次回作は是非“妖怪百人会”で!
──今回の映画では、「妖怪肉玉の巻」がストーリーの基軸となっていますね。ガン細胞のように分裂を繰り返し、人型を成して襲い掛かる生ける死肉“肉玉”を操るギョロリと対峙するという。
増子:映画の“肉玉”は『仮面ライダー』に出てくる怪人みたいな感じでちょっとコミカルなところもあって、余りグロくないですよね。原作の漫画はもっとグロいし、「クサイ!」って言うのがよく伝わってくる絵じゃないですか?(笑)
楳図:ええ。“肉玉”を描いていた時は、目一杯強烈なグロさで描きましたよ。できたら原作の漫画のほうも読んで頂いて、映画と合わせて理解してもらえると嬉しいですね。映画のほうはもうちょっと口触りをよくした仕上がりですから。
増子:言ってみれば、映画は井口 昇監督によるトリビュートですからね。
──井口監督は、昨年劇場公開された『楳図かずお 恐怖劇場』の一篇、『まだらの少女』も手掛けていらっしゃいますし、楳図作品への思い入れはとても深い方ですよね。
楳図:ええ、ありがたいことに。井口監督の体つき自体が“肉玉”の親玉みたいですよねぇ(笑)。
増子:もし今後続編が作られるとしたら、俺は妖怪百人会(普通の人間を捕らえては醜い姿に変えていく、世間から疎まれた奇形集団)が出てくる「小人の呪い」を是非映像化してほしいですね。俺はあの話、もう大ッ好きなんですよ!
楳図:ありがとうございます。そこのところを大きく太字にしてもらって(笑)。円谷さん、お願いします!(笑)
増子:ははは。妖怪百人会は小学生の時に読んで、もう怖くて怖くて。内蔵がボロボロ落ちてくるあの最後のシーンを是非実写で観てみたいですよ!
和尚:俺も実はそう思ってたんですよ。『猫目小僧』が実写映画化されると聞いて、どの話になるのかと思ったんですけど、てっきり妖怪百人会かなと思ったんですよね。まぁ、これからどんどん『猫目小僧』が発展していって、一番いいタイミングで妖怪百人会をやればいいですよね。
楳図:うん、それは言えてますよね。
増子:妖怪百人会をやるって話になったら、映画に出たいっていう役者さんは山ほどいると思いますよ。夜中のドラマとかでも面白いだろうし。俺がもし大金持ちだったら、先生の全作品をひとつ残らずドラマ化して毎晩放送ですよ、ホントに!(笑)
楳図:じゃあ、タイトルは『楳図放送局』にしましょうか?(笑)
増子:いっそのこと楳図作品専門の放送局を作っちゃったりして! いや、それくらいやってもバチは当たらないですよ!
──こうして映画になることによって、楳図先生の作品が若い世代にも幅広くアピールできることが大きな利点のひとつですよね。
増子:そうだね。入手困難な作品が手に入りやすくなるからね。あと、俺が大好きなオモチャだよね。今までもいろんな猫目のオモチャがあったけど、今後映画がシリーズ化にでもなればもっとアイテムが増えていくだろうし。
楳図:そうですよねぇ。じゃあ、妖怪百人会がオモチャになった時は100体? 制作会社がヒーヒー言いますよ!(笑)
増子:前にフルタ製菓から出た食玩(『20世紀漫画家コレクション ~第8弾 楳図かずおの世界~』)も凄く出来が良かったですよね。あれも全部集めましたよ。シークレットの、給食を独り占めする関谷のおっさん(『漂流教室』の登場人物)まで。中でも『笑い仮面』のススムが最高でしたね。ススムをまさかこの手で触れるようになるなんて、子供の頃の自分に戻って教えてやりたいですよ、あり得ねェぞ! って(笑)。
楳図:ああいうのは僕、何回も何回もしつこくチェックするんですよ。やっぱりしぶとくチェックしないと、作る人によってクセがありますからね。
楳図先生、浅草ジンタのPVで監督デビュー!
──そんな映画『猫目小僧』の主題歌「あしゅらの道のまん中で」は、和尚率いる浅草ジンタと楳図先生が歌と演奏でコラボレーション、怒髪天から増子さんと上原子友康さんが合唱で参加しているという、これまた豪華な共演が実現しましたね。この曲は映画のラッシュを観てインスパイアされたんですか?
和尚:いや、曲を作った時は(映画を)観れてなかったので、原作の『猫目小僧』からイメージを膨らませて作り上げました。猫目小僧が闇夜の中を歩いていくシーンがパッと浮かんで、猫目小僧と自分と人間と、みんなに共通してオーヴァーラップする部分を曲の中で重ね合わせてみたんです。
楳図:いやぁ、ホントに恰好いい曲ですよね。凄くシブいし…演歌ロックって感じかな? 独特で味がありますよね。
──しかも、この「あしゅらの道のまん中」のPVは楳図先生自ら監督を務めていらっしゃるんですよね。
楳図:ええ、そうなんですよ。最初に大雑把に「こんな感じで」ってスタッフにお話しして、専門の方にコマ割りをやって頂いて。現場に行くとまた色々と状況が変わってくるので、その都度臨機応変に対処しながら撮影していきました。みなさん、お芝居でなかなかしっかりと動いてくれまして、これならもっとお芝居の入ったビデオがいいなと思いましたね。歌の世界と映像が余りピッタリ重なり過ぎても面白くないと言うか、唄ってる内容と実際の映像の落差があるんだけど、どこかで微妙に繋がっている…くらいのほうが観ていて面白いと僕は思うんですよ。浅草ジンタの音楽を好きな方はもちろんこのビデオを観てくれるでしょうけど、そうじゃない人達にももっとアピールしたいんです。それには、その歌に関係なく面白いビデオにしたかったというのがひとつ。もうひとつは、浅草ジンタのメンバーはみな個性的な顔触れなので、それぞれのキャラクターをちゃんと出したいというのがあったんですよね。ここが一番大きな狙いだったんです。だから、思い切り狭い所を無理矢理走ってもらったりとか、かなりムチャクチャな動きをしてもらいたいと要求しまして(笑)。あとね、和尚が恰好良く映るシーンは絶対に入れたいと思ってました。
和尚:撮影自体は短く時間だったんですけど、俺達は凄く楽しかったんですよね。撮影をしたのは浅草にある今戸神社という所で、招き猫発祥の地として知られているんですよ。
増子:そうなんだ。あのPVは凄く良かったよ。猫目小僧が出てくるバランスもちょうど良かったよね。余り出ちゃうのももったいないと思うし。
──確かに、猫目小僧が出てくる寸止め加減が絶妙ですよね(笑)。
楳図:そう、最初はもっといっぱい出てたんですよ。仰る通り、余り出ちゃうと驚きがなくなるからそこは抑えたんですよね。
増子:あのPVを観た人が「おッ!?」と思って、最終的に映画を観てくれたらそれが一番だから。
楳図:そうですよね。あの短い時間の中で、浅草ジンタは出てるし、浅草の風景もあるし、お寺も出てるし、猫目小僧も出てるし…四方八方に展開しているから、単純に幅が4倍になるじゃないですか。
和尚:先生は撮影の段階からそういうことを考えて、多面的に楽しめるものを作ろうとしていましたね。先生はとにかく朝から元気で、「こうやって走るんだよ!」って先生自ら全力疾走してましたから(笑)。
楳図:やっぱり、口で言ったってなかなかうまく伝わらないですからねぇ。
和尚:先生を真似して、ウチの非力とバター犬が全速で走ったら思い切りコケたんですよ(笑)。
楳図:あの場面は、だから画面もちょっと揺れてるんですよね(笑)。そのコケたところに“バタッ!”って文字を入れたら面白いかなとも一瞬思ったんですけどね。浅草ジンタのみなさんは本当に呑み込みが早くて、こちらの思う通りに動いてくれたからやりやすかったし、凄く楽しかったですよ。なかなか勘がいいし、特に和尚はお芝居が上手なのがよく判りました。
和尚:そうですか?(照笑)
増子:和尚、こりゃ俳優デビューだ! まずは妖怪百人会からだね(笑)。