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トップコラム煩悩放出 〜せきしろの考えたこと〜vol.8 久保田剛史(インデペンデンスデイ)

l.8 久保田剛史(インデペンデンスデイ)

vol.8 久保田剛史(インデペンデンスデイ)

2018.10.12

〜ステータスポイントを『投稿』に振り分け過ぎた者たち〜
ラジオのコーナーや雑誌の投稿ページにネタを一心不乱に送り続ける投稿者。それは決して誰かに頼まれたわけではないのに、時には何かを犠牲にしてまで送る。そんな特異で奇抜で最高の情熱を投稿にそそぎ続ける者たちの生態に迫るインタビューである。
 
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久保田剛史:1987年2月4日生まれ。愛知県出身。浅井企画所属のお笑いコンビ、インデペンデンスデイの片方。玉子サンドとクロスワードパズルが好き。水分を多めに摂るようにしています。

越えられない全国区の壁

──久保田君は投稿してたんだよね?

久保田:してましたねぇ。

──してたように見えるよ。良い意味で。あと、クイズ好きにも見える。

久保田:浦和高校感……ちょっとありますか?

──ないと言えば嘘になる。で、最初の投稿は?

久保田:名古屋のCBCラジオでブラックマヨネーズさんがやられてた『ブラックチューズデイ』っていう番組でした。

──株価が大暴落しそうな番組名! でもラジオっぽい名前! それを聴こうとしたきっかけは?

久保田:中2の時、お母さんに誕生日プレゼントでMDコンポを買ってもらいまして、それにラジオもついてて、たまたまつけたらやっていたのが『ブラックチューズデイ』でした。

──もしかして初投稿で読まれたってこと?

久保田:そうですね。最初は一発で読まれたんですけど、そこからなかなか読まれなくて……。

──採用されたコーナーは覚えてる?

久保田:確か小杉さんの「ヘイヘイオーライ」というギャグに言葉を続けるコーナーだったと思います。

──初採用の時は嬉しかった?

久保田:めちゃくちゃ嬉しかったですね。ラジオネームを読まれた瞬間、脳天から電流が走った感じですね。ビビビ婚を決意した聖子ちゃんも同じ感覚だったんでしょうね。「明日、街を歩いてたら、自分のことを話してる人がいるんじゃないか」って、それくらいのことを思いましたね。

──その後もラジオを聴き続けて。

久保田:はい。好きで聴いてましたねぇ。進学校みたいな、ものすごい勉強させられる中学校に入りまして。それで勉強の傍ら、ラジオを聴くようになって、どんどんラジオのほうにのめり込んでいったみたいな感じで。ダイノジさんの『キスころ』とか、乙葉さんの『乙葉ッスル』って番組はよく聴いていました。そこから、全国の番組も聴いてみたいって思うようになって、『オールナイトニッポン』とか、『リップスパーティー』っていう、文化放送でやってた品川庄司さんのラジオとかを聴くようになりました。

──その頃のオールナイトは誰だろう?

久保田:当時はナイナイさん、T.M.Revolutionの西川貴教さんとか、RAG FAIRの土屋礼央さんとかがやってました。

──オールナイトにも投稿してたの?

久保田:出してました。ちょこちょこ出してたんですが、全国区のラジオになったら全然読まれなくて。そこでちょっと挫折みたいなのがありました。俺、全然面白くないじゃないかって。

──全国区の壁はあるよね。全国区での採用では俺より弟のほうが早かったなぁ。

久保田:えー! 投稿一家なんですね。

──弟だけね。久保田君のお父さんとかも投稿してたかもよ。

久保田:いや、してないです。僕だけです、投稿してたの。

──わかんないよ。若い時にさだまさしの番組とかに出してたかも。谷村新司の番組とか。

久保田:お父さんから「谷村新司の番組が面白くてさぁ」みたいなのを聞いたことないんで。

──「ちょっとエロくてさぁ」とか言ってなかったか。

久保田:まぁ、エロいでしょうねぇ。小川知子の胸元に手を入れてましたからね。

──懐かしいな。『忘れていいの〜愛の幕切れ〜』ってデュエット曲で手を入れてたな。そんなことはどうでも良くて、話は戻るけど、採用ってタイミングがあるからなぁ。番組の時間帯によっては中高生だと難しいこともあるだろうし。他にも、番組のコーナーの流れなんかあるし。でも採用された時もあるんだよね?

久保田:そうですね、ナイナイさんとか、土屋礼央さんとか西川さんのやつとか。ナイナイさんでは『悪い人の夢』とか『セルゲイブブカ』、土屋礼央さんでは『熱闘へっぽこ甲子園』、西川貴教さんの番組では『踊るダメ人間日記』というコーナーで数回読まれました。でも、たまに採用されたくらいで、常連にはなれず……。でも読まれたくて、名古屋で、MEGUMIさんとすほうれいこさんがやってるラジオ(『ハロハロマンデー』)に大喜利コーナーがあって。読まれやすいんじゃないかと思って送ったら、読まれて。

──俺も読まれたくて、そのまんま東がやってたラジオに送ってたりしたよ。読まれたら嬉しいからね。ところでラジオ以外にも投稿してた?

久保田:『バカサイ』に送ってました。いろいろ名前を変えて送ってました。

──えっ? 『バカサイ』に送ってたの? 採用されてた?

久保田:たまに、何回かは。

──全然知らなかった。いつ頃?

久保田:高校の時ですね。採用されて嬉しくて、学校に『SPA!』を持っていって、それとなく教室のどこかに置いておいたりしました。『イマジン』、『アオリ文』、『そのまんま川柳』とかで何度か採用していただきました。
 

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▲ペッパー君にもペンネームを聞かれる久保田。

東海の人は封書でOK

──それにしても高校生でよく『バカサイ』を選択したな。

久保田:あの頃は『バカサイ』か『ファミ通町内会』か、でしたから。

──ファミ通は高校生でも行きやすいと思うんだよ。雑誌的にも。そっちでも採用された?

久保田:ちょっと採用されて、ちょっとだけのガバスを手に入れました。『私の報告書』とか『大予言』とかで。『バカサイ』にも通じるんですが、4コマ漫画のコーナーで一度も採用されなかったので、いまだに大喜利で絵の回答をする時には躊躇します。

──『バカサイ』はハガキで送ってたの?

久保田:ハガキで送ってました。

──官製ハガキ?

久保田:あ、封書で。

──官製ハガキではないハガキ大の紙に書いて、まとめて封書で送るパターンだよね。東海の人って封書の印象があるよ。

久保田:地域性があるんですね!

──東海の人は「封書でOK」っていうのがあったのかも。もしくは元祖だったか。で、ペンネームは?

久保田:いやでも、そんな覚えてらっしゃるようなあれではないと思います……。

──けっこう選ぶほうは覚えてるんだよ。誰だろう? ペンネームは統一してた?

久保田:ちょこちょこ変えてましたね。採用されないのは名前が悪いんじゃないのかと思って。とにかくそんな教えられるほどのあれじゃないんですよ……。

──ちょっとふざけた名前?

久保田:うーん、ちょっとだけ、ボケてます。気持ち程度。

──なんだろう、ペンネームってたとえば「フライドポテト」くらいのでいい時もあるじゃない。そうではなく、何かもう一個つけて「おいしいフライドポテト」みたいにする人もいるよね。どっちのタイプだろう……。それとも「久保田」って本名を残してあるのか? ファニー久保田とか。

久保田:久保田は残ってないです。

──あと、クラスメイトの名前にする時もあるし、好きな食べ物を入れる時とかもあるよね。う〜ん、わからないな。……カタカナ?

久保田:ああ、まぁカタカナもありますけど……。

──造語?

久保田:どうなんですかねぇ、どこまでを造語とするかですよ。この前、ナッツさん(ファミ通町内会担当)に会った時もすごい聞かれたんですよ。「ペンネーム教えて」って。もう尋問のように。

──それでも言わなかったんだ。優秀なスパイみたいだな。でも少しヒントを言ってもいいんだよ。俺にだけ。さぁ!

(しばし尋問が続いて)

──なんでも言うこと聞くから教えて! 一生のお願い!

久保田:一生のお願いはもっと別のことで使ったほうがいいですって。

──もういい! 教えてくれないからせっかくのスープも冷めちゃったよ! ……あっ、取り乱してごめん。で、大学になっても投稿してたの?

久保田:大学になったら、お笑いを始めて、あんまり出さなくなっちゃいました。ラジオはずっと聴いてました。

──大学からお笑いをやってるのか。今の相方と?

久保田:そうですね、ずっと。卒業して、東京来たら『JUNK』が聴けるっていうのでめちゃくちゃテンション上がって、毎晩夜ふかししてましたね。

──そうなんだよな。TBSってうちのほう(北海道)もなかなか聴けなかったんだよ。『JUNK』には投稿しなかったの?

久保田:そうですね……。なんかもう、芸人やってるのに、そういうの出しちゃうと、申し訳ないなと思って。ちゃんとやられてる方に……。

──ちゃんと投稿をやられている方に!

久保田:僕だったら、芸人風情が送ってきやがってみたいに思うので。

──確かに。そう思ってしまう気持ちはわかる。俺も昔は「お前のせいで採用枠がひとつ減るよ!」とか思いそう。『JUNK』の他は?

久保田:くりぃむしちゅーのオールナイトニッポンはすごい好きで、いまだにiPodに入れて聴いてます。もう20周くらいはしてると思います。

──そんなに好きなんだ!

久保田:くりぃむしちゅーのお二人の故郷は熊本なんですけど、家族で熊本の親戚のおじさんの家に行った時、親戚とお母さんを撒いて、お二人の母校の済々黌高校と、高校時代に上田さんが野グソをした大甲橋を見に行きました。

──聖地巡礼! では最後に、投稿に対してどう思う?

久保田:投稿ってすごい確率が低いじゃないですか。いっぱいネタをバーッて書いて、でも採用されにくくて。こんなに実りの少ないことに、多くの時間を割けるってすごいなって思います。僕はそれができなくて、結局やめちゃったんですよね。

──確かに実りはないよね。

久保田:1週間ずっとコーナーやお題のことを考えて、間に合うように出して。でも頑張っても読まれなくて。本当にすごいと思います、投稿者の方は。

──で、ペンネームは?

久保田:その質問、聞こえませ〜ん!

せきしろ:1970年北海道生まれ。主な著書に『去年ルノアールで』『カキフライが無いなら来なかった』『まさかジープで来るとは』『たとえる技術』『1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった』など。

 

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