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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】THE RYDERS vs Sun of a Beach(2002年5月号) - トリビュートされるのはマグロになった気分

トリビュートされるのはマグロになった気分

2002.05.03

 多くのバンドたちに影響をあたえ、またリスペクトを受ける大御所雄パンクバンド・THE RYDERSのトリビュートアルバム「LET'S GET TOGETHER」が発売された。それを記念してこのアルバムのために結成されたスペシャルユニット・Sun of a BeachとTHE RYDERSボーカリストJ.OHNOによるスペシャル対談が実現。Sun of a Beachの知られざる結成秘話まで飛び出して......皆様お察し下さい。[interview:北村ヂン]

「元気が出るハウス」でバイトしてた仲間

──ISHIKAWAさん的にはなんで今回RYDERSのトリビュートを作ろうと思ったんですか。

ISHIKAWA:別に深い意味はまるっきりないんだけど…。単純に好きだったんで。もちろん今も好きですけど。 

OHNO:俺ら、何か頼まれるとすぐ簡単にオッケーしちゃうんで都合がいいんだよ。どうせ都合がいい奴らくらいにしか思ってないよ、きっと。 

ISHIKAWA:そんなことないっすよ。

──その中でも注目のスペシャルユニット「Sun of a beach」ですけど、どうしてこのメンバーでやろうと思ったんですか。 

エナポゥ:あのですね…。このメンバーは元々4人で湘南の「元気が出るハウス」でバイトしてた仲間なんですよ。で、当時ずっとRYDERSのカバーバンドをやっていましてね。それで今にいたるわけです。

ISHIKAWA:そ…そうだったっけ…。

カタル:そうだビーチね。

エナポゥ:カレーをよそってました。 

カタル:僕はイカを焼いてました。

ISHIKAWA:じゃあかき氷の元の氷を運んでました。

タカハシ:俺は呼び込みしてました。

──え…そういう設定なんですか…??

エナポゥ:気のあった仲間だったんでね。 

タカハシ:今日も別に皆アロハ着てくるって決めた訳じゃないんですけどね。 

エナポゥ:偶然ね。 

──さっき思いっきり配ってたじゃないですか。

ISHIKAWA:ばれてる! 

OHNO:それ着て写真撮ったってやつ? 

ISHIKAWA:撮りましたよ。  

エナポゥ:え~っと前働いてた店の前で。 

タカハシ:二月の頭くらいにこの格好で。

エナポゥ:凍えビーチ。 

カタル:死にそうになったビーチでしたね。

ISHIKAWA:周りの人からすっごい目でみられてましたからね。

──皆さん、結構年代がバラバラですけど、それぞれRYDERSとの出会いっていつ頃なんですか。

ISHIKAWA:俺は出会いっていうか、最初に観たのはすごい前だね。芝浦のインクスティックっていうライブハウスがあったんだけど、そこで俺が働いてた時にRYDERSが出演してて、なんじゃこりゃって感じで。当時はOHNOさんもロン毛で、もうそのまんまラモーンズでしたよね、あの時は。

OHNO:もう本当に憧れまくってたからね。

ISHIKAWA:その後、OHNOさんとちゃんと話せる様になったのは、KEAD DENNEDYSで一緒に対バンした時ですかね。某マグネッツっていうバンドの企画だったんですけど。

カタル:う~ん僕も結構前から聴いてましたね。…イカ焼きながら聴いてました。

──そのイカ焼いてたっていうのはいつ頃の話なの。

ISHIKAWA:えっ。う~ん、その辺は設定が…。 

カタル:設定が厳しくなってきましたね(笑)。 

タカハシ:僕はRYDERSの前のバンドくらいからOHNOさんを何度か観たりとかしてましたからね。RYDERSを意識して観るようになったのは、当時僕スタジオでバイトしてて、そのころTHE ZETTをやってたTSUGIOくんと話してたら「今度RYDERSに入るんだよ」とか言ってて、それからよく見に行くようになりましたね。 

エナポゥ:高校の時にギターを初めて、アルバムの「LET'S GET TOGETHER」を耳コピして家で一人でライブやってました。

もうマグロになった気分だよね

──OHNOさん的には今回のトリビュートみたいに、自分らの曲をやられる気分ってどうなんですか。 

OHNO:もうマグロになった気分だよね。ここが赤身で、ここがトロで、みたいに食材にされてる気分なんだけど。だから皆がどういう料理の仕方をするのかっていうのに興味があって。素材である俺たちの曲って、あんまり考えずにパンパン作っちゃってるんで。 

──元の曲がすごいシンプルなロックなだけに、いじくりがいはありそうですけどね。

OHNO:もうとにかく感覚一発で作ってきた曲を、こういう風に面白くアレンジしてくれてるのを聴くと、自分が楽曲作っていくにあたってもこういうやり方もあるんだなって参考になりましたね。聴いてても、イントロじゃ何の曲かわからないんだよ、曲順とか書いてあるヤツを見てないから。

ISHIKAWA:そうですね、イントロじゃわかりづらい曲が結構ありますよね。

カタル:うちら(Sun of a beach)のなんか絶対わかんないですしね。あれ(イントロのミニコント)で終わっちゃってたらすごいんですけどね。 

──あのイントロのミニコントはなんなんですか? 

エナポゥ:ミニコント…?! あれは夢芝居です! 四人の思い出ですよ。当時の湘南を思い出して涙しようということで、あれを聴いて店を思い出して欲しいですね。色々ありましたら…。 OHNOさんにヒドイ目に遭わされた思い出ですか。 OHNOさんに蹴られた思い出を…。

OHNO:蹴ってないって。誤解されちゃうじゃん。 

エナポゥ:まあ、そういう願望も入ってたり入ってなかったり…。一応、OHNOさんがあれを聴いて「湘南へようこそ」みたいな気分になってもらえたらいいなってことなんですよ。あそこでとりあえずワタシたちの海に来て欲しかったんで。それで一緒に海に飛び込む感じ。ふざけた気持ちは全然ないですよ。 

OHNO:いや~海を感じたよ。焼いたイカの臭いまでしたもん。 

──ミニコントを入れようって言い出したのは誰なんですか。

ISHIKAWA:イントロを海っぽい感じにしようっていうのは考えてたんだけど、ショートコントはエナちゃんですよ。

エナポゥ:ネタを温めてましたからね。

──10年前から。

エナポゥ:当時、この日のためにと埋めておいたタイムカプセルを掘り返して…。ウミガメの卵とかも一緒に埋まってたんですけど。

OHNO:10年前から孵らないカメってかわいそうだね。カタル で、そのコントのバックの演奏で僕とタカハシくんが一番なやんだという。

タカハシ:「KICK THE PAST」の準備はしておいたんだけど、急にあのイントロを入れることになったんで、レゲエのリズムには苦労しましたね、やり慣れてないから。 

──で、その問題のイントロから本編が始まるとイキナリ普通になってる辺りは笑いましたよ。ISHIKAWAさんがちゃんと歌ってるのを観たのってこの間の復活KEAD DENNEDYSの時が初めてなんですけど、RYDERSを歌ってもデッケネ風味になってる辺りさすがだな~って思いましたね。

ISHIKAWA:オリジナルはオリジナルでもうパーフェクトだからね。そこに自分なりにテイストを加えるとしたら、俺はアレしか出来ないんでね。KEAD DENNEDYSの歌い回しでやりたかった。 

──コーラスがまたなんともいえない、いやらし~い感じでたまらないですよね。

ISHIKAWA:まあ、いやらしいからね~。 

あのスピード感を出すのには苦労しましたね

──レコーディングの前に何回か合わせて準備とかはしてたんですか。

ISHIKAWA:前日に久しぶりにあってね。

タカハシ:10年ぶりくらいに(笑)。

カタル:皆白くなってたからビックリしたよ。

エナポゥ:あん時は皆まっ黒だったのにね。

ISHIKAWA:あんときね~…。

OHNO:前の日って…、俺らの曲がいかに簡単かっていうのがわかっちゃうよね。 

ISHIKAWA:いやいや、難しいみたいですよ。僕はプレイヤーじゃないからわかんないですけど。

タカハシ:とにかく、あのスピード感を出すのには苦労しましたね。 

エナポゥ:だから、ちょっとずつ速くしていってね。カタル 段々体ならしていって。

──忍者が毎日麻を飛び越えてくみたいな。

ISHIKAWA:一曲の中でもドンドン速くなってるからね。走ってるなんてもんじゃないよ。走りっぱなしだもんね。

カタル:まあ遅くなるよりはいいでしょ。 

──トリビュートに参加してる他のバンドのレコーディングには、ISHIKAWAさんは立ち会ったんですか? 

ISHIKAWA:立ち会ったのは2つだけ。NOT REBOUNDとCOOLER KING McQUEEN。他のバンドは録った音源もらうってかたちで。

──やる曲はそれぞれが勝手に決めたんですか 

ISHIKAWA:そうそう。一応かぶらないように2曲づつ選んでもらったんだけど、まあ早いもん勝ちですね。でも「SO PASSION」とか「ANIMAL STREET」とかがいなかったのは意外でしたね。「SO PASSION」なんかは身近なところでPOTSHOTがもうカバーしちゃってるってのもあるかもしれないですけど。

OHNO:候補で挙がんなかった曲はこれからライブでもやらないようにしよう。あんまりウケてないんだよ。トリビュートに入ってる曲ばっかりやろう。

ISHIKAWA:「ANIMAL STREET」とかは、やりづらいんじゃないですかね。ゆっくり、はやい、ゆっくり、はやいっていうあの感じは。

OHNO:ああ、自分じゃわかんないけどね。 

ISHIKAWA:それでも誰かやると思ってたんですけどね。「だから今夜は」が入ってるのに(笑)。

カタル:あれはビックリした。

ISHIKAWA:知らなかったもんな、曲。

OHNO:俺も知らなかった。 

一同:(笑)

OHNO:いや、本当に。タイトル言われてもわかんなくて、ベースの奴に「こんな曲あったっけ?」って聞いてもわかんなくて、曲を聴いててやっと思い出したくらいだからね。 

──でもそれは愛ですよね。最近こういうトリビュートアルバムみたいなのって沢山でてるけど、これは全然違いますもんね。皆本気で好きでやってるんだなってのを感じますもん。

ISHIKAWA:そもそも、どんなに豪華なメンバーが参加するとしても「RYDERSカバー集」みたいな感じで「RYDERSっていうバンドの音源を貸してくれたら今から覚えるから」っていうんだったら絶対やりたくないからね。 

──リスペクトなきトリビュートはあり得ないと。

ISHIKAWA:そういう企画に、あんまり知らないけどおいしいから参加するっていうのも世間じゃよくある話なのかもしれないけど、そういうのってすぐわかっちゃうから。誘った時点でまず「他にダレが参加するの」みたいな話しになるんで「エーッそっから始まっちゃうの」って感じじゃないですか。そうじゃなくって「単純にライダース好き?」って聞いて「好きだ」っていうところから始めたいからね。例えばレッドマンモスなんか、POTSHOTのRYOJIと電話で話してる時にイキナリ変わって「RYDERS好きなんで、是非やらせて下さい」みたいな感じだったし。そういう人は大歓迎だからね。NOT REBOUNDとCOOLER KING McQUEENなんかも前のスプリットでそれぞれRYDERSのカバーをやったばっかりなんで「今回もやったらやりすぎかな?」って言ったら「何言ってるんすか、今度は違う曲やりますよ」って感じで。 

OHNO:いい話だよね 

ISHIKAWA:だから本当に単純なんですよね。そういうのがグチャグチャしちゃうとイヤじゃないですか。逆にこのバンドは本当にRYDERSが好きなんだってわかれば、それで俺の中ではスタートしちゃうんで。 

OHNO:俺たちもバンドやってる中で色んなスタンスで色んなバンドと付き合ってるわけだけど、その感覚は一緒だよね。相手になんか腹黒い所があるのを感じちゃうと、なんかもういいやってなっちゃうし。逆にそういうのナシでやってくれてるのとかは、俺たちが音楽に対してとってるスタンスと似てると思うし。 

ISHIKAWA:まああとは、もっと他にもRYDERSが好きなのに色んな状況とかタイミングの問題で参加出来なかったバンドたちには申し訳なかったなっていうのはありますけどね。

とにかく新曲待ちですよ 

──じゃあ最後に、皆さんからOHNOさんに言いたいことがあったら。

タカハシ:この間のライブ観にいったら。ネクタイしてスーツ着たサラリーマン風の人がいたんだけど、演奏が始まったらスーツをパッと脱いで、バーって人の頭の上に飛び乗ったたりしてて。そういうのを観るとすごい愛を感じましたね。やっぱり続けてることはすばらしいと思いますよ、やめるのは簡単だけど続けるのはすごい難しいなって思いましたね。

カタル:僕らも長いですけどまだまだだと思ってるんで、いつまでも追っかけていたいから、がんばり続けて欲しいですね 

エナポゥ:タカハシさんの話聞いてちょっとズキッとした。10年続けてたのにやめちゃったから。しょうがないからもうSun of a Beachを20年くらい続けたいですね、オホホホホホホ。 

ISHIKAWA:結局、RYDERSはもちろん現役のバンドなので、今回のトリビュートは今までの曲をやってるわけですが、それを越える名曲をまたどんどん作ってもらいたいですね。とにかく新曲待ちですよ。これはかなり楽しみですね。

──参加してる皆もそういう気持ちでしょうね。

OHNO:皆の楽しみは俺の苦痛なんですけど…。まあ、頑張ります。

 

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