「右向け、右！」のところを左に向くのがブッチャーズ

──で、取って付けたようなフリなんですが（笑）、△から□へと劇的な進化を遂げたブッチャーズのベスト・ライヴ・アルバム『green on red』とベスト盤『blue on red』が同時期に発表されたわけですけれども。

西村：このライヴ・アルバム、メチャクチャいいですよ。

吉村：新録（「ファウスト」「august/8月」「襟がゆれてる。」「方位 」の4曲）を全部1日でバーッと録ったんだけど、このスタジオ・ライヴが本当の意味での“ライヴ”かもしれないね。

──このライヴ盤を聴くと、ひさ子さんが加入した理由がよく判ります。

吉村：うん。今までなら「ライヴ録ろうか？」ってなった時に、ああいう音の押し出し方はできなかったと思う。やっと出口が見つかったっちゅうか、一人一人が音をまっすぐ出せるようになったっていう感じ。その証明をいち早くしたいと思ってて、それを実現するには新曲を作るよりもライヴやるほうが早いじゃない？ 姿勢としては音に全部まっすぐ表れてるから、これは絶対ライヴ盤として出すべきだってことになって。で、その流れでベスト盤も出したわけだけど、まだ今年の初め頃…3人の時にはベスト盤というものを認められなかったの。

西村：ブッチャーズのベスト盤が出るって聞いて、それは嬉しいことけど全部音源持ってるしなぁ…なんてKIWIROLLの蝦名（啓太）さんとも話してたんですよ。

──ベスト盤の選曲は意外と至極真っ当ですね。もっと捻った感じで来るかと思ったんですが。

吉村：「これがこだわりか？」と訊かれればこだわりではないわけ。当たり前のように踏んできたここまでの流れだから。“本人こだわり監修によるリマスター・ベスト！”ってことになるとまた別 なんだけど、今回はそうじゃないところでやっと受け入れられるようになったっちゅうか。でもそれも4人になってからのライヴがなかったら受け入れられなかった、恐らく。

射守矢：要するに今のポジションがいいと、「ベスト盤？ あ、いいよ」っていう感じになるんだよね。

吉村：ライヴ盤なんて今の時代には流行らないかもしれないけど、その逆境に立つ心意気みたいなものは“買いだな！”って思ったわけ。「右向け、右！」のところは左を向くっていうのがブッチャーズの流儀だから。今回のスタジオ・ライヴも意外に軽いステップで行けて、俺達としてはこの流れを利用して新作を作りたいっちゅうか。余り考えすぎずに、もっと単純に作ってみたいなぁっちゅうのはあるね。

──じゃあ最後に、これからのシェルターに期待することをお一人ずつ西村さんにぶつけてシメましょう。

小松：全然音楽的なことじゃないけど、シェルターって蚊が年中いるよね？ リハ中だと気になって仕方ないので、あれは何とかしてほしい（笑）。あと課題としては、PAの今井（朋美）ちゃんが早く彼氏を作ることかな（笑）。

田渕：程良い敷居の高さでいてほしいですね。もの凄く高いわけでもなく、フレンドリーすぎるわけでもなく。

射守矢：結局、今のシェルターの居心地の良さっていうのは、このタイミングで気のいい人達がここへ集まってくるからなんだろうね。たとえば10年経ってみたらここへ出入りする人も変わってるだろうから、また違う雰囲気のハコになるんだろうし。

吉村：まぁですね、このままじゃいけないっていうことは確かですね。ブッチャーズはブッチャーズ、シェルターはシェルターの佇まいで攻撃していかなくちゃいけない。まずは上にある1階の生命保険会社に向かって（笑）。