〜ステータスポイントを『投稿』に振り分け過ぎた者たち〜
ラジオのコーナーや雑誌の投稿ページにネタを送り続ける投稿者。それは誰かに頼まれたわけではない。自発的に送るのだ。そんな特異で奇抜で最高の情熱を投稿にそそぎ続ける者たちの生態に迫るインタビューである。
▲「自画像を描いて」とお願いしたけど届いたイラスト。
【投稿者プロフィール】
鳥獣戯画ジャクソン:1992年2月12日生まれ。
東京都出身。バカサイ準優勝。
ナポリタン、ハロプロ、逆転裁判、インコが好き。テトリスが得意。
その昔、私は『不毛な議論』という番組の構成を担当していたことがある。その時出会ったのが鳥獣戯画ジャクソンである。私は番組を1年ほどで辞めるのだが、何人かの投稿者が後を追ってきてくれて、鳥獣戯画ジャクソンもそのうちの一人であった。彼はその後さまざまな番組で活躍することになる。今回はそんな彼の人物像に迫ってみよう。
自分のネタを読まれるのが恥ずかしい
──まず投稿するようになったきっかけを教えて。手術を受ける子どもと約束したんだっけ?
鳥獣:きっかけは2010年の4月にradikoでラジオが聴けるのを知ったことです。最初は南海キャンディーズの山里さんの『不毛な議論』のいちリスナーだったんですけど、聴いているうちに自分も送ったら読まれるんじゃないかと思い、送り始めました。投稿して2週目で採用されたのを覚えています。
──radikoがきっかけか。きっかけってフジテレビだけじゃないんだ。採用されたコーナー覚えてる?
鳥獣:『軟式ツイッター』という番組のジングルを作るコーナーでした。
──あったね、そんなコーナー。懐かしい。
鳥獣:それからIKKOのコーナーや浅香光代のコーナーにも送りました。
──IKKOのコーナーってなんだっけ? 全然覚えてない!
鳥獣:「どんだけ〜」と聞こえるセリフを募集するコーナーでした。最初はジャック・バウアーのコーナーだったんですけど、そこからIKKOや横山弁護士に発展した記憶があります。
──何が何だかわからないな。初めて採用された時ってやっぱり嬉しかった? 北島康介がラジオで初採用されたら「何も言えねぇ!」と言って喜びを表現すると思うんだけど、何か言ったりした?
鳥獣:言ってないです。嬉しかったんですけど、今でもそうなんですが、自分のネタが読まれるのが恥ずかしくて……。だから自分のネタを飛ばして聴く時もあります。
──恥ずかしいっていうのは初めて聞く反応かも。俺は嬉しいか、読まれた安堵からホッとして終わってたよ。
鳥獣:僕もホッとはするんですが、恥ずかしさには慣れないですね。なんだろう、こっそり書いていた日記を人前で読み上げられる感じです。パーソナリティとスタッフの反応も気になるし、いろんな感情が邪魔するせいで自分のネタはほぼ楽しめないです。
──多感な時期! 俺も多感な時期で異性のことばかり考えてるよ。もう50歳近いけど。
鳥獣:その後、ラジオにハマっていきました。『不毛な議論』の次に聴くようになったのが伊集院さんや爆笑問題さんのラジオで、『JUNK』は全部聴くようになりました。『オールナイトニッポン』もいくつか聴いて、あとは有吉さんや髭男爵さんのラジオも聴くようになりました。
──それはハマったね! 小柳ルミ子のサッカーくらいハマってるね。全部にネタを送ってたの?
鳥獣:出してたのは伊集院さん、エレ片さん、オードリーさん、有吉さん、髭男爵さんのラジオです。伊集院さんはたまに読まれて、エレ片さんやオードリーさんはちょくちょく読まれるくらいで、全然常連のレベルではなかったです。やがて『不毛な議論』か有吉さんのサンドリ(『有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER』)か『バカサイ』の3つがメインになっていきました。
▲「自画像を描いて」とお願いしたけど届いたイラスト。
ネタはすぐ出さずに精査するタイプ
──ちなみに最近はどこに出してる?
鳥獣:いま出してるのは『バカサイ』、ダイアンの『よなよな』、NHKラジオの『すっぴん!』の木曜日、たまにサンドリ、ファミ通です。
──『すっびん!』の木曜ってダイアモンド☆ユカイさんだっけ?
鳥獣:麒麟の川島さんです! ユカイさんには送らないです。
──川島さんの番組には大喜利があるんだよね? ユカイさんもなかった?
鳥獣:ユカイさんの番組は何をしているか知らないです。
──もしかしたらユカイさんの番組でも大喜利コーナーをやってるかもよ。「こんなダイアモンドは嫌だ」みたいなお題で。
鳥獣:多分ユカイさんは大喜利をよくわかってないと思うので、「豆腐みたいに柔らかい」と送っても「そんなダイアモンドあるの?」と言いそうで、成立しないと思います。
──「今のネタ、いいね! 判定は5カラット!」とか言ってるかも。「今のネタは、う〜ん、石炭だな」とか。
鳥獣:そんな感じなら、リスナーのことを原石とか呼んでそうです。
──ラジオネームじゃなくて、原石ネームとか言ってそう。
鳥獣:原石にしかわからないポーズをテレビでこっそりやったりしそうですね!
──なんかすげー聴きたくなってきた! ところでダイアモンドって硬いけど、扱い方によってはすぐに割れてしまうんだ。だから気を付けなければいけないんだけど、投稿する上で気を付けていることってある?
鳥獣:コーナーの定番になりすぎた流れってあるじゃないですか。それに乗るのは、なんだか魂を売ったような感じがするので、絶対に乗らないようにしてます。あと他の人がよく使う下ネタは使わないですね。これでラジオによっては採用率がグンと下がります。
──採用率が下がる!? それなのに誰も気づいてくれないハンデを自分に課しているのか! かっこいいなぁ。ハンデを取っ払った時、信じられないほど採用されそう!
鳥獣:パーソナリティが漢字を読むのが苦手そうならひらがなを多めにします。あとはパーソナリティが知っていそうなことでネタを作ります。例えばテレビをあまり見ない人なら新しめの芸能人は使わないです。
──パーソナリティへの気遣いが凄い! ただ、一切伝わってなさそうな気遣いだけど!
鳥獣:パーソナリティの読むスピードに合わせて言葉を配置したりもしてますね。
──そこまで! それはもうほぼ、キミがパーソナリティだよ。ネタはどうやって考えているの?
鳥獣:送るコーナーとネタの数を決めてから携帯かパソコンのメモ帳に書きます。例えばネタが10個必要な場合は、15個のネタを面白くなくても書き出します。そしてひとネタずつ直したり、発想を変えたりした後、そこからまた選別します。すると10個くらいになるのでそれを送りますね。
──すぐに出さずに、精査するタイプなんだね。
鳥獣:そうですね。基本的にすぐに送らずに、翌日にもう一度確認しますね。1日60〜80個のネタを書いて印刷してそれを喫茶店やファミレスで送れるレベルに直すまで帰らないというのをやっていたんですけど、毎日行くと店員にあだ名を付けられる可能性があるじゃないですか。なので毎日行く店や時間帯を変えていました。
──ストイック! 小比類巻貴之くらいストイック! きっと「ミスターストイック」ってあだ名を付けられていたと思うよ。もしくは「ラジオさん」とか。あるいは「ジャクソンさん」。
鳥獣:「ジャクソンさん」はもうほぼ身バレしてますね。あとは……誰かと競うわけでもないのに月30通採用のノルマを設けて投稿したりもしてましたね。「コーナー以外のメールは採用数に含まない」というルールを自分で作ってちゃんと守ってました。ふつおたとか、ネタコーナー以外で目立とうとせず、ネタコーナーで面白いネタをバシッと読まれることを当時はカッコいいと思っていたので。
山﨑愛生ちゃんのプロ意識の高さ
──俺も投稿していた時はそんな感じだったけど、なんかひとりで突き詰めてしまって、どんどん考え方や行動がおかしくなってしまうよね。
鳥獣:そうですね。「こんなに投稿しているのに自分が一番採用されてないとおかしい!」と思って、他の投稿者の採用数を全部紙に書いてカウントして、自分がその週で何位なのかランキングを付けてたりもしてました……。
──そういうおかしな行動をとるというのは「投稿者あるある」と言っても過言ではないと思うんだけど、一般の人から見たら異常だろうね。そんな生活してるとストレスも溜まっていくと思うんだけど、どうやって発散してるの? 俺はカラオケに行ってた。でも歌わずに、ネタのために歌詞をメモしてしまって、発散できなかったけど。当時はネットで歌詞を調べられなかったし。
鳥獣:自分の場合はハロプロのラジオを聴きますね。一番のおすすめは『Hello! SATOYAMA & SATOUMI Club』です。Juice=Juiceの宮崎由加さんとつばきファクトリーの小野瑞歩さんによる季節の話がメインのラジオです。季節の話だけで何年も続いているので本物です。
──ラジオのストレスをラジオで解消! 二日酔いの時の迎え酒みたい。ハロプロのラジオと言えば、ハロプロ研修生北海道の番組も聴いてるよね?
鳥獣:はい。北海道の研修生は全員中学生以下で、アイドルが一番伸びる時期なので目が離せません。そしてアイドルになりたてで武器が少なく、何かあれば「タコが好き」「パンダが好き」の一本槍で勝負をしにくるところがとても好きです。
──おすすめメンバーはいるの? 俺は河野さんが好きだけど。
鳥獣:特におすすめしているのが山﨑愛生ちゃんです。理由はこぶしファクトリーの浜浦彩乃さんが小学生だった頃の声をしていて、浜浦彩乃さんの声をしているということは将来伸びてどのグループに入ってもエースになれると思うからです!
──そうだね。そうだと思うよ。
鳥獣:しかも尊敬しているアイドルが嗣永桃子さんで、ももち好きのアイドルに共通することはプロ意識の高さなので、未来のハロプロを背負っていくメンバーであることは間違いないですね。なので、ハロプロはあと10年は安泰です!
──何かプロ意識を感じさせるエピソードはあるの?
鳥獣:あります、山﨑愛生ちゃんはマスクを二重に付けているので絶対に風邪を引きません。これは相当なプロ意識です。そしておばあちゃんに編んでもらった手袋をしているので絶対良い子で、英語とエレクトーンを習っていてグローバルです。あと、山﨑愛生ちゃんはカッコを「カッコ閉じ」まで読み、メールの顔文字まで読むので日本一丁寧なラジオDJです。
──顔文字まで! きっとダイアモンド☆ユカイの「☆」も読んでしまいそう!
鳥獣:たしか、今は「☆」ではなくて「六芒星」なので、ちゃんと「ろくぼうせい」と読むはずです!
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