今のニートビーツにタブーは一切ない
──DISC-2の“MIND side”ではその「GOOD OLD ROCK'N'ROLL Medley」(チャック・ベリーの「Sweet Little Sixteen」、リトル・リチャードの「Long Tall Sally」、カール・パーキンスの「Blue Suede Shoes」などのメドレー)を始め、ゴフィン&キングが書いたクリケッツの「DON'T EVER CHANGE」、クリフ・ベネット&ザ・レベル・ラウザースの「BEAUTIFUL DREAMER」など、ロックンロールを語る上で欠かすことのできないクラシック・ナンバーが疾風の如くカヴァーされていますね。
真鍋:単純に好きなナンバーばかりなんですよ。今どき、これだけベタベタな選曲でカヴァーやるヤツらも他にいないだろうと(笑)。「SHAKE」は前作の「TWISTIN' THE NIGHT AWAY」に続くサム・クックのカヴァーで、スモール・フェイセズのカヴァー経由。“MIND side”に収めたカヴァーは、ホーン・セクションが参加してくれたナンバー(ジョン・メイオール・ヴァージョンの「LOOKING BACK」、「DON'T YOU JUST KNOW IT Medley」)と純バンド・サウンドの曲とのメリハリに気を付けましたね。スカポンタスのホーンが入ってくれた時には、「アレンジャーはどちらの方ですか?」なんてエンジニアさんに訊かれたんですけど、「アレンジャー? ゴレンジャーじゃないんだから、どこの戦隊ヒーローじゃ!?」って感じでした(笑)。音楽を始めて以降、アレンジなんて全部自分たちでやってきましたからね。ヒューイ・スミスの「DON'T YOU JUST KNOW IT」は、最近健康飲料のCMにも使われ出したので、ちょうどいいタイミングだったな、と(笑)。
──「DON'T YOU JUST KNOW IT Medley」ですけど、コーラス参加しているヒロトさんが最後のほうで「プッシー!」と連呼しているのが笑えましたが(笑)。
土佐:そのメドレー、同じくコーラスをやってくれたマーシーは「アア…」って喘ぎ声を絶えず発してたんですよ(笑)。レコーディングはバラバラにやったんですけど、さすがヒロトさんとマーシー、阿吽の呼吸でしたね(笑)。
真鍋:ヒロト君の「プッシー!」っていう一言も、一番最後にわざとはっきり聞こえるようにしてるしね(笑)。ゲストに参加してくれた人たちがみな一様に「エッ? こんなんでいいの!?」って感じるほどのリラックスした雰囲気だったというか、俺たちのやり方がいい加減極まりなかったというか(笑)。酒を呑みながら、肩の力を抜いてやった陽気なセッションだったし、これを聴いて「ニートビーツ流のパーティー・ミュージックだ」と言われても別 に否定はしませんね。まぁ、パーティーがあまりにエキサイトしすぎて、ゲストの女性の肩をガンガン抱き寄せたり、セクハラまがいなこともしてしまいましたが(笑)。
土佐:アメリカだったら一大訴訟問題になってもおかしくないくらいの(笑)。啓介はさぞ心許なかったんじゃないかと思いますよ(笑)。
朝原:まぁ…初めて参加したレコーディングがそんな感じだったんで、正直、“これで大丈夫なのかな?”とは思いましたね…(笑)。
──それと、今もライヴでは人気の高い「黒いジャンパー」のPart.2とPart.3(JET ROCK REMIX)が1枚目と2枚目の終わりにそれぞれ収められているのが意外でしたね。遂に伝家の宝刀を抜いたな、というか。
真鍋:でも、真っ正面からセルフ・カヴァーしているわけではないというか、これも俺たちなりのユーモアなんですよ。ライヴでは必ず盛り上がる人気曲だし、俺たちの代表曲と言っても差し支えない。普通 ならそんな曲をヘンにブチ壊したりしないものですけど、敢えてそれをやってみようと思ったんです。それくらい、今のニートビーツにはタブーが一切ないと思ってますから。
──Part.2、Part.3と続いていくと、ヘタするとTHE虎舞竜の「ロード」みたいな展開になりかねないんじゃないかと…(笑)。
真鍋:ははは。じゃ、次のアルバムで「黒いジャンパー 第四章」とかシリーズ化していきましょうか?(笑)
──Part.3のほうのディスコティックな“JET ROCK REMIX”は新機軸ですよね。でも意外とアルバムの流れを遮ることなく収まっているし、さっき朝原さんが仰ったように、今のニートビーツはどんなタイプの曲でも独自の色に染め上げてしまう、極めて自由度の高い状態にあるということでしょうね。
真鍋:まさしくそういうことだと思います。“リーゼントにスーツ姿”という定形のイメージでは収まりきらない、底深く貪欲な部分が今のニートビーツにはあると思っているし、人の期待や予想をいい意味で裏切り続けたいんですよ。今後、もしかしたらビートルズの「Revolution No.9」みたいなサウンド・コラージュ的作品をやることもあるかもしれないし(笑)。
土佐:ただ、前に一度レゲエ調の曲にチャレンジしたんですけど、それが文字通 りあまりにスカスカすぎて、これじゃとてもじゃないけど人前で聴かせられないってことでお蔵入りしたことがあったよね(笑)。
真鍋:どんなタイプの曲でもやってみたいと先走りはするんだけど、時に実力が伴わない場合もあるんですよ(笑)。