短いインターバルでどれだけ濃密な作品を生み出すか
──今回の『BIG BEAT MIND!!』は前作の『ATTENTION PLEASE!!』から一転、古くからのファンは「コレだよ、コレ!」と思わず快哉を叫びたくなるような往年のニート節てんこ盛りで、しかも2枚組。聴き応えは十二分にありますけど、2枚通 しで聴いても、意外にサラッと聴けますよね。
真鍋:飽きのこない作りにしたかったんです。2枚組でも割とあっさり聴けるような、いい意味で軽い感じがいいんじゃないかと思ったんですよ。
──70年代ブリティッシュ・ロックに根差した華麗で骨太なサウンドを全面に押し出し、劇的な変化を遂げて“離陸”した『ATTENTION PLEASE!!』からバンドが何処へ着地するのかと思えば…まさかここまでシンプルかつストレートなロックンロールの乱れ撃ちで来るとは思いもしませんでした。
真鍋:いい意味で開き直れたんですよね。前のアルバムの時みたいに、ヘンにこねくり回して長尺の曲をやるよりは、新しいメンバーも迎えた上で今まで通 りのサウンドで行こう、と。せっかくパーマネントのバンドに戻れたわけだし、何事もなかったかのようにまた60年代ブリティッシュ・ビートをやる、しかも2枚組というヴォリュームのあるアルバムが気が付いたら出ていた…そんな感じでやりたかった。やっぱり、ちゃんとしたコンボ編成になると直球勝負のロックンロールをやりたくなって、自然と身体が疼きましたね。
──ストーンズになぞらえるならば、サイケな『THEIR SATANIC MAJESTIES REQUEST』から原点回帰を目指した『BEGGARS BANQUET』や『LET IT BLEED』へと移行するような感覚ですか?
真鍋:うん、そういう感じはあるかもしれませんね。よりプリミティヴな方向へ行きたいと思ったことは間違いないです。今回こういうアルバムが出来たのは、『ATTENTION PLEASE!!』みたいなアルバムがあったからこその揺り戻しですね。ただ、今のライヴでも『ATTENTION PLEASE!!』の曲はやっているし、当たり前ですけどこれを退化とは思ってません。一見同じところをグルグル回っているようだけど、ちゃんと階段は登っているという、螺旋階段みたいなものじゃないかと思ってます。
──レコーディングも割とトントン拍子で進んでいった感じですか。
真鍋:はい。順調も順調、大順調でしたよ。
土佐:1曲につき、録るのもせいぜい3テイクくらい。しかもそのなかで最初のテイクが一番良かったりすることが多いんです。俺は誰よりも先にスタジオに入って、前日の録り直しをこっそりやったりもしましたけど(笑)。
真鍋:多少音を外していたりしても、自分たちが気持ちよく弾ければそれでOKですから。俺が“自分の歌、イマイチだったかな?”と思っても、他の3人がOKを出せばそのテイクを採用しちゃう。
──あ、そうなんですか。僕はてっきり、60年代ブリティッシュ・ビート原理主義に基づく真鍋さんの独裁体制が敷かれているのかと…(笑)。
真鍋:いやいや(笑)。決め事はいつも多数決だし、ニートビーツってもの凄く民主主義的なバンドなんですよ。ある程度時間を掛ければ、どんなアーティストでもそれなりの作品を作れると思うんです。でも、今の俺たちは短いインターバルでどれだけ濃密な作品を生み出せるかに意義を見出しているんです。
──特筆すべきは、全25曲中、実に半数の曲がゲスト・プレーヤーを迎えてレコーディングされている点ですね。THE HIGH-LOWSの甲本ヒロトさんに真島昌利さん、去年サポート・メンバーとして活動を共にしたSOUL FLOWER UNIONの奥野真哉さん、Scoobie Doのオカモト“MOBY”タクヤさん、THE 88のMABOさん、スカポンタスのホーン・セクションと、ニートビーツの音楽人脈を最大限活用したかのような豪華な顔触れで。
真鍋:いわゆるお仕事的なものじゃなく、フラッと遊びに来てくれた延長でセッションを楽しんでもらうように心懸けましたね。「ちょっと遊ばへん?」っていう軽いノリでお誘いして、参加してくれた人たちにも存分に楽しんでもらえるように。ヒロト君が参加してくれた「ハーフ・パイント・ブルース」は、最初はハープだけの参加をお願いしてたんですけど、「あのさぁ…ヴォーカルもお願いできないかな?」って当日現場で突然頼んで(笑)。
──ははは。騙し討ちじゃないんですから。
真鍋:「ハープ吹いてもらったから、曲の感じは掴めてるでしょ? 最後のパート、唄ってよ」って強引に(笑)。案の定、「エエ~ッ!?」って驚かれたけど、それも全部こちらの計画のうちでしたから(笑)。先に俺が全部唄ってあったんですけど、最後のところを消してヒロト君のヴォーカルを入れ込んだんです。
土佐:マーシーがギターとヴォーカルで参加してくれた「GOOD OLD ROCK'N'ROLL Medley」もそんな感じだったよね。
真鍋:「歌も唄ってよ」ってこれまた強引に(笑)。でも、後日「凄く楽しかった」ってマーシーも言ってくれてたみたいで。ああいうロックの“黄金ナンバー”をあれだけ盛りだくさんでやる機会は本人もなかなかないでしょうからね。もちろん、俺たちも凄く楽しかったですよ。