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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】BEAT CRUSADERS(2004年10月号)- ビート・クルセイダースがただのお面をかぶった面白い人達だと思ってると痛い目あうからな!

ビート・クルセイダースがただのお面をかぶった面白い人達だと思ってると痛い目あうからな!

2004.10.01

根底には「爆裂都市」

──今度、人気ロックマンガ『BECK』のアニメ化にあたって、主題歌をビークルが担当することになり、しかもヒダカさんが音楽監修もされるってことで、相当熱い展開になってますね。
 
ヒダカ:『BECK』にはアイドルも出てくればUSカレッジチャートの話まで出てきて、内容がすごく幅広いんですよ。そう考えるとベリーズ工房からソニック・ユースまで語れる俺は結構合ってるんじゃないかと(笑) 原作のハロルド作石さんはアニメ化に際して音楽にはすごく気をつかっていて、やっぱりマンガは10人が読んだら10通 りの音が鳴っちゃうわけじゃないですか。それに一つの音を付けるというのは相当リスキーな作業でもあるわけですよ。実は、3、4年前に僕はハロルドさんと雑誌で対談をしていて、ちょうどアメリカ・ツアーから帰ってきた所だったんで、アメリカのクラブ事情を教えたりしたんですよ。そしたら、ちゃんとそれをマンガの中で活かしてくれて、それでいい友好関係が築けたんです。今回、アニメ側のスタッフもビークルを推薦してくれて、インディーズ時代のそういった活動が実った形になりました。
 
──なるほど。それなりの下地があったうえでの起用だったんですね。
 
ヒダカ:そうなんです。決してメジャーになったからデカイ仕事がきたってわけではないんです。例えば、某アニメGの主題歌をわけのわかんないアイドルが歌ってるっていうのとは違いますよ。まあ、同じソニーだからあまり文句言えないですが(笑)。
 
──その主題歌が「HIT IN THE USA」っていう大胆なタイトルなんですが、前作のミニアルバム『A PopCALYPSE NOW ~地獄のPOP示録~』に続き、またもやアメリカがテーマですね。
 
ヒダカ:同世代を見ると、イギリスのキュアーやエコー・アンド・ザ・バニーメンは好きだけどアメリカのヴァン・ヘイレンはだめとか、逆にハードロックは好きだけどティアドロップ・エクスプロージョンはわかんないとか、そういう人が結構多いんですけど、俺は両方好きなんですよ。ビート・クルセイダースってUKっぽいってよく言われるんですけど、アメリカっぽい要素も決して忘れたくないんです。特に今のような社会状況であればなおさら、かつて俺達が聴いていたヴァン・ヘイレン、ポイズン、モトリー・クルーといった80's感、湾岸戦争以前のキラキラしたアメリカをもう一度認識したいなと思うんです。だから折に触れてアメリカを引用しているんですね。ぶっちゃけ白人って独善的だし、マイケル・ムーアじゃないけどアホでマヌケだと思うんですが、それでも彼らの作り上げたものってよかったから。
 
クボタ:だから「HIT IN THE USA」には“アメリカを叩く”って意味もあるんです。
 
──ああ、なるほど。
 
ヒダカ:普通は「ベスト・ヒット USA」のイメージですが、多分アメリカ人が見たら“アメリカを叩く”の意味に取ると思うんです。そういう両方の意味を込めていますね。甘いコーティングがしてあるけど、食べてみると唐辛子がたっぷりみたいな。基本的にいやがらせが大好きなんで(笑)。
 
──それこそマイケル・ムーアじゃないですか。
 
ヒダカ:ライブでの「おま○コール」も最初いやがらせでやってたのが、最近は女の子にも受け入れられちゃって困ってます。早く新しいいやがらせを考えないと(笑)。でも、もともとロックやパンクって親が聴いていやだなと思うようなものじゃないですか。非常階段をラジオでかけたらディレクターに止めてくれと言われるような。そういう意味では、今後もどんどん毒を盛っていくんで、みんな、俺達がただのお面をかぶった面白い人達だと思ってると痛い目あうからな!(笑)
 
──やっぱりロックは子供が聴いたらトラウマになるぐらいじゃないとダメですよね。
 
ヒダカ:そうですよ。俺、いまだにクラウス・ノミとか忘れられないもん。あの強烈なルックスでオペラ歌ってるって一体何だったのかと。そういうのは忘れたくない。体裁よくして受け入れられようとは全然思わないです。だからお面も続けていくでしょうし、わけのわかんないことはずっとやっていきますよ。ライブハウスも毒があるのはロフトぐらいじゃないですか? そもそも社長が毒みたいな人だから。
 
──まあ、あの人はどうかしてますけど。
 
ヒダカ:その「どうかしてる」感がロックですよ。ルースターズの大江さんもやっぱりどうかしてたじゃないですか。そういう意味で言うと、俺達は大江さんみたいにカリスマ性はないから、なんとか努力してどうかしてる感を出さないといけないんです。単純にルースターズはうらやましいですよね。ファーストのジャケットとかすごいじゃないですか。俺達がああいう風にやっても、ただボーっとつっ立ってるだけですから。だからお面 かぶったりおま○こ言ってみたりいろんなことしてるんです。
 
クボタ:ルースターズといえば、僕はやっぱり中学生の時に観た「爆裂都市」は忘れられないですね。
 
ヒダカ:あれはトラウマだよね。だからといってあれはあの時代にあの人達がやったのがすごいんであって、同じことをやってもしょうがない。今、俺達がやりたいのは、メロコア以降のパンク感を忘れずに、でも根底には「爆裂都市」もあるっていう。
 
──そういう意味で言うと『地獄のPOP示録』は、地獄とPOPの両面があるっていうものですよね。
 
ヒダカ:インディーズ時代の最初のシングルのタイトルが「NEVERr POP ENOUGH」だったんです。その時は、パワーポップやポップパンクみたいな意味をそこに込めていて、トイ・ドールズみたいなのを聴いて欲しいなと。それがビート・クルセイダースがだんだんでかくなっていくにつれ普通 にポップだねと言われるようになっちゃった。でも、俺としてはファイヤー・スターターやヤング・ワンズみたいなポップを言おうとしてたのに、それが忘れられちゃって。だからインディーズ時代はそこから逃げようとしてたんですね。どんどんひねってひねって。でもメジャーにきた今、もう逃げないで俺達はポップだと言い切ってみようかなと。そんなことを考えている時にちょうど「Apocalypse Now」(註:「地獄の黙示録」の原題)の文字が目にとまって、「ああ、これにPを足せばいいな」って(笑)。
 
──ビート・クルセイダースのPOPには地獄ももれなくついてくるぞと。
 
ヒダカ:まあ、ロック界のカーツ大佐になりたいですね(笑)。
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