LOFT9店長は「内面が空虚」問題
【入場曲(Rage Against The Machine『Bulls On Parade』)が流れる中、2人が登場】
水野しず(以下:水野) (登壇、着席すると同時にマイクを掴み)これ、入りの音楽ってどういうコンセプトで……。
吉田豪(以下:豪) ダハハ! まずそこから詰めます? これ、もう15年くらい使ってるんじゃないですかね?
水野:なんか、意図が分からないなと……。別にすごく悪いとかではないんですけど、なんでこの曲なんだろうなぁ、みたいな。始まるぞって感じあんまりしないし。
豪:ずっと当たり前のように使われてるから麻痺しちゃってましたけどね。
水野:うーん、なんか間奏みたいな曲だなぁと思って。これを毎回使ってるとしたら、なんか意図があるのかなぁって。
豪:石崎さん(LOFT9店長)の趣味なんですか?
石崎:いや、前のロフトプラスワンの店長の趣味で、それをそのまま使ってます。
豪:え、横山シンスケさん?
石崎:そうです。
豪:あぁ、はいはい。
水野:あ、じゃあ、もしかしたら、失礼なことを申し上げてしまったかもしれない……。
豪:(食い気味に)全然大丈夫ですよ。その横山さんっていうのも、ちょっといろいろある人なんで。知ってます? ロフトプラスワンで副業しようとした人なんですよ。ロフトプラスワンでエロイベントとかやって、エロ系の人との繋がりできて、で、夜中とかに店は空いてるじゃないですか。そこの時間を使って、売春ビジネスを始めようとした人で(笑)。歌舞伎町でそんなことをイリーガルでやったらアウトじゃないですか!
水野:あ! それで今はもういらっしゃらないと……?
豪:いや、それでという訳じゃないですけど、そういう人ですね。
水野:へぇ……。
豪:ちなみに、さっき会ったら水野さんがいきなりテンション低くて、なんでかと思って聞いたら、「石崎さんと15分くらいずっと話してて、もう会話の着地がひとつもなくて、とにかく信用できない人で」みたいな理由でした(笑)。
水野:いや! そこまでボロクソ言っている訳ではなくて。別に、最初に喋った感じで、何かすごく悪い点があったわけではないんですけど、でも噛み合わないし、ずーっと地に足が着かない感じで。あとあの、すごい内面が空虚だし。
豪:ダハハハハ! あー、はいはい(笑)。
水野:いや別に、おもしろい話はいっぱいご存知なので、話は聞いててすごい楽しいんですよ。だからさっきも、福生にUFOが手掴みでいっぱい採れる場所があるっていう……。
豪:なんですか、それ(笑)
水野:いや、本当にあるらしくて、結構何人か行っていっぱい触ったりしてて。(リンゴ大のものを掴む手つきで)これくらいのUFOがいっぱい採れる場所があるって。
豪:野生のUFOが?
水野:そう、野生のUFOが、実みたいに生ってる場所があって、そこからすごい採れるっていう。それはすごい面白い……。話自体はすごい面白かったんですけど……(絶妙な表情で首をかしげる)。
豪:何かが引っ掛かる(笑)。
水野:別に嫌いとかではないんですけど、信用はできないですね。
豪:的確な表現だと思いますよ(笑)。
街中で声を掛けてくる美容師たちへ
水野:……あの、今日、土曜日で渋谷駅、すごい混んでるでしょう?
豪:すごい混んでましたねぇ。
水野:で、もう渋谷駅からここまで来る間にも1個、やらかしてしまって……。まあ、やらかしたって程じゃないんですけど……。
豪:え、何があったんですか?
水野:なんか、駅前とかで人をつかまえて、連れて行こうとする美容師の人とかいるじゃないですか。写真を撮らせてくださいみたいな。
豪:ああ、女性はよくあるみたいですね。
水野:で、誰もつかまらなくてすごい困っている、みたいな感じで話しかけられて、あまりにも可哀想な気がしてしまって、ちょっと話を聞いたんですけど、それからちょっとしたシークエンスがあって……許せないという気持ちになったんですね。
豪:ハハハハ! ちょっとしたシークエンスでそのスイッチが入った(笑)。
水野:LINE送ったんですよ、その人に。
豪:あ、LINEはもう交換してたんですね?
水野:「ちょっと伝えたいことがあるんですけど、この場で話すにはちょっと長いので」って言って。
豪:ダハハハ! そのためのLINE!
水野:写真を撮られたんですよ、勝手に。そんなに許可したわけでもないのにバンバン撮ってきて。それでなんか……読みますね、送ったものを。
豪:ぜひお願いします!
水野:「プライバシーに関わる画像を要求した後で、返答を無視するだなんて、多くの人間に声をかけて麻痺しているのかもしれませんが、あなた方は他者をずさんに扱っている。美容師のこういった性質には心当たりがあります」。
【豪・会場 爆笑】
水野:「友人が頼まれてヘアショーに出ていた時のことです。このようなことが起こると、街頭にいるあなた方を、仕方なしに害虫のように感じてしまいます。あなた方はもう少し鈍感になるのをやめたほうがいい。他者を人間ではなく、ストックされた物体のように感じることを」……っていうのに対して返信がまだ来ない(笑)。
豪:素晴らしい文章ですよ(笑)。
水野:イベント中に返信が来たら……。
豪:すぐ読み上げましょう!(笑)
水野:まあ来るかどうかは分かんないですけど、来たらいいなぁ。
豪:それは、常々思っているようなことだったんですか?
水野:うん、常々思っていて、まあでも、そんなに口に出したことはなかったんですけど。例えば路上のナンパの人も、自分は知らない人に急に接触されるの苦手なんで、肩とか掴まれたりすると嫌なんですけど、ただそれは、たとえそのナンパ行為が最終的な性行為というところまで及んだとしても、ナンパをする側の人って、最後の段階まで“ヤらせていただく立場”というスタンスはあるわけでしょう?
豪:あくまでも謙虚であるべきですよね。
水野:ただ、引っ掛け美容師、美容師ナンパみたいな人って、こっちが立ち止まった途端に、“撮ってやってる”みたいな、すごい急に“あ、なんかぁ自分たちがリコメンドしてやってもいいけど”みたいな、急に上からの立場になるんですよね。それがすごい嫌だなぁと思って。
豪:ああ、なるほど。
水野:しかも、彼らの強気がどこから来ているかというと、丈の長いコートを着て、ツーブロックにして、少し上の方の毛を染めて立てているという、それだけのことで。……それ、誰にもできる。全員にできる! それだけのことであんなに強気? デタラメもいいところ(笑)。
豪:オレはちょっとお前らよりも上だ、っていう感じがそれで出ちゃう(笑)。
水野:やりたい放題!
豪:女子は大変でしょうね、そういうところ。僕らはさすがに、そういう人に声かけられたりはしないので。
水野:まあ、自分が断るのが苦手なせいだと思うんですけど。端的に無視すればいいんですけど、“自分に断る理由があるかどうか”ってことを一旦考えてしまうので……。
豪:そこも真面目に?
水野:はい(笑)。それは別に、本来考える必要は全然ないんですけど。
豪:そうですよ。無視していいんです。
水野:そういうことです。無視すれば、こういうLINEは送らずに済む(笑)。
豪:でも、困ってそうだな、と思うと、つい話を聞いたりしちゃう?
水野:……(腕を組んで考える)。
豪:それもちゃんと考える(笑)。
水野:いや本当に、美容師の人に対しては、こういうのを伝えていかなければならない。彼らは、そうでない例外もいるけれども、ほとんどの人が、ブロイラーのような働き方をしている。
豪:ブロイラー!
水野:大量生産の鶏の卵のような働き方をしているし、それによって彼らの尊厳も、彼らが取り扱う人間の尊厳も著しく犯しているし、その大変犯しているものの正当化の仕方が、すでに時代に追いついてない。彼らは、ひと昔前に原宿で流行った、カリスマ美容師かなんかのファッションスタイルを踏襲することで、自己正当化を図っているんですけど、それはもう追いついていないし、誰にもできるってことを言わなきゃいけない! っていう。
豪:それも、直接言うと時間かかるから、LINEできっちり言わなきゃいけない(笑)
水野:だって勝手に写真を……。まあ勝手にというか、自分がその瞬間に「やめてください!」って言えばよかったんですけど、もう渋谷駅を降りた瞬間に人がすごい多いし、騒がしいし、(拳を突き上げて)「やめてください!」って、言えないじゃないですか。そんなに文句を言う元気もないと思って、あんまり何も言えなかったんですよね……。(拳を突き上げて)やめてください! (反対の拳も突き上げて)やめてください!! (口に手を添えて)やめて! くださぁい!!(笑)
豪:ダハハハハ! そのレベルで大騒ぎして(笑)。
水野:いつでもそう言えればいいんですけど。でもまあ、そんなことにエネルギーを使うのもくだらないですしね。こういう風に、分かりやすい文章でちゃんと伝えて。これは今後の世の中の改善に役に立っていて、ブロイラーのような彼らの環境が、この私の誠意によって良くなっていくだろうと思われる(笑)。
豪:今回のLINEによって(笑)。
水野:だからいいことをしたんですよねぇ。
豪:でも新しいというか、面白いと思いましたよ。何か嫌だと思ったときに、直接言うよりもLINEを聞いて長文を送りつけるっていうのは、そっちのほうが手間だけど伝わる気がしますね。
水野:うん。LINEを交換した時点で、自分はLINEのアイコンをツイッターのアイコンの絵と同じやつにしてるんですけど、それを見た瞬間にちょっと「キモッ」みたいな顔になってたんですよね。それもなんか「あ、この人たちは本当に、自分が長い丈の服を着て、頭頂部を立てているということだけですぐに調子に乗るし、かなり、実情より上回る威勢のつけかたをしてくるし……」って。それでどれだけ今まで私が苦労してきたか! しょうがないんですけど、なぜなら彼らは可哀想なことに、ブロイラーのような働き方をしているから。人がバッと入ってきた時に属性にカテゴリー分けして、「その中のどれですか?」、「じゃあこの人にはこのスタイルを提案しましょう」みたいな、それは仕方がない。ブロイラーみたいなことになっている訳だから。
豪:ブロイラーだから(笑)。
水野:ただ、そのせいで、まあ皆さんこれは同じ様な気持ちを抱いていると思いますから、詳しいことは省略しますけど、どこにも居場所がない苦しみっていうのが明確にあったと思うんですよね、皆さんも。そういう類の苦しみがあると思うんですけど、これをアジテートしていこうって思っているので。別にLINEまですることはないんですけど、こういう意思を持って美容師の方に接してください。
豪:ハハハ! 今日来ているみなさんも(笑)。
水野:私たちは、そういうブロイラー的な取り繕い方に対しては協賛しません。同意しません。
水野しずにとって「居心地の良い美容室」とは?
豪:……ちなみに美容院とかでは、ちゃんと会話するタイプなんですか?
水野:ずっとスタイルがあって、その時バッて思いついた駅名、スペース、美容室で検索してからサイコロ振って、例えば5が出たら、その検索画面で5番目に出てきた美容室に行く、とかそういうことしてたんですけど、一年半、二年前くらいから同じところに行っていて……。
豪:それは、ようやく居心地いいところを見つけた?
水野:(食い気味に)居心地はよくないんですよ! 二回ぐらい泣いたし。
豪:え! 泣くんですか!?
水野:すごい感性の良い方なんですよ。代官山の○○(美容室名)のUって人なんですけど、彼はすごくセンスがあって面白い人なんですけど、本当に噛み合わなくて……(腕を組んで眉をしかめ13秒沈黙)。……まぁ、そこに行ってます、毎回。
豪:あの、泣くまでの事ってなかなかないと思うんですよ、美容院で。
水野:うーん。なんか……すごい、あの……(先程よりも深く俯いて沈黙。ゆっくりとお茶を飲む吉田豪。その間19秒)。うーん、なんかU、あっ、あんまり個人名を言うのもよくないんで……。彼はすごい感性が豊かで、センシティブな人なので、センスとかはすごい良いんですけど……。本当にそこはいいんですけど、コミュニケーションがうまく取れなくて、意図が伝えられないんですよね、うまく。
豪:いい髪形には仕上げてくれるけど、その仕上げるまでの時間が、結構辛い?
水野:いや、仕上げ終わってもらった時に、「あ、結局何も伝わっていなかったんだ」っていう(笑)。
豪:ああ、「こういう髪型にしたい」とかも伝わらない(笑)。
水野:最後の瞬間までは、自分は信じるんですね。
豪:最終的にはうまくしてくれるんじゃないかっていう。
水野:(頷いて)でもハサミを置いた瞬間に、「何も、すべて伝わっていなかった……」って思って(笑)。ただ自分は、基本的な生き方として、なんて言うんでしょうね、あの、これは皆さんそうだと思うんですけど、他人にパーフェクト・アグリーを期待しないっていう事を言い聞かせてる。言い聞かせてるというか、予め了承済みで生きようと思っているので……。
豪:……どういうことですか?
水野:いや、最近ツイッターとかで「良くないと思います!」みたいなこととか言う人とか多いじゃないですか?
豪:多いですね。
水野:なんか、「何言ってんの?」って感じなんだけど、勝手に良いとか悪いとか決めて、「良くないと思います」って言う人は、パーフェクト・アグリーが得られると思ってるから、そういうこと言うと思うんですよね。自分はそうではないし、そういう空間は、「居心地が悪いなぁ、非常に」って思っているっていう話ですね……。うん、終わり。終わり終わり(笑)!
豪:サイコロで転がして行った美容院で、「この店は話が噛み合うな」みたいな所ってありました?
水野:いや、無いですよ。
豪:無いんですね。ボクも美容院の会話は本当に苦手で……。
水野:あぁ。どこでやってもらうんですか?
豪:今はもう完全に近所ですね。家の近所で、ぶらっと歩いて、予約もしないでふらり入って、基本ずっと寝てて一切会話はしないっていう。「今日はお休みですか? お仕事は何されてるんですか?」から始まる一連の会話、本当に苦痛じゃないですか。
水野:あー、そうですよね。
水野しず流「ナンパ対処法」
豪:ちなみに、街のナンパとかにはどうやって対処してるんですか?
水野:あぁ……うーん。究極的なことを言うと、これは究極的な想定ですけど、究極的な形としては、レイプっていうものが、ありうるんじゃないかっていうことを……。
豪:それは相当究極な……!
水野:かなり究極的なことなんですけど、そうなった場合は、相手の局部を噛みちぎることで自衛するっていうのを、すごい心がけていて。もう、それ以外にありえないと思うんですよ、選択肢として。
豪:はいはい。
水野:ただ、その選択肢を掴み取るためには、日頃から、「そうなった場合には絶対にそうするんだ」っていう強い意志を持ってないと、そんな事はできないじゃないですか、柔らかいとはいえ。
豪:うん、かなりの意思がないと無理ですよね。
水野:多分、骨がない分、すごく意志が固ければ可能なんじゃないかと思うのですけど、ただ、やっぱり油断しているとそうはできないと思うので、そういう意思を持っておくんですよ。
豪:いつ訪れるかもわからない、その日のために。
水野:で、ナンパの際も、そういう意志の1パーセントを引き出す、というか、まあ1パーセントというか、可能性として常にそういう危険性を想定して、対応する……。それです! 自分の場合は(笑)。
豪:「いざとなったら噛みちぎるぞ!」っていう思いで。
水野:皆さんはどうなんでしょうね? ちょっと聞いてみたい……。
豪:同じ人はいないと思いますけどね(笑)。
水野:うん、そうですね。究極的な話になっちゃうんで。
豪:「いざとなったらやるぞ」って覚悟で、相手の話を聞いて……。でも当然、ナンパするような人との会話も、なかなか噛み合わないと思うんですよ。
水野:あぁ……。うーん。そうですね、ナンパではないですけど、昔、エポック社って言う会社で、シルバニアファミリーのお家を組み立てたり、シルバニアファミリーの気ぐるみの中に入って「明日になぁれ♪」っていう曲を歌ったりとかするっていうアルバイトを、美大の先輩に紹介してもらって、やってたことがあるんですけど。
豪:へぇ~。
水野:その時、急に「この人を紹介するから、この人とメールのやり取りをしてほしい」っていうことで、人を紹介されたんですけど、その人から「何をしてるの?」って聞かれたので、「絵とかを描いています」って答えたら、「へぇ~オシャレ!」って返って来て、それからもう返してないです(笑)。
豪:ダハハハハ! その瞬間に「無理だ」って?
水野:うーん……。なんて返します? 豪さんだったら。
豪:「オシャレ!」って言われて?
水野:「ライターやってます」って言って、「へぇ! オシャレ!」って返って来たら、なんて返しますか?
豪:困りますね、確かに。結局、美容院の会話って、それに近いじゃないですか。
水野:あぁ、確かに。
豪:だから「細かく説明するのは面倒くさいから寝よう」になる。
水野:あぁ、自分は髪の毛を触られたり、切られてる間って、めちゃくちゃセンシティブになるし、起こってる出来事に対してすごい集中するし、鬼気迫るものがあるので……。Uさんはその点、すごく鋭いセンスを持っているので、そこは、ものすごい合致するんですよね。だから、その居心地の良さはあるんですけど、言葉が全く噛み合わない。うーん。でも、そこの完成の部分が合致するだけ、すごいマシかなー。
豪:なるほど。
水野:切ってる最中も、(低い声で)「髪の毛っていうのはぁ、1時間に2ミリ伸びるからぁ、こうしてる間にも、伸びてるんだなぁ~~」って言いながら切ってるんで、「あぁ、これだよこれ!」って思って(笑)。
豪:ハハハハ!
水野:そういう人じゃないと、委ねられないなっ、ていうのはある……。
豪:でも、さすが水野さんですね。こういう話だけでも、これだけ転がるっていうのは(笑)。
【以下、後編に続く】