息つく暇もなく新しいアイテムを繰り出してくれるビークルと、沖縄在住・スカイメイツによるスプリット「OZZY!!」。東京と沖縄という距離を埋めたのは愛の往復書簡!?今回はその現代の音楽史上に残る重要なやり取りについて、東京はビークルhidaka氏によるインタビュー、沖縄はスカイメイツのウエチ氏によるコメントにて垣間見ることに成功!これで君も歴史的目撃者間違いなし!!(interview:ワダフジコ)
お遍路やってるおじさんには負けられないぞ
──4月の野音で、ひと段落かと思っていたところに早々と。
ヒダカ:そうですね、ちょうど平野さんもお遍路に旅立っているようなんで(ルーフトップ6月号参照)、おじさ んに負けてられないぞって。早速何か出そうということで、スプリットを作ってみました。
──またスプリットになったのは?
ヒダカ:これね、スカイメイツにウエチアツヨシというリーダーであり、ドラマーであり、ヴォーカリストがいる んですけど、僕は常にウエチのキャラには注目してたんですよ。スカイメイツと対バンした3年前に やつらのステージをみた時、最初の何曲かはウエチがドラムを叩いているんですけど、何曲か終 わるとおもむろに前に来て歌い始めたんですよ。しかもガッチャガッチャ、とか歌とも合いの手とも シャウトともつかない、なんか不思議な歌を歌い始めて(笑)。パーカッションやってた女の子がい きなりドラムに座ってその子がドラムを始めたら、その子の方がドラムが上手いんですね。“こいつ の存在意義はなんだろう?”ってずっと気になっててですね、そこからずっとスカイメイツのファンだ ったんですけども。ちょうど去年の暮れ、東京に遊びに来てたんで “そのガッチャガッチャ言ってる パワーがもったいない、もっと多くの人に見せなきゃいかん!”と説教を始めたらですね、“じゃあ 責任を取ってくれ”ということで、スプリットを。だから出来ちゃった結婚みたいな。
──あぁ、流行の出来ちゃった結婚で。
ヒダカ:窪塚くんか俺かくらいの勢いで。(プラスワンスケジュールを見て)しかし、納涼うんこ祭りはないで すよね。ロフトプラスワンとはいえ。何やるんだろう?あん中で脱糞しちゃうんですか?
──たぶん。
ヒダカ:あっぶねー。やっぱロフトプラスワンだけはかないませんよね、下ネタ大好きビートクルセイダーズ としては。だって月の半分はエロイベントじゃないですか。 ──ビークルさんもロフトークとか出てみないですか?プラスワンの横山とルーフトップの椎名が やっているトークイベントなんですけど。メンバーメインで話をしたりとか。 でも、モテなそうじゃないですか、それ。
──……。で、とりあえずこのスプリットなんですが、原宿、新宿、嘉手納でのレコーディングなん ですね。どういった感じで録られたんですか?
ヒダカ:東京と沖縄って距離はものすごくあるので、気軽に作ろう録ろうとはいかないんですよ。最初は俺 がデモを録って沖縄に送って、沖縄でそれをみんなでいじったりリハしたりして、それをまた録って 返してきてみたいな、往復書簡。もう武者小路実篤と芥川龍之介の文通ばりの、文学史上重要な 往復書簡みたいな感じで我々もやってたんですけど。今なら “データで送るよ!”みたいな、そう いうのがかっこいいんだろうけど、俺もウエチもパソコンを持っていないんで(笑)。だから、そうや ってアナログな作業をずっとしてて、それで結局録る場所がいろいろバラバラなんですけど。
──じゃ、パズル状態なんですね。そういった録られ方ってよくあることなんですか?
いや、初めてでしたね。 前にスプリット出した時は、みんな東京だから普通 にリハもして一緒に録り ましたから。なんか新しい感じでしたね。ま、納涼うんこ祭りくらいの新しさがあったんじゃないかと。
──私、下ネタ得意じゃなんで、あんまり上手く返せなくて申し訳ないんですけど。
ヒダカ:セックス。
──……。沖縄にも行かれたと思うんですけど、そんな話も。
ヒダカ:沖縄は結局その3ヶ所のうちの最後に行ったんですよ。最初は東京に彼らを呼んで。表参道にあ るすごい高いスタジオしか空いてなくて、そこでやったんですけど、彼らは常にサンダルなんです よ、沖縄の人だから。録ったのは寒い時期だったのに、いきなり裏原宿にサンダルで現れてすご いインパクト放ってて。“東京はおそろしかとこばい”、とは言ってないけど(笑)、田舎モノ感丸出し でしたね。逆に沖縄で録った時は水を得た魚のように、生き生きとしてて。生き生きし過ぎてスタジ オ2時間遅刻とか当たり前でしたからね。ハメはずしすぎな感じですよ。
──あはは。でもリラックスしてる感じはしますよね。ビークルさんは沖縄は楽しめたんですか?
ヒダカ:スタジオに缶詰だったんですよ。で、最後に「BABYFACE」のPV撮影でずっと外にいて、その一日 で真っ黒になったという。でもレコーディングスタジオは歌入れするブースの窓から外を見ると浜辺 が広がっていて、歌うどころじゃないっていうか。なんか天国で録っていうような感じでしたよ。いい 環境でした。
──その空気感もあってか、1曲目の「BABYFACE」とか一度聴いて耳に残るっていうか。
ヒダカ:覚えちゃいましたか。大事ですよね、そういうキャッチーさっていうのは。
──で、その他も様々な楽曲が入っていますが、トータルでテーマとかはあったんですか?
ヒダカ:うん、だからパズルみたいなもんで、例えばポメラニアンのパズルを作ろうって始めたのに、出来 上がってみたらチワワになったりブルドッグになったり。最終的にはまた全然違っちゃったんです けど、最初に思い描いていた像は多分ビークルもスカイメイツもそれぞれあって、そこに頑張って 寄せていこうと。やっぱバンド同士でも共通言語がまず違うんですよね。例えばスタジオでの専門 用語とかあるじゃないですか、そういうのはスカイメイツはわかんない。でも彼らはオーセンティッ クなスカとか好きだから、シンコペンションみたいなことは良く知ってて。逆にうちのarakiが“シンコ ペンションってなんすか?”みたいな(笑)。最初はすれ違い探りあいが続いていたんですけど、や っていくうちに段々絵が見えてきた……っていうとかっこいいですよね、なんか。
──(笑)。スカイメイツはスカじゃないですか。音作りでイメージの違いとかはなかったんですか?
ヒダカ:それも、ないです。違っちゃって、むしろよし!みたいな。6曲目の「13RONDO」っていう曲は最初 YMOみたいなのを作って送ったんですよ。そしたらいきなり3拍子になって帰ってきたんですよね。 それは逆に新しいなって。その時点で俺の理想に興味はないので。俺の作った曲がベストじゃな いし、もっと上のベストがあるよって提示してくれば、全然そっちの方がいいし。だから全然苦労が ないんですよね、そういう意味では。向こう側にもそういうことはあったでしょうけど。こっちですご いいじって変わっちゃって。
──全体的に楽曲のメイン部分はhidakaさんから送っているんですか?
ヒダカ:いや、そんなことはないです。半々くらいですね。スカイメイツがメインで作ったのは、2曲目の 「PARTY NIGHT'S BOOGEI-WOOGIE TRAIN」と6曲目の「ROCK導入」。これをこっちでいじって、 サビを付け足したりとか。
──じゃほんとに半々で出来てる感じなんですね。
ヒダカ:スカイメイツに「俺がサビつけてみたけど、どう?」って言ったら「全然、最高!」みたいな感じで言 ってくれたんでありがたかったんですけど(笑)。
──おもしろいですね。
ヒダカ:結構新しいんじゃないかと。こんなに共作曲が多いのも初めてじゃないですか?今までマックス2 曲くらいで、あとは単体のが何曲かずつ入っているみたいな。
──3曲目の「BELINDA」がビークル、4曲目の「バイバイバイキング」がスカイメイツと単体の曲 が一曲ずつ。バランスもいい感じですね。で、7曲目が「出鱈目同志的賛歌~校歌編~」。これ、なんで校歌だったんですか?
ヒダカ:これは完全一発録りの曲を作ろうと。みんなでスタジオに入って一発で録ったんですけど。事前に 東京と沖縄に離れていても作れる曲を用意しようって時に、テーマがあった方がいいじゃない?っ て。で、校歌にしようと。一発録りの美学ですよ。
──で、スプリットのツアーもあると思うんですけど。結構回りますね。
ヒダカ:でもうちは少ない方ですよ。青春系の人たちは4、50ヶ所回るじゃないですか。もうそこまでの若さ がないので、地味にまわらせてもらいます。東京は7月19日にロフトでお世話になるんで。この日 は普通にレギュラータイムをやった後、オールナイトもあるんですよ。そのままみんな残ってくれると面白いと思いますよ。
──オールナイトでは何をやられるんでしょう?
ヒダカ:一応ね、スカイメイツとビークル共通の友達バンドをいくつか呼ぶのと、共作曲はもちろん(レギュ ラータイムの)ライブでやるんですけど、そうじゃなくてスカイメイツ、ビートクルセイダーズ合同でな んか企画バンドをやってみようかと思っています。それは詳細はまだ秘密ですけど。っていうか、 まだ決まってないんでこれから考えます。多分ファンキーなやつをやると思いますんで。ガッチャガ ッチャが好きな人はぜひ。
──、じゃ、きっとウエチさんが全面に出てくるんだろうなぁ。
ヒダカ:ガッチャガッチャって、清志郎のようにね(笑)。