聴く人によって思い出が思い起こさせる曲の力
──“黄昏”という言葉は秋のしんみりしたイメージがあるんですが…。
枝松:僕らの中では“切ない”の代名詞で使っていて、でも『tasogare』っていうアルバムの中身はしんみりした曲ばっかりじゃないよ。この8曲を通して“黄昏”を感じてほしいっていうことですね。
堀内(Drums):聴く人によって特定の季節だったり思い出だったりが思い起こされる曲。思い出だったり経験だったりを歌に重ねて思い起こさせる力がある。そういうのが強いんですよ。
──『ガーデニア』(M-8)もそうですね。その人の心境によって変化する曲。聴く人の経験と曲が持つイメージがうまくリンクすると、聴いた人がワーってなる。
尾崎:ワーってなる(笑)。
──女の子は小説とか物語が好きなので、まず女の子が好きそうな詞だなって思いました。小説の主人公に自分を当てはめてみたりとかするので。
枝松:制作者の意図としては曲に自分をおいてもらったりとか、情景が呼び起こされたらいいなと思って作ってるから、そういうふうに聴いてもらえたら嬉しいですよ。センチラインの曲は楽曲もさることながら、内容にも深く入っていって欲しいです。
──私が洋楽を一切聴かないし、英語もできないので日本語で意味が伝わる曲が好きなんです。
枝松:僕も一時期それであんまり聴かなかったんです。意味わからんって。
──『手紙』(M-4)も「拝啓」で始まって、日本人らしくてすごい好きなんです。最近手紙って書かないですけど、この曲を聴いたら書きたくなりました。
枝松:手紙を書くという行為自体が気持ちを伝えているようなものなんです。めんどくさいじゃないですか。便せん選んで書いて送って届くのを待つという行為をすること自体が手紙のいいところなんです。
──彼女を思う気持ちとかメロディーもあったかくて。
枝松:鍵盤やアコースティックギターが入ったのもあったかくなった要因かな。歌詞はなんとなく手紙を書いてみたっていう曲だったんですが、気持ちを書いたりしたら普段は忙しくて会えなかったりするけど手紙を書いてまで伝えたいことがあったんやなってすごく思いました。
──最近は全部メールで済ませちゃいますからね。あと、鍵盤の音が入るだけでだいぶ変わりますね。
枝松:深夜のテンションで書いてるんですけど、ローズ(鍵盤)が入ることによってより深夜になった。いろんな効果がある。録音に関しては手紙が一番好きなんです。音がいい。
尾崎:他の楽器の音色もメロとか合うようにやさしい音にしたりとか。
枝松:あと音がいいのは『FREE WAY』(M-3)。サウンドが豪華なんです。
──豪華!?
河相:ギラギラしてるしキラキラしてるし鮮やか。
──「行くぞ!」っていう感じは充分に伝わりましたが…。
枝松:内容もそうやし、派手な感じ。それをa?たぶん俺等は豪華って言ってる。アレンジもすごい豪華。お腹いっぱいになるかんじ。
──3曲目でお腹いっぱいにさせたらダメですよ(笑)
枝松:そうや、そりゃいかん。お腹いっぱいになったらあかん。まだまだ残ってる。
──(笑)豪華になったということは、時間かけて作った曲なんですか?
枝松:『FREE WAY』はそんなに時間かけてない(笑)。
河相:なんでやねん(笑)!
枝松:できてみたら豪華やった。
堀内:1曲目に録ったわりにすんなり録れた。のびのびとできたっていうのもありつつ、そんなかんじに聴いてみたらキラキラした感じが出た。
──勢いある詞が今のセンチラインですね。
枝松:「センチラインについてこい」というようなことも書いてるんですけど、今までのセンチラインにはなかったポップさが出ている。歌詞の内容的には遠回りして見つけた道とか自分らの目の前にある道は自由だよ。どこにでも行けるんだよ、と。それは8曲の共通のテーマである悩んでいる君とか、そんな君を引っぱってやるっていう感じです。でも基本的にはグイグイ引っぱってくことを考えてはいないんです。聴く人と僕らは常に同じ位置にいたいと思ってるんです。そうじゃないと説得力がないときもある。そんな中でたまにはリードしないと…(笑)。
──バンドの中でリードしているのは?
尾崎:枝松ですね。
枝松:ひっぱってるというよりは「付いてきてくれよぉ」みたいなところはある。一緒に上がって行けたらって思ってます。でも引っぱってますね。僕が引っぱらないと誰も引っぱらないですもん(笑)。全部は引っぱって行けない。音楽面では僕が引っぱってます。