1月の阿佐ヶ谷ロフトAから始まった"テルスター結成15周年&CDデビュー10周年&NEW ALBUM 『We Love You ! You Love Us!』発売記念プロジェクト〜LOFT CIRCUIT 2010 supported by Rooftop"は、4月8日の新宿ロフトでファイナルを迎えます。思い返してみれば、この4ヶ月はあっという間でした。毎月1回、多い時は2回、テルスターのイベントがあり「ようやく折り返し地点のネイキッドだ」と言っていたのが、つい先日のことのよう。この4ヶ月は、"supported by Rooftop"と付けてもらっていただけあって、テルスターと一緒に駆け抜けてきた時間でした。短い期間ではありましたが、こうやってファイナルを迎えるというのは、感慨深いものがあります。
そして最後の『〜LOFT CIRCUIT 2010』は、新宿ロフト店長大塚との対談。これまでの中で、一番音楽トークをしています。(text:やまだともこ)
いくつになっても音楽を好きでいたい
──『〜LOFT CIRCUIT 2010』もいよいよ新宿ロフトでファイナルワンマンを迎えますね。
横山:ワンマン自体が前回ロフトでやったレコ発(2006年7月15日)以来なんですけど、僕の年齢ぐらいの人ってロフトやシェルターに対する憧れがあるんですよね。レコ発にしてもイベントにしても、ロフトかシェルターでやりたいって思うんです。ここでやれるっていう誇りもあるし、初めて出た時の感動を未だに覚えているぐらいですから。
大塚:初めてはいつだったんですか?
横山:10年ぐらい前だと思います。イベントに呼ばれて。西新宿のロフトは高校生の時に見に行っていたんですよ。残念ながらテルスターとしては出演できなかったですけど。
大塚:何を見に行ったんですか? 横:The ピーズとかですね。僕がその頃見に行っていたバンドって今40代になってますけど、この世代のバンドって最近元気が良いですよね。
大塚:50代もですけど、元気良いですよ、お客さんも含めて。
横山:でも30代半ばのバンドって、ちょっと煮詰まってる感じがありません? ここで、もう1回ギアを入れられるバンドは今の40代のバンドみたいになれるんじゃないかと思っているんです。
大塚:それと、みなさんちゃんとこだわりを持ってやっているんですよね。売れようが売れまいが、好きな音楽をやり続けるている。売れたいっていうのは、バンドを始めた時の思いではないですからね。売れたいを一番に考えてるバンドって売れないんじゃないかと。
横山:どこかで矛盾してくるんでしょうね。
大塚:こちらとしても、こだわりがないからライブに誘えないし、将来を一緒に考えられないんです。
横山:僕もライブハウスでブッキングをやっていた経験があるからわかりますけど、「1年バンドを続けてきて結果が出ないんですけどどうしましょう?」って相談されることがあったんですけど、1年で結果なんて出るわけがないですよ。僕らなんて15年かかっても売り上げ的な結果なんて出ないんですから(笑)。結果で音楽をやるんじゃなくて、音楽をやることそのものをもっと楽しみなよと思うんです。今って、バンドの成長がメジャーデビューをしてゴハンを食べていくというのに直結しすぎているような気はしますね。だから僕らはバンドをやるということには、いろんな音楽との付き合い方があるんだよっていうことをちゃんと見せないといけない。若いバンドに「バンドの夢は?」って聞いた時に、「フェスに出たい」って言うんですよ。それも大事かもしれないけれど、僕が思う大事な事っていうのは、何歳になっても音楽が好きでいるために、どういう活動をして、どう音楽に接するべきかということだと思います。僕らも二十歳ぐらいの時は自己顕示欲が強すぎて、こんなすごいことをやってるのになんで理解されないんだっていう時もありましたし、音楽で生活できているバンドに対して悔しいなって思ったりしましたけど、今はそういうのもなくなってきました。自分ができるものと好きなもの、こだわっている部分がだんだんわかってくるんでしょうね。そうすると他人と張り合うんじゃなくて、メンバーや自分の音楽を大事にしてくれる人と自分の幸せとの接点を探すというのが音楽の作業になっていくのかな。自分なりの音楽との付き合い方を掴んでる人を見ると、一番良い形だなって思います。
※バースペースでの撮影となりましたが、当日はライブホールでのワンマンとなります。ご安心下さい
風通しは良く、かといって流されず
大塚:テルスターって、たくさん考えて苦しんで音楽を発信していると思うんですけど、ライブはポジティブにやってるところがいいですよね。
横山:笑い飛ばすしかないんでしょうね(苦笑)。いわゆるストイックなミュージシャンみたいに、サウンドを追究していくというタイプの人間でもバンドでもなくて、「音楽と付き合っていくにはどういう形が一番幸せなんだろう」ということを追究していくことに興味があるんです。聴いてる人にはどうでもいいことだと思いますけどね。そんなことお前が決めろよって(笑)。だから、誰にも歌えてないものをテルスターは歌えてると思いますけど、よく共感してくれるなって思いますね(笑)。
大塚:ライブをやって1人でも2人でも30人でも500人でも、来てくれることに意味があるんでしょうね。
横山:やり始めた時は「お客さんがこれだけかよ」って思ったけど、続けていくと1人や2人の存在がどれだけありがたいかがわかってくるんです。それがバンドが成長していくことに繋がるんですよね。15年やって、周りのバンドは解散したりメンバーが替わったりしてますけど、僕らはメンバーも替わらず、大して結果も出せていないかもしれないけれど続けている。ペースは落ちちゃってるかもしれないんですけど、音楽との付き合い方という面でこだわりをちゃんと出す。そして、年下のバンドにもこういうスタイルもあるんだと、少しでも感じてもらえたら嬉しいですよ。
──自分達のスタイルでやってこれたのは、関わっているスタッフの方々のおかげでもありますよね。
横山:本当に周りの皆さんの応援のおかげだなとは思いますね。レーベルも僕らが望んだタイミングでリリースしましょうって言ってくれましたし。生活の糧として音楽をしてしまうと、どこかで追われる感じが出ちゃうんですよね。しかしインディーズとはいえ、ビジネスとして会社が相手なので結果は大事なんですけど、自分の生活の糧にしていると、給料をもらってるのにこの枚数じゃダメなんじゃないかって思ってしまうんですよ。でも、そういうのを避けるからといって「我が道を行ってます」というタイプでもないかなとも思っているんです。「風通しは良く、かといって流されず」にというのは、バンドをやり始めた時から意識をしてやっていたような気がしますね。それでみんなが良い形で今まで活動できたんじゃないかなって感謝してます。
大塚:やらなきゃいけないことじゃなくて、やりたいことをやってきた結果ですね。
横山:音楽に対して、あまり経済的なものを求めたこともない。お金があるのに越したことはないですけど、それとは別のところで音楽を捉えてましたから。憧れはあったんですけどね。あと昔は、メジャーメーカーに行くみたいな話もあったりしたんですよ。でも、お披露目ライブで緊張しすぎて散々なライブをしちゃったんです。もちろんメーカーの話はなくなりましたし、ライブの途中で「これはまずいぞ! もう帰りたい!」って思ったのは初めてでした(苦笑)。だから、僕らはメーカーに行ったこともないので、そういう意味での経済的なバンドの苦しみとか悩みとかはわからないんですけどね。
限りあるお小遣いの中で気持ち良く過ごしてほしい
大塚:機会さえあればメーカーに入ってやりたい?
横山:今は音楽のみで生計を立てようなんてさらさら思ってないので、興味がないかもしれない。「あんなに宣伝してもらえてうらやましいな」って思ったこともあったけど、そういうことだけでもないのかもしれないですね。やっぱり今の音楽業界のシステムは、バンドの寿命を縮める作業なんじゃないかなって思うんですよ。もちろんバンド側の責任も含めてね。本当に自分が好きなことをやってるバンドがいても、上ずみだけをかなり早い段階で広められて「ああいうことやってるバンドだよね」って勝手に理解されて、なんだかぐしゃぐしゃになっちゃうみたいな。
大塚:ちょっとブームになって、ちょっとお客さん増えて。
横山:知らないうちにいつの間にか過去のバンドになっちゃう。自分達のペースで続けていれば10年でも20年でもできたのに、活動期間が5年ぐらいになってしまったとか。そういう感じは大変だなと思いますね。他人事ながら(笑)。
大塚:これまでの話を聞いてると、横山さんってその時その時を大事にしている人なんだなって思いましたよ。だから、ライブでも楽しいってことをちゃんと伝えたいっていう感じがするんです。
横山:見に来てくれたお客さんに、その気持ちをどうやって伝えるかということは考えてます。僕らは音楽を生業にしているわけではないので「今日いくら稼げた」ということは考えてないんです。もっと大きく音楽を捉えたいだけで、テルスターを聴いていたけれど他のバンドを好きになったということでも良いですし、またテルスターに戻ってきてくれても嬉しいし、そういう存在でいたいなと思います。ロフトのワンマンには、ひさしぶりに来る人もいっぱいいると思うんです。その中には結婚や家庭などでこれまでと住む環境が変わった人もいると思いますけど、お客さんも音楽と良い形で付き合ってくれればって思っています。環境が変わっているんだから、毎回ライブに来いなんて言わないし。
大塚:そういう人が、「今日テルスターがライブやってるんだったらちょっと行ってみようかな」って来てくれて、やっぱ楽しいな、明日も頑張ろうって思ってくれたら嬉しいですね。
横山:それだけで、いいんです。限りあるお小遣いの中で気持ち良く過ごして頂けるのが。ロフトのライブは、お客さんともコミニュケーションできる場所ですし、たくさんの人と話もしたいですね。そういう意味で打ち上げも含め楽しみです。
──全店舗でやってきたんですが、ロフトとしてミッションはありますか?
大塚:打ち上げって話が出ましたけど、お客さん以外に知り合いでも友達でも100人呼んでもらって、100人打ち上げをしてほしい。テルスターから発信された100人が横に繋がったら面白いじゃないですか。そろそろ打ち上げでニューロティカを超えるバンドが出てくれないとって思っているんです(笑)。
横山:ニューロティカの打ち上げがすごいという噂は聞いてますよ。僕ら、そんな体力ありますかね(苦笑)。でも、ひさしぶりなんで、みなさんにも見てもらいたいですからね。とにかく良いライブと良いお酒と、お客さんもいっぱい呼べるように頑張りますので、当日はよろしくお願いします。
大塚:よろしくお願いします。