楽しみだったんです。
和田:それわかる。今回3曲目に入ってる『ORANGE』はAメロとか布谷が考えたんですけど、おおまかなメロディとかBメロ、Cメロは俺が出してて。そのときに「俺ならこんな歌詞だな」っていうのがあるじゃないですか?
──やっぱり「俺なら」っていうのがあるんですね。
和田:普段はコード進行から入るのに、『ORANGE』は珍しくサビの入り口から作ったんですよ。鼻歌状態の。鼻歌なんで、なんとなく乗せてる歌詞があったんですけど、実際歌詞があがってきたら全然違ったんで「なるほどー」と思って。
──布谷さんも『ウイークエンド』に関して「俺ならこうする」って考えが?
布谷:僕はもっと軽い感じとか、さらっとした歌詞になるのかなと思ってたんですけど、わりと人が抱える切なさや悩みが入った歌詞だったんで意外でしたね。
──同じ曲を聴いても違うこと考えるものなんですね。
布谷:逆に『ALIVE』は、「サビをどうする?」って話になったときに、僕と大樹がそれぞれ考えたものを持ちあったんですけど、それがほとんど同じだったんです!
和田:そういうこともあるんですよね〜。本当にびっくりしました。「そうだよねー、そんな感じなんだよねー」って(笑)。
──音だとイメージが重なって、歌詞だと違うってことなんですかね?
布谷:どうでしょうね。今回はたまたまそうだったのかも。今後同じ曲を聴いて同じ歌詞を書くことがあるかもしれないし、メロディが全然違うことになるかもしれないし。それはわからないですね(笑)。
128BPM縛りをコンセプトにしたのは必然だったのかも!?
──いろいろと自由な感じではありつつも、アルバム全体に"BPM=128"って縛りがあるんですよね? そこだけ縛りをつけた意味は何ですか?
和田:ミニアルバムってコンセプトがあったほうがいいかなっていう勝手な思いで。曲調じゃなくて、BPMで縛ってみてらどのくらいやれるのかなって。曲作ってても、結構そのテンポが好きだったりしたんですよ。自分内ブームというか(笑)。それでミックスCDみたいに、プレイボタン押したらずっと同じリズムで聴けるようになればいいなって。
──聴きやすいですよね。アルバム1枚テンポが同じって。
和田:今までもだいたい似たり寄ったりだったりしたことはあるんですけど、全部一緒っていうのはなかなかね。同期モノだからずれることもない。規則的な感じでおもしろいかなって。僕、DJもやるんですけど、DJのときは同じテンポにしちゃうでしょ。だからテンポを合わせることに全く違和感がない。
──最後まで聴いたときに、リミックスアルバムっぽいなと思いました。
和田:曲の流れとか繋がりとか、結構意識するんですけど、今回は極度に意識してますね。リミックスCDみたいな流れを、バンドとしてできる限界までやってみた感じです。CDだとクロスフェードに曲が重なるとかできないんですけど、そこもギリギリのところまでせめて。
──1曲目の『Prologue』と2曲目の『ALIVE』の繋がりとか、すーっと来ますよね?
和田:あれ0秒なんですよ。びったりくっついてる。でもテンポが一緒だから流れていく感じになってるんですよね。2曲目の『ALIVE』と3曲目の『ORANGE』の繋がりは普通2秒とか入れるところ、キック2発分っていうリズムで区切ってます(笑)。好きなんですよね。繋がり方考えるのが。
──それもDJやってるからなんですかね?
和田:普段のライブでもやってるんですよ。
布谷:「ここ繋がらないけどどうする?」とか話すね(笑)。
──「この曲とこの曲繋げるにはどうしよう?」って話になったり?
布谷:そうです。だから今回のアルバムでBPMそろえるっていうのも違和感なかったですね。ライブで「この曲とこの曲のテンポ違うのが残念だよね」って話になることのほうが多いんで。
──ライブで既存曲のBPMを変更して繋げちゃうことってあるんですか?
布谷:作ってしまった曲のテンポを変えちゃうと、良さが薄れるんですよね。これが不思議なもので、DJだとそんなことないと思うんですけど。
和田:ライブでどうしても繋がらないときは、インスト挟んでみたりします。あとは「ここはどうしても繋がらないけどこの順番がいいから、MC一言!」とか(笑)。一言入れて次の曲に行ったり。
布谷:びっちり繋がらないけど、あんまり開けたくもないってときは、一言二言喋って次にいくみたいなことありますね。
和田:他のバンドだとあんまりないでしょうねー。
布谷:昔からテンポに対してそういう感覚があったんで、今回こういうコンセプトになったのは、必然と言えば必然だったのかもしれないですね。