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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】テルスター(2006年5月号)- 決意はあるのか?

決意はあるのか?

2006.05.01

2006年5月、テルスターは結成10年を迎える。その中で自分達が確実に掴んできたもの、感じてきたものを凝縮して作られたミニアルバム『ある決意』が5/17にリリースされる。「何度でも 這い上がるもんだろう」と詞の中で言っているように、紆余曲折しながらも続けてきたテルスターが更なる一歩を踏み出したと感じ取ることができる。素直でもあり、でもやっぱりひねくれてるところもあるテルスター、そして作詞作曲を手がけているベース&ヴォーカルの横山マサアキというイチ人間が見えてくるようでもある。
今回は、パーソナル像も含めてインタビューを敢行した。「僕は僕として生きていく決意がある」と言った横山さんの言葉がすごく力強くもあり心強くもあった。最高の作品がここに完成!(interview:やまだともこ)

自分が自分でいる自信がついたのかもしれないです

──今年で結成10周年を迎えられるそうですね。

横山:めでたく10周年。この10年間着実に歩んでこれたんではないかと自負しております。年齢的にも社会的、経済的にもバンドを続けていくのは難しい作業だと思いますけどね。信じて続けられて来れたことも、10周年でミニアルバムを発売できるってことも非常に嬉しいです。

──10周年の節目に『ある決意』というタイトルの作品を出したということ事が、テルスターにとって核となり、新たな一歩を歩き始めたっていう決意を含めたアルバムなのかと思ったんですが。

横山:メンバーチェンジもなく、これからもガシガシ音楽を続けていこうっていう決意もあります。自分の作品やライブに対して責任を持ってやっていくぞ、これからもまたがんばりますよっていう気持ちが込められてますね。

──『ある決意』を聞いて、やられても這い上がる力強さを感じました。

横山:バンドを続けていくと紆余曲折あって、調子のいいときも悪いときもあるし、拍手喝采を浴びる時もあれば完全に無視されるときもあるし、それでもやってきたっていう自信がそうさせるのかもしれないです。自分は強いと思ってやってないですけど、続けてるということがそういうことなのかな。

──前の『心ふるわせたこと』はストレートになったと言われてましたが、今作は全体的に腹を括ったという印象を受けました。

横山:ふてぶてしくなったってことですね(笑)。嫌われてもけっこうじゃないですけど、自分達のやってる音楽の価値っていうのがわかったので。聞いてイマイチだと思われても、それはそれでそういうもんだろ、と。でも自分達は自信を持ってやっているっていう意味での堂々とした感じっていうのは、これまでバンドを続けて掴んできたものなのかな。物言いは変わってないと思うんですけど、言いきっちゃったというか、堂々としてる感じは出てるんじゃないかと思いますけどね。

──バンドをやってきた時間の中で多くのものを悟ったと…。

横山:おじさんになったってことですかね(笑)。なかなか続けていかないとわからないこともいっぱいあるので、そういう意味では着実に成長をしているということでは自分達でもいいなと思いますよ。

──他のメンバーの方も10年間一緒にやってきてるというのは同じ気持ちなんでしょうね。

横山:メンバーそれぞれバンドもやってますけど、ただバンドをやるってことだったら自分のバンドをやればいいわけであって、テルスターである意味、テルスターとして音楽をやる意味をみんな掴んでやってくれてるんじゃないかなと思います。テルスターは僕がリーダーで、詞も曲も自分で書いて歌ってるんですけど、世界観をしっかり理解してもらえてれるからこそじゃないかと思いますね。バンドって不確定な要素があまりにも多いけれど続けてこれたのはありがたいです。そういうありがたさを受け取って自分自身でいられるというか、堂々と音楽ができる形になったんじゃないかと思います。今までが序章でここからが第一章。やっとスタート地点に立てた感じです。昔は音楽をやるにあたってコンプレックスとかあったけど、音楽が楽しいとか好きだって向き合えるようになったっていうのは人間的にも成長したのかなっていうのは思いましたね。スッとした気持ちで音楽ができます。

──音楽に感じてたコンプレックスって何ですか?

横山:自分がいいなと思うものを出しても人は素直に受け取ってはくれないよ、他人だからってことですね。根本的には信じてたかもしれないけど、自分のスタンス的には分かり合えないものなんだよっていうドライなところがあってはぐらかしてしまう。ホントはこうしたいんだけど、こんなもの誰も欲してないだろうという、バンドも見に来てくれてる方たちもうたぐりの目で見てたんです。

──本音をぶつけてなかったってことですか?

横山:ぶつけてなかったわけじゃないですけど、諦めてたし自分も音楽をナメてたと思うんですよ。どうせ伝わらないんじゃないかって。今は情熱みたいなものを取り戻せたのかな。

──何で取り戻せるようになったんでしょうね。

横山:今までは、こうやったら気に入ってもらえるんじゃないかとか理解してもらえるんじゃないかってのを計算しながら音楽を作ってたけど、それがどうでもよくなって俺はこう思ってるんだよ!ってやったら初めて人が理解を示してくれた。コミュニケーションする自信がついたのかもしれないですね。好きなように素直に言ったら素直に愛情をいただいたので、これは取り繕わなくても大丈夫なんだってってことで、音楽しかり人とのコミュニケーションしかり変わってきたんだと思います。

──計算しても伝わらないときは伝わらないですからね。

横山:自分が作る音楽も自分自身の魅力も自分では永遠にわからないみたいで、一生懸命考えて作ってもわからないだろうな。だったら自分が気持ちのいいやりかた、自分がこうだったらいhいいなってのをそのままやれば伝わるんじゃないかなと。大人になったのか子供になったのかはわかりませんが、幾分ワガママになったのかもしれないですね。そういう意味で腹を括ったというか、僕はこういう人間でこういう音楽を作ってますよっていうことを堂々と言えるようになった。自分が自分でいる自信がついたのかもしれないですね。

最高の音楽ってのが出来ていてそれに近づきたい

──「どうせ」の横山さんだったら、『孤独が匂うのだ』(M-1)にある「何度でも 這い上がるもんだろう」って歌詞にはならなかったかもしれないですね。

横山:そうですね。這い上がってもどうせまた落ちるんだろうっていう言葉になってたかもしれないですね(笑)。でも這い上がろうと素直に言い切れる人間になったのかもしれないですね。

──だから伝わってくるんでしょうね。

横山:いいミニアルバムが作れたと思いますよ。自信があります! 非常に。自信というか「コレです! どうだ!」って。前は「ここはこうで」って説明してたけど、今回は説明がいらない! ラーメン屋で例えるならば、今までお客さんにこういうラーメンを作ったら気に入られるだろうなって思いながら作っていたのに全然反応がない。最後、自分が一番うまいと思うラーメンを出したら素直にオイシイって言ってくれたみたいな(笑)。

──…なんでラーメンに例えたのかがわかんないですけど(笑)。全身でぶつかれば全身で返ってくるってことですね。

横山:全身で引かれることもありますけどね(笑)。ドン引きもありますよ。そういうダイレクトな感じで関係性もいきたいなと。小出しにしてくんじゃなくて、100%でぶつかって気持ちよくやりたいなと思いますね。音楽にしても人間にしてもコミュニケーションの仕方が変わってきたのかもしれないですね。

──前は横山さんってもっと話しづらい人だと思ってましたもん。

横山:よくしゃべるようになったんですよ。そういう意味でも明るくなったと思いますよね。自信がついたからかもしれないです。例えるなら、「整形して自信がついて自分からアタックするようになりました」っていう女の子みたいな感じですかね。

──………はい。…あとサービス精神が旺盛ですよね。普段の会話からも人を楽しませるっていう気持ちがある方だと思うんです。それが曲にも出ていて、弱い部分とか強い部分を言ってる曲なのに、その曲をいかに楽しませて聞かせるか。『決意はあるのか?』(M-2)で特に感じました。

横山:自分の感情をぶつけるっていうのも信じてますし、3分間というコンパクトな時間の中でいかに聴かせるかというのも魅力じゃないですか。でも、ポップスの中で歌ってる内容もただ楽しいっていうのはイヤなんです。そういう意味では自分で言うのはなんですけど、サービス精神は多いほうなんじゃないかとは思いますよ、音楽的には。こうやったら楽しんでくれるんじゃないかっていうのを前提に音楽を作ってるのかもしれないですね。

──この詞だったらドロっとしてもおかしくないですもんね。

横山:僕はミュージシャンシップのあるミュージシャンではないので音楽で死ねないんです。人と人の間で死んでくんだったらいけど、音楽では死にたくない。音楽は最終的にはコミュニケーションのツールであって、音楽そのものが好きじゃないのかもしれないです。だから自分の中で大切にしているのはキャッチーでポップな曲だと思うんですよ。人によってポップの捉え方は違うと思いますけど。あと自分が中学生の時に音楽の初期衝動を受けた時の僕を感動させたい。ミュージシャンって2通りいると思うんです。ひとつはいろんな音楽を聞いて影響を受けてどんどん伸びていくアーティストと、最初の初期衝動があって、それをたまに掴めたり掴めなかったりして音楽をやってるって人。僕は後者のゴールが見えている方だと思うんです。自分が感動する瞬間って何回かあるんですけど、それを何回掴めるかどうかっていうのが僕の中で音楽をやる意味であって、中学生の時に音楽を聞いてワクワクした感覚をどれだけ自分の中で再現できるか。だからこういう音楽に興味があって取り入れていきたいんですっていうのは今までなかったですね。どれだけあの瞬間に近づける音楽を作れるかどうかっていうのが目的だと思うんですけどね。

──いつまでたっても完全なゴールはないってことですね。

横山:僕の中で最高の音楽ってのが出来ていてそれに近づきたい。そういう価値観は15年ぐらい変わってないですね。

──今回それがアルバムに出せた。

横山:一番近いんじゃないかなと。自分でもやってて感情も込められるしいいと思いますよ。

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