1月から始まったテルスター"LOFT CIRCUIT 2010"は、早くも後半戦にさしかかっています。新代田FEVERを入れて、ここまでの4公演を振り返り、改めて多くの方に恵まれて15年も続けてこれたんだと噛みしめている様子。15年間で爆発的に世界を震撼させたということはないけれど、テルスターの音楽を聴いたり、ライブを見たりした人の小さな幸せのひとつになっていたら、それだけで充分にやってきて良かったと思えることなのだと思います。以前横山は「続けることが素晴らしいことだとは思わない」と言ってましたが、続けてきたからこそ得られたものもたくさんあるんだということは、これまでのイベントでもこの対談でも感じることができました。
そして、今回テルスターが単独でプラスワンのステージで喋るのは初となります。店長の宇空氏からアドバイスももらい、阿佐ヶ谷ロフトAでの経験も生かし、今度はどんなトークを聞かせてくれるのか!! 未知であるだけに、どうなるのか予想もできませんが、楽しい一夜になることは間違いなしです。(text:やまだともこ)
愛されていると、しみじみ感じている
──1月20日の阿佐ヶ谷ロフトAから始まり、2月9日には下北沢シェルター、その間に新代田FEVERがあり、"LOFT CIRCUIT 2010 "は、ちょうど中盤戦を越えたあたりですけど、やってきてどうですか?
横山:本当にたくさんの応援してくれる方に恵まれて、改めてテルスターは愛されているんだなって、しみじみ感じるようなイベントが続いて楽しいです。阿佐ヶ谷ロフトAのイベントでは、昔の映像を出したりしましたが、こういう時期を経て今があるんだということを噛みしめた一日でしたね。FEVERでは仲良くさせてもらっているバンドからお祝いをしてもらい、僕らの曲のカバーまでしてもらったんです。
宇空:ステージ上で横山くんが、ウルッときていたというウワサを聞きましたよ。
横山:自分でもまさかの出来事でしたが、素直になったということですね。シェルターではセックスマシーンとの2マンだったんですが、セクマシは僕たちを昔から好きでいてくれて、影響を受けたと言ってくれているんです。そういう意味でも僕たちが作ってきたものを受け継いでくれるバンドが少しでもいて、それもまた感謝だし嬉しいなと思います。
──そして、ついに後半戦のプラスワンですが...。バンド単体でプラスワンでイベントって、あまりないですよね?
宇空:うちでやってる人って、大槻ケンヂさんや怒髪天とか、曽我部恵一さんとかヴィジュアル系のバンドとか、ライブ以外のお楽しみ会的なノリができる人なんです。でも、そういう人たちが残っていくんじゃないかと思う。バンドの人で、MCも苦手な人はうちでは無理だろうから。
──トークをやってきたバンドを見て、アドバイスってあります?
宇空:進行がざっくりで良いのであったほうが良いと思います。あと休憩は欲しいですね。その時間がわかってるとありがたいし、だいたいこういうことをやりますとか、この人が出たらこの出ばやしとかにすれば"会"っぽくなる。
──阿佐ヶ谷でのイベントの時はタイムテーブルがありながら、4人中3人がすごい喋るので脱線して、予定していたトークがけっこうカットされたんですよね。
横山:喋り出すと収集がつかないんです。誰もまとめないし。
宇空:そうなると、タイムキーパー的な人は必要かもしれませんね。でも、4人中3人喋れるって珍しいね。レコ発とかでトークをやらされてる感があると、たまに喋りたくねぇなというのが伝わる時がありますからね(苦笑)。
16年目のテルスターをプロデュース
──プラスワンでのイベントでは、FEVERで各バンドがカバーしてくれたテルスターの曲が入ったCDがプレゼントされるんですよね?
横山:はい。各バンドのファンの方も楽しみにしてもらえるんじゃないかと。プラスワンの後はロフトでファイナルのワンマンなので、ここでもうひとワッショイしてもらって、ロフトに繋げられたらなと思っています。プラスワンでは、ゲストに植木(遊人)と町田(直隆)くんと星野(概念)くんとSENSHO1500さんに来てもらい、とにかく盛り上げていきたいです。
宇空:15年で仕切り直しじゃないですけど、再度ここから頑張っていこうという意味を込めて、コーナーでやるかどうかはわからないけれど、新たにテルスターにキャッチコピーを付けてもらうのはどうかなって思っているんです。アイドルとかって、デビューの時にキャッチコピーあるじゃないですか。今回はいろんなバンドの人が来てくれるから、その人たちに16年目に入ったテルスターのキャッチコピーを考えてもらうって面白いですよね。
横山:ゲストの4人もテルスターとは付き合いが長いので、こうしたらもっといいんじゃないの? というのを言ってもらうってことですか?
宇空:そう。テルスターをプロデュース。それこそ遊星横町でヴィジュアル系バンドをやったんだから、テルスターがここからはヴィジュアルでやってみたら良いんじゃない? とか(笑)。ゲストの人たちに、"僕の考えたテルスター"を当日発表してもらいましょうよ。俺なら、もうちょっとピコピコ感があるといいなと思いますよ。増沢くんがコスプレするとか、初音ミクみたいな格好をしていてボコーダーを使うとか、今と真逆のことをやってみてもいいのかなって。流行りだからってわけじゃないけど、面白いなと思う。
──テルスターは、流行りには乗らないですよね?
横山:ブームに乗っかれる人間だったらとっくに売れてるかなって思うし。
宇空:ブームだからやろうという人じゃないよね。ライブはセッチューのイベントで流れていた映像しか見てないけど、今回CDを聴いて、屈折しているんだけど暗くない感じに好感が持てて自分と近い感じがして、良いなと思いましたよ。でも今回のは屈折が一周して『We Love You! You Love Us!』になったのがおもしろいなと思う。
横山:一周して、屈折を歌いながらも「I Love You」も歌えるようになったんです。
宇空:脳天気な「I Love You」じゃない感じが良いんですよ。15周年を迎えたバンドが、やっぱ「I Love You」だよねというところに辿り着いた感じが。
基本、パンツは脱がないこと
──15年の間に、ご自身が変わったことってどんなことですか?
横山:音楽を始めた時って自己顕示欲がすごく強くて、最初はそういう気持ちでやっていたんですけど、経験を重ねていくとそういうのはガソリンにならなくなってくるんです。根本がそうだからその気持ちはあるけれど、続けるとか発表していくということを突き詰めていくと、本当にダサイけど感謝の気持ちとか、伝える喜びとか、ポジティブなもので共感していくほうが楽しくなっていくんです。悪口で盛り上がるのも楽しいですけど、その中で楽しいことを見つけようとして、楽しいことを見つけた同士で何かを作ったりしていくほうが人を感動させるんじゃないかなということは、やり始めた時にはなかなか気付かなかったことですね。そういう意味では良い意味で価値観が変わって良かったかなとは思います。
──テルスターを始めたのは二十歳ぐらい?
横山:はい。かっこつけたい年齢だし、プライドも高いし。
宇空:だから音楽とか表現に行きつくと思うんだよね。さっきダサイけど感謝と言っていたけど、素直になれない人達なんだよね。素直じゃないんだけど続けていくとそういうところに辿り着くと思うし、人間関係って男女でもなんでもそうですけど、お互い尊敬しあえる関係だと長続きするんですよね。こういう嫌な部分もあるけれど、自分にはないものを持っているとか認めていくという感じになっていくんです。
横山:それを音楽で自分も見つけられたのは幸せですよ。あと、周りのおかげだなと本当に思います。恥ずかしいですね、二十歳の頃を思い出すと。かっこつけてるばっかりで。
宇空:恥ずかしい二十歳があったから今があるんですよ。だからこのCDを聴いて、素直じゃない自分を見ている感じがすごいした。でも、15周年って長いですよね。プラスワンも15年ですけど、まだまだここからのほうが長いですよ。だから、15周年とは言わず、ずっと続けてもらいたいです。イベントは、基本はやってもらう人とお客さんに喜んでもらいたいですね。あとは、パンツは脱がない。15周年なんで裸一貫でがんばります! って脱がれても困りますから。プラスワンだと頑張らなきゃいけないみたいな気持ちがあるみたいで、ここはエッジが立っていることを常にやってるから、俺もステージに上がる以上はハイテンションでインパクトを残さなければみたいな感じで、そうなっちゃう人がいるみたいです。
横山:当日は脱がなくてもテンション高く。とにかく楽しい一日にしようと思いますので、ご協力いただければと思っています。
宇空:今回初めてCDをゆっくり聴かせてもらって、自己顕示欲とかを持ってるこういう男子に届くといいなと思ったんです。どうしたら良いのかって具体的には思いつかないんですけど、横山くんみたいな人ってめちゃめちゃたくさんいるとは思わないんです。クラスの主流派ではないでしょうから。ケッて思ってるところがある気がするし、俺自身もそういうタイプだったし。だから、テルスターはしっくりくるんですよ。もしかしたらテルスターってサブカルなのかもしれないですね。
横山:でもポップでいたいんです。どれだけ詳しいとか、そういう勝負になるのが嫌なんです。
宇空:サブカルってオタクとかマイナスなイメージがあるけれど、じゃあメインって何? っていう時代だと思うんですよ。それに、サブって言われるものしかカルチャーないじゃんって思っていますしね。そういう人にアクセスするにはどうしたら良いのかなと思っているし、そういう人に聴いてもらいたいCDだなって思ってるし、そういう人にイベントに来てもらいたいですね。すごい楽しめそうな雰囲気はありますけど、そこにはお客さんありきの部分もあって、楽しいことをやってるのに見てもらえないのは悲しいのですから。一緒に頑張りましょう! そしておいしいお酒を飲んで下さい。