「黄昏シリーズ」と銘打ち、2006年5月〜9月まで5ヶ月連続でシングルをリリースしたセンチライン期待のニューミニアルバム『tasogare』。8曲それぞれが短編小説を読んでいるようで、温かくもあり切なくもある物語の数々は聴いている時の心境や状況が重なると、この物語をよりリアルに浮かび上がらせる。センチメンタルなメロディーラインが好きと言っていたセンチラインのファーストにして、今のセンチラインが詰め込まれたベスト集となった『tasogare』が多くの人に届けば良いと心から思う。(interview:やまだともこ)
ある意味ベスト。2年間悩み、もがいた末に生まれたニューアルバム『tasogare』
──Rooftop初登場になるので、バンドの成り立ちから今に至るまでを簡単にお話してもらえますか。
枝松(Vo.&Guitar):2001年の夏ぐらいに大学のサークルでメンバーを集めたんです。それで、僕がテープとかMTRとかに録ってたデモをみんなに渡してやっていけそうやなというところが始まり。偶然にこの4人が出会ったという感じ。ライブハウスに出るようになってからは、デモのCD-Rを無料配布してガンガン配ってました。それから『僕の住む街』(2004.6.9リリースの1st.マキシシングル)を録って、すぐに次を出したかったんですけどバンドの方向性がちゃんと定まっていなかったのと、力不足を実感したというか波に乗っていく力がなかったんです。
尾崎(Bass):どんな曲を作っても納得いかないって言う時期が続いたんだよね。
枝松:実際、「黄昏シリーズ」の『WALL』とかは『僕の住む街』の直後にできたんですけど、こういう感じでいいのかなっていう迷いがあったんです。『僕の住む街』に入っている『sun grow』が僕らの中で出来がよかった曲。それを越えないとって思っていたんです。
尾崎:自分達でハードルを設定したという感じです。
枝松:『sun grow』より良くないから出せないって。“伝えていく”ことに対して今ほどは整理がついてなかった時期で、でも活動は途切れさせたくはなかったのでライブやイベントをやって、バンドとはなんぞやというのを探していたんです。それでイベントの回を重ねていった時にいろんなことがみえてきたんです。例えば、音楽っていろんな捉え方があるけど結局は人と人とのコミュニケーション。僕らの音楽はメッセージ性が強く、話をしているような感覚で作っているんですけど、それでいいんじゃないかって。ステージに立って目の前にいる人と話をしたいんだっていう曲があるんですけど、そこに『僕の住む街』以降の2年間のことが繋がったという感じです。
──「黄昏シリーズ」を出して状況が変わったりしました?
尾崎:お客さんが増えたっていうのはありますよ。あと、ライブに対する意識も変わったような気がします。
枝松:自分の中で変わったことの方が大きいかな。
河相(Guitar):もっと成長したいとも思ったし。
──毎月CDを出すって大変ですよね。
河相:ライブ無料券を入れていて、ライブに来てくれる機会を増やすために1ヶ月に5・6本ライブをしたのは初めてだったので、5ヶ月続いてライブ的に成長してる反面しんどかった(苦笑)。あとで思ったけど、この5ヶ月すごい早く終わったなぁ。
枝松:リリース毎に周りのプレッシャーが大きくなっていくような感じはしてましたね。ライブがんばらんととか、お客さん増やさんととか、そういうプレッシャーは大変でした…。
“黄昏”をテーマにした統一感
──そこで「黄昏シリーズ」の5曲も入ったニューアルバムの『tasogare』がリリースされますが…。
枝松:ある意味、ベスト状態になってしまってますね。
──『tasogare』自体はどれぐらい時間かけて作ったんですか?
枝松:『僕の住む街』が出て、新しい音源を作ろうってなってから録ってたので2年ぐらいになります。
──でもその2年の間も、目指していた方向が一緒だったというか、統一された曲の流れが出来てますね。
枝松:そうかもしれないですね。『tasogare』以降に作った曲はどんどん変化しているんです。でもそれまでの2年間って悩んだり葛藤を繰り返したりして、いい意味で統一感のある曲が並んでいるのかなって思うんです。だからそこに入っている8曲も違和感なく聴けてるのかもしれないですね。ある意味違和感ない“黄昏”をテーマにした統一感があるんでしょうけど、今後はもっと変化に富んだものができたらいいなと思いますよ。
──全曲ともメッセージ性が強く、通して聴いてみて情景が浮かぶ歌詞が多かったです。
枝松:そういってもらえるのが嬉しいんです。僕はTHE BOOMが好きで歌聴いてるだけで情景が浮かぶので、その感覚で聴いてる人が受けてくれているのならば、すごいことだなって思います。そういうのを目指したいっていうのもある。
──歌声と楽曲もバッチリ合ってますしね。
枝松:自分で作った曲というのは自分が一番合うって話を聞いたことがあるんですけど、そうなのかなって思いますね。音楽はいろいろ聴くんですが、作るとなるとこういう感じの曲しか作れないんです。今は山下達郎さんにハマっています。洋楽は昔はすごく聴いてたんですけど最近はあんま聴かへんくなりましたね。
──ご自身が作る曲は日本語というのが根底にあると思うんですが、それって達郎さんの影響とか多少は受けてるんですかね。
枝松:まだ影響は出ていないんですよ。達郎さんぽくしたいとは思うんですけど、たぶん今のセンチラインを聴いても達郎さんっぽくていいっていう人はたぶん誰もいない(笑)。
──やっぱり日本語の詞がいいですよね。では『intoroduction』(M-1/「黄昏シリーズ」第2弾)は本を開いたときのような感覚でしたが狙って1曲目にされたのですか?
枝松:はい。『僕の住む街』から時間があいてしまったので、始まりの曲という意味でもあるこの曲を最初に入れようって。詞は聴いてくれる人みんなに当てはまるように書いてますけど、今のセンチライン含めっていう感じです。
──開けた感じがしますもんね。でも、2曲目の『season』は詞を読みながら聴いてると、泣きたい気持ちになるんです。
枝松:本当は経験したことのない恋愛のことを書こうかと思っていたんですけど、そこまでイメージが湧かなくて悩んで、やっぱりホンマにあることしか書けないなと思って作った曲なので共感を受けてくれてる人は、そういう経験があったのかなーって(笑)。
──うっ…(苦笑)。で、、、でも聞いてる側がこんなに切なくなるんだから、その時の気持ちを今も歌うっていうのは切なくならないのかと思うんですが…。
枝松:やっぱりそう思いますよね。言うたら、過去の話やもんな。それをリアルに思い出しながら歌うのはけっこう…。でも辛くはないですよ。『season』を歌うときは、過去の自分とだぶらせるというよりは、ひとつの物語としてみんなに伝えているような感覚で歌ってることが多いかも。過去を思い出して歌うのも辛いから(笑)。
河相:余談ですけど『season』はシュガーベイブの影響がギターに出てるかな。
枝松:『season』作ってるときって、70年代や80年代のバンドサウンドをかっこいいなと思って、グルービィーな感じが出せてますね。でもやりすぎないようにマネにならないように。
河相:実際は狙ってるわけでもなかったもんな。
枝松:今の俺ら。この先はもっと違う形にも変化していきたいんです。