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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】he(2006年4月号)-in sequence ──新世代バンドの進化系サウンド、その旅の途中

in sequence ──新世代バンドの進化系サウンド、その旅の途中

2006.04.01

レコーディング悪戦苦闘記

13_ap_g.jpg──ちなみに、heは曲が出来るのは早いほうですか?

高橋:遅いです。

芝田:果てしなく遅いです(笑)。

重信:どうなんですかねぇ…煽られればやりますけどね(笑)。

──カッチリとデモを作ってからスタジオに持っていく感じですか? それとも、曲の断片を合わせてセッション的に仕上げていくほうですか?

芝田:だいたいは自宅でベーシックなものを作り上げて、それを広げていくパターンが多いですね。

重信:1回全部を曲にして音源を録ってみて、そこで一度全体を見るんです。“ああ、ここがちょっと良くないな”とか“しつこいな”とか客観的に見て、そこから各々が持ち帰って自分のパートを重ねてみたりとか。

──じゃあ、どちらかと言えばスタジオでがっちり固めてからライヴで出していく感じですか?

重信:1回スタジオに入って音源で固めちゃう感じですね。

──プリプロみたいな感じ?

芝田:ええ、ほとんどプリプロに近いですね。

重信:で、最終的な段階をみんなで合わせてみて、「ここを極めよう」と完成に近づける。

芝田:凄く要領悪い作業で(笑)。「このBメロ、他のに変えよう」って言ったら、そのドラムを変えるところから始まって、また入れ直すっていう作業の繰り返しなんですよ。

重信:1曲につき何回録ったか判んないくらい(笑)。何回ドラムを打ち込んだのかっていう。

芝田:16トラックのMTRレコーダーを使ってるんですけど、それにVトラックっていうのがあって。16×16トラック録れるんですけど、そのVトラックがパンパンになるくらい1曲に何回も録り直しちゃって(笑)。そうこうしてると時間が足りないっていう。

重信:だから、体育会系では全然ないっすね(笑)。どちらかと言えば理数系っていうか、もの凄くピコピコやる感じなんです。スタジオで「ちょっとこういうネタがあるんだけど」って、みんなでオラ~! みたいな仕上げ方は全然できなくて。

──やっぱり、スタジオに籠もってレコーディング作業に没頭するのが向いているんですかね?

芝田:いや、スタジオでパッと作業を終えるのができないだけだと思いますよ(笑)。以前、合宿に行かせてもらって、スタジオで曲をオラ~! っと作るやり方をしてみたんですけど、やっぱり凄く難しかったですから(笑)。

重信:ドラムはスタジオでしか叩けなかったりするので、アルバムの10曲目「Autumn Twillight」は基本的にちっちゃなネタを芝田が持ってきて、合宿でみんなでセッションしましたけどね。他の曲に関しては、その曲のベーシックな部分、唄が入ってる部分とかは合宿で何とかまとめてやりましたね。

芝田:まぁ、合宿先でもその16トラックのMTRレコーダーが大活躍してるんですけどね(笑)。

──じゃ、今回のアルバムの曲はライヴではまだ余り披露されていない?

芝田:出来ないですねぇ…今弾こうと思っても。

──それを言っちゃマズイでしょ(笑)。

重信:これからみんな思い出しコピーが始まるという(笑)。これからしっかりと練習します!

──みなさんがheのコピー・バンドをやる感じですね(笑)。

一同:(爆笑)

──そう考えると、曲作りが遅いとされているheにしてはよくぞリリースに間に合った、ということですね(笑)。

芝田:結構な紆余曲折とドタバタ劇が…。

重信:でも、土台が出来てる部分は多くて、ただベースが抜けていたり、ギターが抜けていたりとかちょこちょこ抜けてる曲が多かったんで、そこだけは16トラックのMTRレコーダーが相変わらず大活躍で。しかも、レコーディングでは2台登場しまして(笑)。

一同:(笑)

重信:テーブルの右で俺がベースを付けてて、左で大谷がギターを付けてたりして、だいたい「こんなんどう?」って聴かせて、「じゃ、行ってくるわ」みたいな感じでブースという名の戦場に赴く、みたいな(笑)。

──じゃあ、5月から始まるツアーまでには全曲完璧にコピーして…。

重信:ええ。heのコピー・バンドですからね(笑)。

土壇場のマジックが良いほうに傾いた

13_ap_vo.jpg──ミニ・アルバムを作った時の経験が活きた部分は今回ありますか?

芝田:活かすつもりだったんですけど、活かしきれなかった部分が多々ありますね。自分の曲はちゃんと練習してからスタジオに入るつもりだったんですけど。まぁ、自分のパートはベーシックな部分なんで大丈夫なんですけど。

──練習不足で前回散々「弾けねぇ、弾けねぇ」って苦しんだくせに、また今回もうまく弾けなくて。そういうのでまた反省したり。

重信:毎回、レコーディングすると反省ばっかりですね。

芝田:若干凹みますよね。

重信:前は曲がまずありきでレコーディングだったんですけど、今回はまだよく見えてない曲とかもあったりして、それが土壇場で奇跡が起きて、土壇場で思い切ったアレンジをしたら逆に良くなった曲が多いんですよ。いきなり、「ここ、イントロをぶった切ってみよう」とかそんな試みがうまくいったりして、まさにマジックでしたね。それは7曲目の「Greek」っていう曲なんですけど、イントロっていうイントロがなくてAメロに突入して、逆にそっちのほうがすっきりしたりして。別のアレンジもあったんですけど、逆にぶった切ったら良くなったっていう。期日の直前で、他にも「ベースが乗らないな」っていう曲もあって、一か八かでリズム・ギターを変えて、そこにベースを乗せたらどうなるかをやってみたり。それはまぁ、納得いくフレーズができなかったのでキープって形になったんですけど、そういう思い切ったことをやってみたらミラクルが起きてよろしくなった曲が4~5曲はありますね、多分。

──じゃあ、完全に4~5曲は別ヴァージョンが存在するってことですね。

一同:(笑)

重信:昔のプリプロを聴くと、自宅でピコピコやりながら作った淡い思い出が…“ああ、完全に化けたなぁ”とか思いますよ(笑)。

──でも、人前には絶対に出せないですよね?

重信:そうそう(笑)。

芝田:そう考えると、今回は土壇場で全部が良い方向に進んでいった気がしますね。

──曲順は結構考え抜いたんですか? ひとつのストーリー性を感じて、凄くいい流れだと思ったんですけど。

芝田:1回俺が家でザッと考えたのがあって、“これは完璧だろ!”って思ってみんなに聴かせたら「全然ダメだ!」ってダメ出しされたんですよ(苦笑)。それからみんなで話し合って、バランス良くなって今の曲順になったんです。

──最初はどんな流れだったんですか?

芝田:初めにアップテンポの曲がドーッと来て怒濤のスピードで進んで、最後にまったりする感じだったんです。今思えば、それは確かに変えて良かったですね。

──今回はサウンドの質感をどんなふうにしようと考えたんですか?

芝田:エンジニアさんの趣味だったりするんですけど、前回は全体的にリヴァーブみたいなエフェクターが掛かってボヤっとしたような感じだったんですよね。バンドなんで好みによって分かれるんですけど、俺はそういうのが余り好きじゃなくて、もっと素な感じというかドライなほうが好きだから、今回はそういうふうにしたかったんです。ギターだったら、ゲインが増えたくらいですかね。

重信:全体的に素のままみたいな音になってると思うんですけどね。ドラムにしても、前作と聴き比べると凄くすっきりしてると思うし。

──確かに抜けは凄く良いですよね。

重信:僕や高橋なんかはもっとウェットでパンチの効いたドラムが好きなんですけど、今回はドライにしたいっていう芝田の意見を尊重して、こういう感じになりました。よりリアルに、技術的に下手な部分もそのまま全部出ちゃったとしても、それはそれで現時点での4人のサウンドだからいいと思ったんです。

──CDはどうしても作り込まれているところがあるから、ライヴを観ると“あれ、ちょっと違うな”って感じる人もいると思うんですけど、このアルバムを聴く限り割とそのままだし、ドライ感も効いていて期待通りに感じると思いますけどね。

高橋:ライヴではもう、勢いでカヴァーして(笑)。

重信:音質の部分もそうなんですけど、前作と聴き比べると明らかに進化しているのを自分達でも感じているんですよ。前回のリリース・ツアーを一緒に回ってきたPAさんとタッグを組んで、少しずつですけど自分達の出したい音が見えてきたっていう手応えが確かにあるんです。

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