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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】→SCHOOL←×AxSxE(NATSUMEN)(2005年9月号)-『感情的format』発売記念対談『感情的音楽談義』

『感情的format』発売記念対談『感情的音楽談義』

2005.09.01

他の誰かに似てると思われたら“負け”(AxSxE)

──矢野さんがこのアルバムの中で特にこだわり抜いた曲ってありますか?

矢野:僕が一番こだわりがあったのは、「HITO-YONDE-SCHOOL」の“人呼んで→SCHOOL←と申します”っていうフレーズをどう録るかでした(笑)。「あの部分はナシでしょ?」ってスタッフから言われたんですけど、僕はそこだけはどうしても譲れなかったんですよ。

──個人的に「僕らの存在」がアルバムの柱となっている曲じゃないかと思ったんですが。

矢野:ああ。一番バーンとダイナミックに歌が乗った曲ですね。

AxSxE:矢野君の歌を中心に置くっていうのは大前提でしたからね。音数が多くても歌の邪魔になってしまうし。

矢野:そこを巧くAxSxEさんに整理してもらいましたよね。僕は隙間が怖いって言うか、ギターの壁を作ってもっと音を被せようとしてしまうんです。AxSxEさんがそこに「もっと人間性を出そうよ」という発想を提示してくれたんですね。音が少ないからといって音源自体が細くなったわけじゃないんだっていうのを、これからはもっと研究していきたいと思ってます。

AxSxE:例えば「ワンダーステップ」だと、デモだと矢野君はギターをきっちり弾いている。それがスタジオで演奏すると結構ギュイーンと荒々しくて、全然違うんですよね(笑)。だったら矢野君の本来のそういう持ち味を引っ張り出そうと思ったんですよ。デモテープのはやっぱり座って弾いてるギターでしたからね。でもスタジオでベーシックを弾いてるのはそういうギターじゃなかった。

──仁王立ちしてる感じですよね。

AxSxE:うん。そういうのは矢野君と実際に会ってみて判ったんですよ。矢野君がスタジオで弾いてたようなギターは、自分にはとても弾けないですからね。ここ10年くらい自分のギターは全く変わっていないけど、自分のことをギタリストとは思ってこなかったですよ。矢野君のギター・プレイ、俺は好きですよ。

矢野:そこまでのものじゃないですよ(笑)。そういう自分のプレイは客観視できないんですよね。この辺でギターが鳴ってて、この辺にベースのロウが入って、ストリングスがあって…みたいに、周りのことで頭が一杯になっちゃうんです。僕は「tonight」の最初のリフ…AxSxEさんが弾いたアコギがループしているだけなんですけど、あれは凄く好きなんですよね。

AxSxE:その場で考えて弾いたやつね(笑)。ギタリストを10人集めたら、全員が全員違うプレイをすると思いますけどね。いい意味でも悪い意味でもね。でも、誰それみたいなギターを弾きたいとかそういうのは、そのギターを聴けば一発で判りますよ。俺はそう思われたら“負け”だと思ってます。周りが何と言おうが、俺のギターはこれでええやんと思ってますから。他の誰かに似てたって仕方がないし、俺のギターは俺しか弾けない。だから矢野君にもそうあってほしいんですよ。

矢野:そうですね。こうして一枚出来上がって思うのは、自分の良い部分を消しかけていたのをどう対処していくか、そこに自分のやりたい方向性とがいい形でミックスされるようになればいいけど、それを誰かが観た時に自分と違うものになっていたら怖いなというのがあって…。そこをもっと模索していきたいですね。

AxSxE:でも出発点はそれでいいと思うよ。それでいいんだよ。

矢野:あと、このアルバムが出来て以降、ライヴでもとにかく歌を大事にするようになりましたね。それまではわりと冷めた唄い方と言うか、決して流していたわけじゃないんですけど、大事にするっていうニュアンスではなかった。単純に表現ができればそれでいいんじゃないかってところで収まっちゃっていて、もっと人間味っていう部分で大事にしなくちゃいけないことに気づかされましたね。そこは大きく変わりました。

──これでようやく、本当の意味で→SCHOOL←がスタートラインに立てた感じですね。

矢野:いやぁ、始まりも終わりも何が何だか判りませんけどね(笑)。

AxSxE:俺はもっと判らないよ(笑)。

──矢野さんに対する素朴な質問なんですが、単純にバンド・アンサンブルの妙が恋しくなってきませんか?

矢野:うーん。もし僕が次にバンドをやるんだったら、お互いに一切のエゴなしでやりたいですね(笑)。個々にちゃんとスタイルがあった上で成り立つようなバンドがいい。でも今はこうしてソロで自由に活動できているのが純粋に楽しいですから。→SCHOOL←とは別にバンドを組むことは今後可能性としてあるかもしれないですけど。

──では最後に、お互いにメッセージを交換して締めましょうか。

AxSxE:キラめいてる君を、君はまだ知らないかもしれないけど…これからもっとキラめくぜ(笑)。今現在のキラめきは、後々になって“俺、こうだったんだぁ…”とか気づく時がきっと来ると思う。これからいろんなベクトルへと散っていって、今以上にもっともっとキラめくことができると思うよ。それをやって下さい(笑)。

矢野:はい(笑)。そのキラめいている感っていうのは、まだ自分ではよく判ってないですね。バンド感みたいなところと宅録っぽい感じは両立させて、音楽的に進化していきたい。やっぱり好きで音楽をやっているのでずっと続けていきたいですね。

AxSxE:その頃までに、矢野君がお酒を呑めるようになっていればいいね。それが俺から唯一のリクエストかな(笑)。

矢野:……頑張ります(笑)。

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